大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

月刊漫画ガロ(126) 古屋兎丸 11 「彼女を守る51の方法」

古屋兎丸作品紹介、続いては「彼女を守る51の方法」(新潮社刊)。
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週刊コミックバンチで2006年から翌年まで連載された作品で、単行本は全5巻。
古屋兎丸先生が描いた、何と震災モノ。
震災といえば我々日本人にとって2011年3月11日が忘れられない日になりましたが、そのちょっと前に大地震に遭遇したら起きうるトラブルとその悲惨さ、トラブル解決法までを描いていたのですね。つまりこの読者は、舞台が大都市・東京都なので東北と条件はちょっと違いますが、帰宅困難者の事や埋立地の液状化現象とか、3・11後に広く知れ渡った事も事前に学ぶ事が出来ていたのです。原発の問題などは、『まだまだ描けていないこと』としてあとがきで追記されていますが。

この作品も原案があって、防災・危機管理ジャーナリストの渡辺実が監修した『彼女を守るプロジェクト』による、「彼女を守る51の方法 都会で地震が起こった日」(マイクロマガジン社刊)。
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これで学んだ古屋兎丸先生が舞台となる土地を実際に徒歩で移動し、被災者の身になってフィールドワークしつつ独自の登場人物を創作して物語にしたのが漫画版で、渡辺実氏は1~4巻までの巻末で震災知識を補足する解説も書いています。
タイトルで分かる通り、大震災から身を守る事も大事ですがそれ以上にカップル目線から『彼女を守る』事に主題を置いているのが特徴ですね。

その日…2月23日。
テレビ局への就活のためお台場を訪れていた大学三年生で、勉強もスポーツも出来るさわやか男の三島ジン。そして、サリン・ヘルヴァイン(サリヘル)なるビジュアル系バンドの解散ライブ『聖デストピア』目当てで来ていたバンギャでゴスロリの岡野なな子(ライブネームはロルコ)。容姿はMOON香奈(MOONKANA)をモデルにしているそうです。
二人は中学時代の同級生で、たまたま居合わせて再会したお台場でマグニチュード8(震度7)の大地震に遭遇し、崩壊した都市で命の危険にさらされながら生き抜いていく。

頭が良くてスポーツも出来るヒーロー的なジン、元いじめられっ子だったなな子、趣味などは全く違う二人が自宅がある早稲田を目指して行くのですが、まず液状化現象を起こした危険な埋立地・お台場を抜けるまでで2巻までの分量を使ってますね。傾いている観覧車、自由の女神。
それでもまだ、外にいた彼らはマシでした。ショッピングセンター内にいた人々の惨状を目の当たりにし、ジンは必至で救出活動します。それでもどうにも出来なくて見捨てざるを得ない人々、既に死んでいる人の数…それに苦しんでいる間もなく余震も襲ってきて。

なな子を守る事を目的として何とか折れずに済んだジンですが、カズオとの出会いと悲しい別れ…
そうそう、もちろん天災は恐ろしいですが、それから発生する人間、つまりパニックを起こしたり暴徒になったりする人間が怖いですね。
お台場から脱出できる3つのルートのうち、機能しているのは1つ、レインボーブリッジを徒歩で渡る方法だけ。ここでまた特殊な揺れから凄い波乱がありつつ、ついに橋を渡りきって品川周辺へ出ました!
そこで19歳のギャル、澤田リカと出会って二人と行動を共にします。

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(↑古屋兎丸作品はずっと新刊で買っているのですが、3巻だけ帯付き本を見つけられませんでした。何らかの理由で付かなかったのだと思います)

続いては火災旋風で巻き上がった黒焦げ死体が降ってくる地獄、ビルが倒壊した街を逃げ惑う人々…
曲がりながらもまだ立っていた東京タワーを階段で昇り、上空から死のうとしている東京を確認してしまいました。
震災から初めて見た大勢の警官が立ってるだけで大使館周辺の警護で外国人を守っているし、必至に移動した先の六本木では、ジンが今まで助けられなかった死人や怪我人の目に悩まされてPTSDで倒れ、リカは不法占拠の若者達にレイプされる!無法地帯になればやはりそれがありえるし、リアルできつい描写が続きます。

次は渋谷へ。
病院では災害時の鉄則である『トリアージ』のため暴行を受けたリカも診てもらえない!迷子の幼女、まりんを保護して一行の仲間入り。
センター街はKARASUなるチーマー達が占拠していて、またもリカと今度はなな子までレイプされかけますが、何とか助かりました。良かった良かった…けど、これは漫画ゆえにヒロインまではやられずに助かっただけで、現実ではどうでしょう。タイミング良く助けなんかきませんよ。
地震で治安が維持されなくなったおかげで金も女も手に入れてのさばる連中ってのもいて、いかに防衛力が大事か思い知らされます。後で争いを避ける平和主義者も出てきますが、そんなのがどういう思想か

さらにピンチが続き、何と主人公のジンが"21世紀箱船学会"なる悪徳な新興宗教団体に洗脳されてしまいます。傷付いた人間ほど、宗教に救いを求めてしまうのです。
それから犯罪とは無縁の普通の人々もおかしくなっていく様が描かれ、ついには暴動が!!

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109をモデルにした"009"(マルキュー)を舞台に、暴徒を相手にした戦争が発生していますが、その最中にジンとなな子の感動的な告白、知り合った妊婦・鹿野久美子の出産などあり、物語は結末に向かって行く…

サバイバル旅路も最後の舞台、新宿に移りました。
この最大の繁華街はどれだけの地獄になっているかと思うでしょうが、そこは今までと違って秩序を保っています!暴力団や右翼団体らが靖国通りで復興イベントを催していて、幸せそうな都民達の笑顔あふれる光景なんですね。
作品の流れからすると拍子抜けした部分もありますが、まぁ残りページ数も少なかったのだろうし、最後は復興への希望を描いて締めたかったのでしょう。でも実録タッチの作品で、暴力団を『実は任侠心を持ついい人達だった』的に美化する辺りはガッカリしました。一般人を食いものにして暮らしている人達なのに、全く真逆なカタギには手を出さないだなんてファンタジーを信じしまえる奴がいる事に驚きもしますが、普段彼らがどうして糧を得ているのか是非とも調べて欲しいですね。古屋兎丸先生も、知っていたらこうは描かないのではないでしょうか…て、まぁリアリティを排しても希望を描きたかったのでしょう。

主人公らが帰宅する直前までの長い長い7日間は終わり、最終話で5年後が描かれて、物語は幸せに幕を閉じました。
古屋兎丸先生の絵とか、恋愛物語としての側面も良いのですが、とにかく防災マニュアルと役立つのがエライ。トイレなどライフラインの問題から、服装・所持品・平常時の準備について…しばらくは震災、防災モノの定番漫画になるのではないでしょうか。


現在 東京・首都圏に
直下型の地震はいつ来てもおかしくない状態だと
言われている
今 巨大地震が東京を襲ったら
僕たちの被災はどんなものなのだろうか?
これは“今”の東京大震災を描いた物語である



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  1. 2013/10/22(火) 23:05:21|
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  1. 2013/10/24(木) 16:08:26 |
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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