大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

梶原一騎(52) 川崎のぼる 8 「新巨人の星」

梶原一騎原作、川崎のぼる作画の「新巨人の星」(講談社刊)です。
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あの名作「巨人の星」の連載終了から約5年後、連載の場も週刊少年マガジンから週刊読売へと移行し、1976年から1979年まで連載されました。単行本は前作と同じKC(講談社コミックス)版だと全11巻。

間隔が空いて川崎のぼる先生の作風が変わってしまい、絵柄が前作とは似ても似つかないくなっているのと(「長男の時代」に近い。これはこれで好きですが)、既に売れっ子になっていたため他にも連載をかかえていて当初は断りながらも渋々受けた無理な仕事という事もありやっつけ的で雑に描いているので…
要は二つの「巨人の星」がスムーズにつながらず違和感がありすぎますが、それでも当時の読者からしたら、あれで終わったと思われていた星飛雄馬のその後が見れるなんて夢のような話だったでしょうね。

今度の作品舞台は、1975年からスタート。
前作が連載されていた時の栄光は遠くなり、当時は選手だった長嶋茂雄が新監督となると天下の巨人軍が球団創立以来初の最下位という屈辱的な結果になっていました。
その頃、東京近郊の草野球界で密かに評判となっている助っ人がいました。有料ですが、草野球レベルの投手からは確実に打ち、盗塁成功率も100%だと言い、野球が終われば繁華街の定食屋で焼酎を食らい、巨人軍敗退のニュースを見ながら涙を川のように流している…
長髪になっていますが、この男こそ飛雄馬。あの大リーグボールを生んだ投手が、打者に転向してまで落ちぶれた巨人のために立ち上がろうとしています!まぁあれだけ絶望して去ったとはいえ飛雄馬は、まだ10代でしたからね。

父の一徹にすらあれから消息を絶っていたようですが、数年ぶりの再会。あれれ、一徹は飛雄馬が消えた後は球界に用無しと中日のコーチを辞任したそうですが、この続編では頭が白髪化し、さらに全編通して和服になってイメチェンしています!
姉の明子はやはりというべきか飛雄馬の宿命のライバルである花形満と結婚しており、花形に加えて親友の伴宙太も飛雄馬が去った後はさっさと引退して実業家になっています。二人のように実家が金持ちでない左門豊作のみ相変わらず大洋ホエールズで活躍していて、後半からの登場ですが牧場春彦はマンガ家として売れっ子の大先生になっている…というのが、前作から5年が経っての近況でしょうか。
あ、飛雄馬は前作で左腕の前腕部を破壊したはずなのに、肩を壊した事にされていますね。時が経って作者も忘れてしまったのでしょうか。

野球界に姿を現したと同時に次々と懐かしい面々と再会する飛雄馬。
肉親達は反対しますが、無二の親友である伴は全力で現役復帰の協力をし、『野球異人間ドック』なる計画で金をかけて飛雄馬の打撃の技術を磨く…
特に元メジャーリーガーで、ニューヨーク・ヤンキースで打撃コーチとしても数々の名選手を育て上げたビッグ・ビル・サンダーを呼んだ事で夢が近づいてきます。
バッターとして鍛えたのはもちろんですが、途中で飛雄馬の右腕投手としての可能性に気付くのです。そもそも飛雄馬は生来右利きだったそうで、それを野球では投打共に左利きが有利だからと一徹に矯正されていたのだそうで。

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ついに飛雄馬の現在の姿を見た長嶋監督も、バッターとしてではなく前代未聞の右投手として復活する事を構想して巨人軍テスト生として宮崎キャンプに参加させました。
かつて巨人の優勝に貢献した英雄が、ただのテスト生として表舞台に出てきた事で明子は最低の晒し者にされていると泣きます。さらに『飛雄馬は未練がましい野球コジキ扱いにされて…………』と。
それでもキャンプでサンダーから習ったスクリュー・スピン・スライディングを使って打撃と走塁を見せ付けると、正式な巨人の一員として迎えられました。
しかも、長嶋監督自身の持つ永久欠番『背番号3』を与えられて!前作ではやはり川上哲治監督が持つ永久欠番・16を貰っていましたが、今度は3番!しかし永久欠番って、こうポンポン使っていいものなんですかね。

シ-ズン前半は代打屋として公式戦デビューも飾って活躍しますが、オ-ルスタ-戦で野手として右投げを披露して以来、日本中の度肝を抜いたの飛雄馬の右腕投手としての復帰!
ようやくこの時が来ました…投手としてマウンドに立つのは、全11巻のうち5巻の途中まで来てからです。一徹からは"大リーグボール養成ギプス右投手用"を授けられますが、まぁ「巨人の星」といえばこのギプスが出なきゃ仕方ないですからね。今度は下半身に装着するタイプです。

飛雄馬の電撃復活から2年目のシ-ズンには、今は義兄であり実業家として成功している宿命のライバル花形満もヤクルトに入団してプロ野球界に戻ってきました!
元より彼は野球それ自体が目的ではなく、飛雄馬と対決する事に執念を燃やしていた人間ですからね。広岡達朗監督曰く『きみの全盛時代の打撃センスは長嶋・王・中西・張本・山内・野村らのそれに比肩するものと評価する』そうですが、さらに絶頂期に引退しているので身体のガタがきていない、というわけですぐに活躍し始めるのでした。
明子は愛する夫と弟の義兄弟が血で血を争う対決をする事を夢にまで見てうなされますが、問題はこのベッドでのシーン…寝間着姿で初めて分かったのですが、ものすごい巨乳です。ここから30年も後に村上よしゆき作画で描かれたリメイク作「新約「巨人の星」花形」では抜群のスタイル、もちろん巨乳キャラで登場した明子には散歩両論あったと思いますが、このシーンを見て忠実に描いたのかもしれません。

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この作品でも後半になってヒロインが登場しまして、それが女優の鷹ノ羽圭子。この髪型からして当時人気がった山口百恵がモデルでしょうか。
かつて死んだ日高美奈だけを生涯愛すると誓っている飛雄馬の決心が揺らいだほど素晴らしい女性であり、圭子も飛雄馬を慕う両思いでしたが、伴も圭子に惚れてしまう三角関係から…
飛雄馬は一徹を訪ねて相談すると『わしなら友情を採る!!』と断言されたのもあり、結局は圭子を振って野球一筋に生きるのでした。最後の別れのシーンはなかなか印象深い。

野球の方ではまた花形満や左門豊作、それに実在の野球選手達と対決する飛雄馬ですが、「新巨人の星」のみ登場の重要なライバルは阪神のロメオ・南条。南米リーグ出身で女好きです。
ある事から試合中のマウンドで飛雄馬が殴ってしまうほど…花形らと違って本当の嫌な奴キャラでした。

今作品連載中である1977年、飛雄馬のいる巨人軍なので登場人物としても重要な役どころを持つ王貞治が通算本塁打数でハンク・アーロンを抜いて世界記録樹立。
飛雄馬はこの偉大な人物や栄光の背番号3をくれた長嶋と比べて小さい自分を恥じ、巨人も日本一の座を逃したとあって…ついに!ついに大リ-グボ-ルに着手します!!

左腕を破壊した禁断の大リ-グボ-ルですが、ここでも坂本龍馬の言葉(として梶原一騎先生が創作)、
『いつ死ぬかわからないが いつも坂道を登ってゆく 死ぬときはドブの中でも前のめりで死にたい』
が飛び出して、巨人のために殉ずる決意を固めた飛雄馬がハワイで一徹、伴と共に編み出したのは大リ-グボ-ル右1号…ボ-ルが3つに変化する"蜃気楼の魔球"です。
今回はなかなか魔球が出てこない展開でしたが、最後から2冊目、10巻になってようやく出たわけです。

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大リ-グボ-ル右1号で勝利を重ねる飛雄馬ですが、ただし一徹曰く、過去に投げてきた魔球のうち最も見た目には凄いが攻略されやすい致命的な穴がある、との事。
そんなわけでやはり、それを見抜いた花形によって攻略されるのでした。ちなみに今回の魔球は、作中で原理が明かされずに終わりました。
この作品「新巨人の星」も、もはや通じなくなった大リ-グボ-ル右1号に続いて第二の魔球を夢見る所で終了。前作のような悲痛さは無いものの、負けて終わるのです。
実在の巨人が前のように勝てなくなった事が原因と言われていますが、連載もイマイチ人気が無かったのでしょう。また新魔球→破られる→特訓→新魔球…の無限ループが続く展開を避けられて良かったのかもしれません。

最終巻には、単行本半分程の分量を使って「それからの飛雄馬」が収録されています。
これは「新巨人の星」連載中である1978年に、前作を連載していた週刊少年マガジンの『創刊20周年記念』として掲載された読切作品で、飛雄馬が巨人を去って三年後(1973年ごろ)…つまり「巨人の星」「新巨人の星」の間に当たる時期の彼を描いた貴重な作品。
美奈と出会った宮崎の地で地元の日向三高野球部と関わり、入部予定者をコーチする話ですが、コーチとしての技術も一徹ばりに凄い事が判明します。
さらに巻末にもう一編、「旅立ち」なる短編が収録されているのですが、これは川崎のぼる先生のオリジナル作品でしょう…セカチューみたいな難病系感動話でした。


業だ!
もの心ついたころから 玩具といえばボールしか与えられず
あの時期は野球を憎悪しつつも オヤジの妄執 執念でたたき込まれ
首根っ子つかまれて"巨人の星"なるものを仰がされ
文字どおり野球のみに生き その投手として死んだ男の…



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  1. 2013/06/20(木) 23:59:49|
  2. 梶原一騎
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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旅立ち

「旅立ち」ですか?
たしか、私が中2の夏休み(昭和49年)に「週刊少年マガジン」に突如読み切りで掲載された作品だったと思います。

「俺の名は上田良…良は不良の良と書く」というセリフがありましたよね。この粋なセリフと、ヒロインが可愛かったことは今でも覚えています。最後は船で…。

流石にこの頃は「冒険王」には興味がなく、当時の少年週刊誌5誌を買い漁ってましたよ(笑)。その中でもジャンプは毎週買ってました。「花も嵐も」は全話読んだと思います。
  1. 2013/06/22(土) 10:29:12 |
  2. URL |
  3. 秀和 #-
  4. [ 編集]

コメントありがとうございます。

>秀和さま

凄い、「旅立ち」をリアルタイムで読んでるって方の話を初めて聞きました。オレは今、モーレツに感動している!!

「花も嵐も」も少年ジャンプで読んでましたか。私のような後追い世代の読者は当時の空気感とか分からないのが難点ですが、多少は話題になったりしていたのですかね?
今は一部のマニア以外にはすっかり忘れ去られてますが、私にとっては大事な作品です。
  1. 2013/06/23(日) 16:46:17 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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