大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(163) 平田弘史 3 「日本凄絶史」「武士道光芒記」

平田弘史作品より、「日本凄絶史」(青林工藝舎刊)。
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この本を皮切りにして青林工藝舎から平田弘史作品が次々と復刻されていった時期が記憶に新しいですが、2004年の発行だから、もう10年近く経つのですね。
今作は1980年のカスタムコミック(日本文芸社刊)で描かれた実録事件の連作『日本凄絶史』シリーズ4作品が中心となっていて、他に単行本初収録の3作品を加えて編んだものです。

まず「大垣藩治水魂」
激しい水害に悩まされていた美濃国の大垣藩では、統治している者達は必死の覚悟で水防に当たらなくてはならない…
またも恐ろしい洪水が堤を次々と崩してきた時、街を守る責任を持つ伊垣彦九郎は豪雨の中で水防作業を指揮します。即座に指示に従わない者は、片っ端から斬り殺してまで作業人を動かし、三千人という人数への命令伝達を成し遂げて、仮の堤はこの度の大洪水を持ちこたえました。
三昼夜一睡もせずに働く伊垣が諦めかけた作業人達の目の前で牛の頭を斬り飛ばし、人々のエネルギー源として無理矢理食わせる所が見せ場でしょうか。
ちなみに見事に死守した伊垣、一方で彼のように『凄絶』な行動を取れずに失敗した侍達…これは共に自決します。しかし、
平田弘史先生の激しく荒々しい画力が、物凄いパワーを発している名作!

「堺事件」は、あの土佐藩士とフランス人との間で起こった有名な攘夷事件ですが…
国の力関係故に不条理な切腹を申付けられた土佐藩士達は切腹の場で斬った腹から自分の腸を掴み出し、見物しているフランス兵達に次々と投げ付けた『凄絶』な史実。それを時代劇画の天才である平田先生の画力で見せるのだから凄い。馬鹿馬鹿しい事に付き合わずに自分だけ助かろうとしていた馬場という藩士が、本物の武士達を目の当たりにして重要な役割をする事でカタルシスを得るのですが、この部分は創作でしょうか。

「鹿島事件」は、扉絵からして血まみれの生首を並べた上にゴザを敷いて座っている殿様の絵で…ヤバいですね。絶大な勢力を持つ加賀藩前田家百万石ですが、領土の中で唯一完全な支配を出来ていない能登鹿島郡で寛文7年に起こった事件を描いて、
「飛騨大名金森家」は金森家に渦巻いた陰謀から後の公害病(イタイイタイ病)までを描いています。

…以上4本の日本凄絶史シリーズは1986年にも「武士道光芒記」(日本文芸社刊)のタイトルで単行本化されているのですが、実はこの時は6話が収録されていました。
HIRATA-bushido.jpg

つまり復刻するに当たって削除された話が2編ありまして、それは「父と子の道」「血だるま力士」
これが2編共『凄絶』さでは他の4編を上回る凄い傑作なだけに、復刻本に未収録だったのは残念でなりません。
何故かと考えながら読み返してみると、どちらも台詞に『片輪』という単語が飛び出します。これがまずかったのか?!しかしそれが問題なら出版業界お得意の、そこだけ台詞改変をすれば良かったのではないかとも思いますが、真相は分かりません。

しかし単行本「日本凄絶史」では、他に「下僕茂兵」「旗本郷右衛門」「お金改役」というそれまで単行本未収録だった幻の作品を3編収録する快挙を成しています。
不器用にしか生きられず時代の変化に付いて行けない男達を描くのは平田先生のお得意とする所ですが、まず1973年の作品「下僕茂兵」が素晴らしい。明治時代を舞台にノスタルジックな構成になっていて、下郎として人に利用され耐えるだけの人生だった茂兵がついに怒りを爆発させ、ある男の首を素手で引きちぎり頭を投げつける…
同じく1973年の作品「旗本郷右衛門」も泣ける名作だし、ラストの1986年作品「お金改役」は大金持ちVS金では動かない貧乏侍という勝負が描かれていて、教訓的な有難いお話。これはまず冒頭の金持ちによる大判小判遊びが凄い!金持ちには当然のように群がる裸の女達、彼女らは局部に入れた分だけお金を貰えるとあってもっともっとと股間に詰め込んでもらうのですが、欲張りすぎた女は50枚入れられて死んでしまいます。
ちなみに金持ち男(後藤光茂)が小判を入れる時の台詞は、『よしよし入れてやるぞよ 光茂の珍宝(ちんぽう) よく味わえよ』でした。

それから巻末には平田弘史年譜・全作品リスト収録。
これが本人も協力した年譜という事で、細かい字で9ページを使ったやたらと詳細な物であり、ちょっとした自伝になっているのでお薦めです。そして読者は、平田弘史先生の人生自体が『凄絶』すぎると知る事でしょう。


焼けッ!そしてこれを食えッ!
腹を満たしてふるい立てッ!
己れから見切りをつけるな!立ち上がれッ
洪水の悲惨 思い知りたい奴は前に出ろッ!



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  1. 2013/07/13(土) 23:02:25|
  2. 劇画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

中田サ高住と申します。

初めまして。中田サ高住と申します。
興味をそそるブログですね。またお邪魔させていただきたいと思います。
これからも更新頑張ってください!

by 中田サ高住
  1. 2013/07/15(月) 00:01:27 |
  2. URL |
  3. 中田サ高住 #V9RfhyXk
  4. [ 編集]

コメントありがとうございます。

>中田サ高住さま

ありがとうございます。
平田弘史先生の描く武士達の姿に学んで大きい人物になると同時に、このブログも内容を良くしていけるように精進します。
  1. 2013/07/15(月) 14:33:24 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

鴨志田 昌也です。

鴨志田 昌也です。
今回ブログを見させていただきました。
また、見させていただきます。
  1. 2013/07/16(火) 17:54:03 |
  2. URL |
  3. 鴨志田 昌也 #RYRDQd9c
  4. [ 編集]

コメントありがとうございます。

>鴨志田 昌也さま

よろしくお願い致します。
  1. 2013/07/18(木) 22:31:13 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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