大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

梶原一騎(54) 川崎のぼる 9 村上よしゆき 1 「新約「巨人の星」花形」 1

今回は「巨人の星」の新約…つまりリメイク作。
オリジナル作者の名前は梶原一騎川崎のぼる原作としてクレジットにし、村上よしゆき先生が描き直したのは、その名も「新約「巨人の星」花形」(講談社刊)です。
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初出は「巨人の星」と同じ週刊少年マガジンで、本家連載開始のちょうど40年後(!)である2006年から、同じ約5年の歳月をかけて2011年まで連載されました。単行本はこちらの方が長い、全22巻!

まず、作者の村上よしゆき先生。この時はこれといって目立つキャリアが無くて誰?という所でしたが、1981年生まれの愛知県出身で、2003年に「うるとら☆チャンプ」でデビューした、との事です。梶原一騎先生と同じ誕生日(9月4日)であり、ペンネームは川崎のぼる先生が名付け親だというから羨ましい限りです。

連載開始第一回目からちゃんとマガジンで読んでましたが、絵が今風のポップな感じにアレンジされているので当初は川崎のぼる劇画を愛する私からしたら違和感が強くてきつかったんですよね。でも絵はすぐに慣れるし、綺麗な絵で丁寧に描いているのが見えてきてむしろ好きな作風になってきました。
作品の舞台設定も連載開始現在の時間に直しているので川崎絵の方が合わないでしょうし、「巨人の星」に関しては特に歴代様々な所でパロディをされまくっている作品なので、今さらここがイメージと違う、とか文句付けるのもナンセンスすぎるし。
そもそも、過去の名作をリメイクするという発想が素晴らしいですよね。当然コアなファンが付いているので読者によるチェックの目が厳しい中を挑んだわけですが、こういう企画は面白い。「あしたのジョー」に関してだけは、ちばてつや先生がどんなオファーも断っていると真樹日佐夫先生の著作で書かれていましたが、他にも無数にある梶原一騎原作のあれもこれも、きちんとしたリメイクなんてされてないじゃないですか。これを期にこういった試みが流行りませんかね。

さて「新約「巨人の星」花形」
時間軸が現代になっているのに加えて、特に大きな違いはタイトルでお分かりの通り主人公が花形満に変更されている事。当然星飛雄馬は強力なライバルとして登場する事になります。
オリジナル作品と同じ登場人物が次々と出てくるものの、主人公も含め性格などの設定が違う部分が目立ちます。もちろん名作をそのままなぞるように描いてもしょうがないので、どれだけ変えて面白く見せるかが見所でしょう。
それに本作のみ登場の創作キャラが多く登場しますが、特に序盤。甲子園決勝戦で登場した花形満のプロローグから、いきなり数年前に遡り、オリジナルでは描かれなかった花形満の中学生時代からスタートです。
中学一年生でチビの花形…ケンカは弱く、小学生の頃は投手として(何と花形が投手!)リトルリーグで全国大会を二度優勝するほど大活躍した天才でありながら、肩を壊して打者としての再起を目指します。

ただしこの中学校の野球部は荒廃して不良のたまり場となっており、それを花形満が現れた事で皆が野球に打ち込む土台が出来ていく…そんな展開で、真面目に練習し始めたら不良が一般生徒からなめられてジレンマに陥ったり、森田まさのり先生の「ROOKIES」(ルーキーズ)からの影響を感じます。
この中学生編では順主役として三年生の黒沢影人なる創作キャラが描かれるのですが、長身でアンダースローからの高速スライダーを投げる投手。彼がある考えから暴力事件を起こして野球部は廃部となり、それでも諦めない花形は草野球チーム"ブラックシャドーズ"(ブラックシャドウズ)を結成して次のステップへ進むのです。
このチーム名はおなじみですね。もちろんオリジナル作品「巨人の星」で花形が不良少年時代(今作では不良ではない)にいた球団ですが、そのチーム名が『黒沢影人』→『黒い影』→『ブラックシャドーズ』と黒沢から取られていたとは、40年後の新事実発覚!といった所でしょうか。まぁ、ここらへんはただのお遊びですが…

花形が監督も務める事になったブラックシャドーズは、かつてリトルで花形の控え投手だったためにコンプレックスを抱えており、成長したレイジ率いる桜町シニアとの対決。ただの練習試合ながら、白熱したこの試合で花形はチームからの信頼も得て、打者としての凄さ、天才ぶりも確かな物となりました。
で、この試合後にスタジャンの少年がボールを拾ってくれて花形と一瞬の邂逅を果たすのですが、この少年こそ、花形の最大のライバルとなる星飛雄馬。3巻の途中でようやく登場しましたが、この時は顔見せだけで物語に絡んでくるのはまだ後の話。

もうちょい黒沢影人を中心とした話が進むのですが、彼は元々は同じ野球部員だった狂気の男・滝洋一との諍いをきっかけに二度と歩けない、当然野球も出来ない体になってしまうのでした…
そして黒沢は物語からフェイドアウト。いや花形の精神に多大な影響を与えているので大事な位置に存在はしているのですが、彼を失う事によって物語は次の段階へ。ブラックシャドーズを解散し、花形は野球すらやめてしまうのです。

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黒沢影人が再起不能になりブラックシャドーズが解散する、という暗い所で物語が一区切りしたのですが、単行本途中で村上よしゆき先生が書いていた説明文によれば、それも川崎のぼる先生にも承諾を取っているそうです。という事は川崎先生、名前ばかりの原作クレジットじゃなくて相談くらいは受けているのですね。他にはどれだけ口出ししたのか、自分で決めた展開などがあるのかはまるで分かりませんが…

で、それから2年後。花形満は背も伸びて中学三年になっています。
しかも無免許でバイクを乗り回してるし、柄の悪い仲間も増えてケンカも強く、つまり彼も不良になっていますが、飛雄馬と出会ってしまうのです。二度目の邂逅となる今度は成り行きからちょっとだけ参加した草野球の場で。
草野球のレベルに合わせて、というよりまだ父の一徹以外の前で自分の力を見せた事がない飛雄馬は本来は左投手であるのに右で投げていて、それを見破る花形…という事は「新巨人の星」で右投手に目覚める、あの設定は無しだと分かります。
ついに左投げする飛雄馬ですが、しかしあの"大リーグボール養成ギプス"を着用したままであり、勝負付かずで終わってしまいました。ようやく飛雄馬側のドラマも描かれるようになりますが、一徹による激しいちゃぶ台返しが見開きページで2ページ使って描かれます!これはもうオリジナル作品ファンへのサービスでしょう。とはいえ、オリジナル作品でも1回しかひっくり返してないのですが(それも飛雄馬を殴ったら一緒にちゃぶ台が吹っ飛んだのです)、まぁアニメ版エンディングの影響で物凄く有名な行為です!
ちなみに親が優しくなった今の時代にリメイクした今作でも、一徹はガシガシと拳で息子に暴力をふるってますよ。

あとは花形がバイト中の飛雄馬の姉・明子と運命的な出会いもします。バイト先はもちろんガソリンスタンドで、会う時代などは違いますが場所だけは原作に忠実。
連載開始から1年もかかってからですが、飛雄馬側が描かれるとなると必然的に原作の内容に近くなっていきます。飛雄馬の一番の親友兼捕手である伴宙太も登場しますが、彼が最初は"青雲高校"の暴君的存在で野球部員達に『九竜虫』がモゾモゾ動いてるのをスタミナ料理と称して食わせていたり、細かい所が原作に忠実で笑えます。
今作では花形が主役なので別の出会い方で伴の方と対決したりしますが、こういう原作と違う展開を期待する読者になっている自分に気付きますね。

さて花形満と星飛雄馬の三度目の出会い。ここでついに大リーグボール養成ギプスを外して対決するのですが、何と43球投げてかすりもしない、自他共に『天才』と呼んでいた花形の完敗。さらに一徹が息子の限界を見るためにと、飛雄馬が猛練習で疲れた状態でやった勝負だったのだから、力の差は歴然すぎます。
このような実力差があっても燃えた花形は予定されていたイギリス留学を止めてブラックシャドーズ時代の仲間もいる神奈川県の"紅洋高校"に進学。飛雄馬が東京都の青雲高校へ進学し、二人は熱く戦う事になる…

花形が入った紅洋高校野球部は上級生による支配が激しく一年生はボールにすら触らせない方針でしたが、初めは対立した上級生達も花形の天才ぶりは認める所となり、学年による差別は廃止されました。
ちなみに紅洋高校にはもう一人天才と呼ばれた男、新海雄一キャプテンがいるのですが、彼はアキレス腱を断裂していて試合には出れない。副キャプテンが大泉洋輔で、エースは何と黒沢があのケガを負うきっかけになった滝洋一。他にもブラックシャドーズ時代に一緒だった元不良の赤川剛史桜庭朔、双子の金子竜一&竜二、同級生でも水野大樹芳賀聡、可愛い女子マネージャーの桃井江梨子。その他、主役周辺の数人だけを重点的に描いていたオリジナル作品に比べて周りのキャラを掘り下げています。
飛雄馬が入った青雲高校の方でも他の部員の出番を増やすと同時にキャラ設定を大幅に変えていて見所がたくさんあります!
そして二人の対決の日は近づいていく…

最初から容姿端麗で勉強もスポーツも出来て、"花形モータース"の御曹司なのでとんでもない大金持ち、こんな完璧すぎる奴を少年漫画の主人公にして大丈夫なのか!?ダメ押しにこのリメイク作のみの設定としてシェークスピアの言葉をとか引用するのを好むキザな奴になってるし!
なんて心配はしましたが、それが上手く悪役を出して構成された物語で引き込まれていくのです。続きは、また次回。


ボクは…自分の言葉を 曲げるつもりなどない……
グラウンドで語る言葉はもうない……
あとは実力で見せ付けてやるだけだ……!



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  1. 2013/06/26(水) 23:59:21|
  2. 梶原一騎
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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