大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

月刊漫画ガロ(131) 古屋兎丸 16 「人間失格」

古屋兎丸作品、続いては「人間失格」(新潮社刊)。
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週刊コミックバンチ(その休刊後は月刊コミック@バンチ)で2009年から2011年まで連載された作品で、単行本はBUNCH COMICSで全3巻。
これはもう、このタイトルでお分かりですね。当然ながら日本文学史上の金字塔である太宰治の同名作品を原案にしているのですが…これはもう別の作品。原案作品を話だけなぞっている部分が見えながら解釈が違いすぎて、私は連載半ばくらいまでイチ太宰文学ファンとして、これは酷いと怒りを覚える部分もありましたが(笑)、別作品だと割り切っている今は、けっこう好きな『古屋兎丸作品』ですね。

連載開始が太宰治生誕100年記念に当たる年だった事もあって出版業界は太宰治に沸き、今作も鳴り物入りで始まりました。
太宰治が入水自殺した玉川上水のすぐ近くで高校生活を過ごし、その高校で12年間教師として勤め…この作品執筆時もまた玉川上水近くに住んでいるという古屋兎丸先生が挑んだ「人間失格」ですが、何と現代版にリメイクしています。
作中に漫画家の古屋兎丸先生自身が登場し、ネットサーフィンしているうちに大庭葉蔵の日記(ブログ)を見つけて読み進めていく、という形式で話が進みます。

もちろんその日記の出だしは『三葉の写真』であり、文章の書き出しは、
『恥の多い生涯を送って来ました』
です。

葉蔵17歳、イケメンで秀才で高校の人気者ですが、その実は人に好かれるために何でもやる道化。皆が自然にやっている普通というものがまるで分からず、そして人間を怖いと思っている…
唯一心が休まる美術予備校で堀木正雄に出会って酒や煙草から風俗を覚え、日陰者達が集う左翼運動にまで引き込まれました。
それから運命の歯車は狂っていき、学校に行かなくなった葉蔵は親から勘当され、さらに自分で自分を駄目にしていく性分が発揮されます。

スナックの女・アゲハとの入水心中!しかも女だけが死亡して生き残ってしまった葉蔵は自殺幇助の罪で留置所に拘留されるものの、富豪の実家から父が金を積んで釈放させ、かつての使用人だったヒラメの家で監視されながら生活するのでした。
滑稽なほど手のひら返した態度のヒラメの息子は魔裟斗なんてふざけた名前で、容姿は「無能の人」の三助みたいなガキ。

そのうちヒラメの元から逃げ出して、上手く釣った子持ちの女、大衆文藝舎の田中静子の部屋に転がり込む。子供が寝ている横でするセックスがチラっと描かれるのですが、中年女の体とかリアルすぎ!
この時点で古屋兎丸先生が冒頭から読んでいるこの日記が書き始められ、また美術の勉強をしていた事を活かして葉蔵も漫画家の仕事を始めるのでした。古屋先生、葉蔵をかなり自分と重ね合わせています。
コロボンという児童漫画誌に連載を始めて人気を博すのですが、その作品のタイトルは何と「セッカチピンチャン」。ここで土田世紀作品から頂いたタイトルですか…
しかしある事から静子の元も逃げ出して、次はマノス(もしや魔の巣!?)というバーのマダムの元へ転がり込むのでした。

バー生活の葉蔵も20歳を超えた所で、『まるで中2のような恋』をしました。相手はタバコ屋の娘で、高校を出たばかりの朝井佳乃、容姿も可愛い18歳。
汚れに汚れた葉蔵が、無垢な佳乃と真面目に恋愛して、結婚へ。

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幸せに暮らす葉蔵ですが、もちろんずっとそんな生活が許されるはずもなく、また闇に飲み込まれていく…
何と愛する妻が出入りの編集者に犯される所を目撃しますが、そこに現代版らしくリストラとか派遣社員の問題を絡めている所は、シリアスな場面なのに笑ってしまいました。
絶望した葉蔵は頭髪が一晩で真っ白になり、酒びたり生活から、さらには麻薬中毒へと堕ちていきます。

太宰治のオリジナル「人間失格」と内容を交錯しながら進む物語は、一応セミドキュメンタリー形式なので登場人物としての古屋兎丸先生が葉蔵を追い、ついに出会う所まで描かれて終わります。ちょっとホロリとさせ、ちょっと希望を残して…

随所に古屋先生持ち前の画力を活かしたグッとくる描写があるし、漫画版ならではの魅力もある良作になったと思います。
話題作だったので掲載誌の週刊コミックバンチ時代に2回(これは太宰治生誕100年記念の2009年)、
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そして2011年ですが月刊コミック@バンチ時代にも1回、表紙も飾りました!
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死にたくない…
死ねないくせに 生きたくもない…
俺はいったいどうしたらいいんだ!?
まだ足りてないのか?
この世の苦しみや 人間に対する恐怖をもっと知らないと
死ぬ勇気も与えられないのか?



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  1. 2013/11/04(月) 23:00:22|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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