大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(164) 平田弘史 4 「血だるま剣法・おのれらに告ぐ」

平田弘史作品より、「血だるま剣法・おのれらに告ぐ」(青林工藝舎刊)。
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2004年…劇画好きの間で震撼が走りました。そう、我々が生きている間に復刊される事はあるまいと思われていた平田弘史先生の「血だるま剣法」が、42年ぶりで本当に復刊されちゃったのですから!
1962年に大阪の貸本漫画出版社・日の丸文庫の『魔像』別冊として描き下しで上梓されたものの、部落解放同盟の抗議を受けたためにわずか1ヶ月で回収され、その後ずっと絶版となっていた伝説の作品ですよ。昨年もラピュータから1961年の「復讐つんではくずし」とのカップリングという形でまた復刊されているし、とにかく「血だるま剣法」を誰でも読める時代が来たのです。

思えば幼少期から漫画が人一倍好きで幼年誌→少年誌→青年誌と、そして月刊漫画ガロなどのマニア向け漫画誌まで手を出してそれなりに何でも読んでるオタク系の大人に成長していた私ですが、それでもついに読めた「血だるま剣法」のオリジナル版は衝撃的でしたね。
この時にも併録されている1968年の「おのれらに告ぐ」「血だるま剣法」のリメイク版であり、こちらは既に全6巻の「平田弘史傑作集」(日本文芸社刊)を持っていたので読んでいたのですが…いやはやオリジナル版は問題にならないほど強烈な力を放っていました。

物語の舞台は寛永9年。
主人公の猪子幻之助はたった一人の味方だと信じていた師匠の朽木一伝斉へ涙を流しながら詰め寄り、さらに師を殺して切り取った死体の腕を使った血文字で
『おのれらに告ぐ
 おれはおのれらを
 皆殺しにしてやるのだ 幻のすけ』

という声明文を書き残して道場を去りました。

それから過去へ遡って彼が道場へ来た若き日からの事、そして何故彼がこのような凶行に及んだかが語られていきますが…
とにかく現在、悪鬼と化した幻之助による門弟達への復讐が次々と行われていきます。
もう↑で、この作品は部落解放同盟の抗議を受けた旨を書きましたが、全ては幻之助の被差別部落出身という生い立ちが不幸を呼んでいたのです。そのため親兄弟も全員惨殺されたし、それを隠して剣の道を目指すもついにバレてしまいまた差別を受けて。
恐ろしい幻之助の復讐も、彼が両手両足を切り落とされたダルマ姿になると終わりを告げ…ない!

10年の時を経た後、また一伝斉ので弟子達が次々と襲われてゆきます。
幻之助はダルマ姿になってもなお生きて、執念で独特の剣法を工夫していたのです。蛇のように速く這えるように肉体改造する様は鬼。これぞ血だるま剣法!
血みどろの復讐劇は続き…驚愕のラストまで、全く目が離せません。

こんな名作が日の目を見ずに埋もれていたわけですが、では部落解放同盟に強攻策を取って弾圧するほど差別的な内容なのかといえば、それが逆。差別の無い社会を夢見る主人公を使って、差別の醜さを描いているにすぎないのですよ。
現在でもそうですが、部落問題は内容がどうかは関係なくて存在、言葉を使う事自体がタブーになっているんですよね…
よってこの作品を復刊するに当たり、まずセリフや文字による説明部分が伏字になっています。監修者の呉智英さまによる解説「四十余年の封印を解いて」が活字でギッシリ14ページあるのですが、その中に「穢多」「非人」は○○、△△、とする。とか書かれているのでけっこう本文の補完が出来ます。それでも×××××××××××××××って部分もあるのでそこは予測すら不可能ですが。他の部分も含めて呉智英さまの解説は素晴らしいので、作品に興味を持った方はそこも忘れずに読んで頂きたい。

リメイク版の「おのれらに告ぐ」は、不本意な回収をされた力作がよほど悔しかったのでしょうね…頁数もかなり減っているのに「血だるま剣法」の良いシーンがかなり忠実に再現されていて、画力もアップしているのでこれはこれで読み応えあります。オリジナルと比べて読むとまた面白い。
ちなみに○○部落出身とされた幻之助の出自は、「おのれらに告ぐ」では『流刑人の子孫』に変更されています。

ところでこの歴史的な復刊は、漫画家の山松ゆうきち先生が所持していたオリジナル本を基にして成ったそうです。
回収された「血だるま剣法」ですが、廃棄処分されていなかったのか山松先生が社員として入社した日の丸文庫に大量に保管されていたのだとかで。古本市場では何十年も物凄い額で取り引きされていたのに、それは勿体無い!
ちなみに日の丸文庫は山上たつひこ先生も社員でしたから同じく入手し、自作「鬼刃流転」でパロディもしています。この復刊本でその絵も2コマだけ見れますが、誰も知らない作品のパロディって…!?

これが、その幻だったオリジナル作品(日の丸文庫版)の表紙。今回の復刊で初版限定らしいのですが、カバーを外すと内ジャケットに再現されています。
HIRATA-chidaruma-kenpo2.jpg

さらに山松ゆうきち先生は「インドへ馬鹿がやって来た」(日本文芸社刊)で、単身言葉の通じないし漫画が浸透していないインドに渡って「血だるま剣法」をヒンディー語に翻訳して出版する顛末を描いています。この本自体が旅漫画・人生漫画としてメチャクチャ面白いです。
その続編「またまたインドへ馬鹿がやって来た」も本当に凄い作品で…ちょっと泣きました。
YAMAMATSU-baka-came-to-India.jpgYAMAMATSU-baka-came-to-India2.jpg

で、こちらが山松先生が手がけたヒンディー語版「血だるま剣法」
HIRATA-chidaruma-kenpo3.png
ヒンディー語で史上初めて出版された日本の漫画が、この日本でもカルトすぎる「血だるま剣法」となったのだから面白いですね。そりゃ山松先生が「ドラゴンボール」「ONE PIECE」みたいなのを持っていくわけがないとはいえ…


あ、あなたは!あなたは!
私をのけ者になされた……私をのけ者になされた!
私を除外なされたッ!私を斬ろうとなされたッ!
何故です!何故です!私が人間でないからですか!
私が人間でないからですか!師匠お~



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  1. 2013/07/16(火) 23:59:58|
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コメント

初めましてU・Mと申します。
「血だるま剣法」凄く興味がありますが、伏字
だらけと言うのは・・・
いつか伏字を外した完全復刻盤を観てみたい
ですね!!
  1. 2014/03/13(木) 01:07:18 |
  2. URL |
  3. U・M #6yFkIl5c
  4. [ 編集]

コメントありがとうございます。

>U・Mさま

伏字を外した完全復刻盤を望むより、もしかしたら大金かけてオリジナル版を手に入れた方が早い話かもしれませんね・・・
  1. 2014/03/13(木) 23:16:11 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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