大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(175) 相原コージ 1 竹熊健太郎 1 「サルでも描けるまんが教室」

今回は相原コージ&竹熊健太郎の共著で日本ギャグ漫画界の金字塔、サルまんこと…
「サルでも描けるまんが教室」(小学館刊)。
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まずは著者についてザッと振り返ると、ほぼ作画担当だと思われる相原コージ先生は、1963年生まれの北海道出身で「かってにシロクマ」「神の見えざる金玉」「コージ苑」「真・異種格闘大戦」等のヒット作を持つ漫画家。私も代表作と言えるそれらの作品はかろうじて全て読んでる、という程度の浅い読者ですが、学生時代に読んでいたので思い入れは深いです。
続いてほぼ原作担当だと思われる竹熊健太郎先生は、1960年生まれで東京都出身、編集家を名乗っていますが要は文筆家だと思います。漫画の原作者としては、他に羽生生純作画の「ファミ通のアレ(仮題)」とか、永福一成作画の「チャイルド★プラネット」が有名でしょうか。あとは1990年代のサブカル誌では一番の成功を収めたQuickJapan(太田出版刊)関連の、『QJマンガ選書』監修者(米澤嘉博と共同)として私にとって印象が強いですね。凄いインテリな方なのに、その頭脳を使って思いっきりバカやれるのがまた凄くて、そうして生まれたのが…

ビッグコミックスピリッツ誌上で1989年から連載開始され、伝説となるサルまん。
単行本はB5版のでかいサイズで全3巻。タイトルから漫画入門の本だと思われるでしょうが、違います。そういうタイトルのギャグ漫画であるだけなので、特に漫画家を目指してない方も手にとってみてください!
いや、一応描き方も指南しているし、パロディ漫画であり評論漫画であり、他にも様々な要素が凝縮されています。相原コージ先生は情報量が多い絵を描く方だし、竹熊健太郎先生の解説・ウンチク(これ自体がギャグになっていてまた面白い!)が要所要所で入るので文章量も多くて、内容がギッシリと重い。

本を開くとまず『まんがの一生』というカラーページで写真も使ったオープニング…いきなりまず、ここで爆笑するのですが、本編の1話目からは竹熊健太郎相原弘治という二人の青年が出てきてヒットする漫画の描き方を学んでゆきます。
ペンネームの付け方、ワク線の引き方、表情の描き方、ポーズの描き方、アイデアの出し方…と、続いていくので 本当に漫画家入門書っぽいですよね。それぞれの項目を学ぶ二人は『漫画で日本を支配する』野望を持っているのですが、野望、野望って連呼する彼らの姿は雁屋哲原作・由起賢二作画の劇画「野望の王国」そのもの!
絶妙なパロディをふんだんに取り入れて笑わせてくれる「サルでも描けるまんが教室」ですが、ほぼ全編で画風の元ネタにしている一番の大本は「野望の王国」。だからでしょうね、男臭すぎて女っ気が感じられない画になっているサルまん。
ちなみにサルまん通過以前と以降で「野望の王国」の見方が全然違ってしまう効果もあります。あの様々な権力の姿をバイオレンスに描いた名作が、サルまんを読んだ後は笑いの対象でしかなくなってしまうのですね。

サルまんは、1970年代の大仰な演出がカッコ良かった真面目な劇画も、1980年代のバブリーで軽薄短小さ溢れるコミックも、離れた視線でパロディ化出来るようになった1990年代に描かれ事で生まれた名作なのです。
ああ、サルまん自体が連載からもう20年以上経っていますが、パロディ漫画のネタも古いので過去の名作漫画に興味の無い方だと読んでも元ネタが分からず面白さが半減する欠点がありますね…
とはいえ、川崎のぼる赤塚不二夫つのだじろう弘兼憲史ビッグ錠つげ義春…等々、まぁパロディの性質上、個性的な絵で誰でも分かる有名な漫画家の先生方が使われているし、もし分からないのならここから元ネタを探してみる面白さもあると思います。

作品も中盤に差し掛かり、いよいよ作品を描き上げて週刊少年スピリッツに持ち込みする段になった竹熊&相原、2人の担当編集者・佐藤「聖マッスル」(これはちょっとマニアックの部類か…ふくしま政美画、宮崎惇原作)の巨人王そっくりなのに笑えます。このように単行本の背表紙では1巻相原→2巻竹熊に続いて、3巻では佐藤なのだから文字通り3人目の主役。
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この佐藤を主役にしたスピンオフ作品『サルでもやれる編集者教室』も単行本に収録されていますよ。
編集者と食事する時の注意とか面白い事諸々ありまして、2人はついに「とんち番長」の連載を大ヒットさせるのでした!投書の形で高橋留美子先生が貴重な顔写真付きで登場したりもしています。

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サルまん読者にとっては劇中劇、というか漫画中漫画の試みで描かれた「とんち番長」。これをヒットさせた2人、これであの野望を実現…と思いきや、ヒットさせ続ける事の難しさやアニメ化した時の苦しみ、何か色々経験しているうちに人気が急落し、作品のテーマまで変えて売れ線に迎合するも全く効果が無くて作者の精神が崩壊。
連載が打ち切られて、クイズ番組に出てみたり安全でクリーンな原子力発電所のPR漫画を描き、さらにはかつてのヒット作の続編を描いてみたり、あとは勿体無いのでここで全部は書きませんがね、あの怒涛のオチにつながっていくのです。

裏話ですが、サルまんは竹熊健太郎先生の友人であり売れっ子漫画家の藤原カムイ先生と話していた内容が元ネタになっているらしいのです。
よって元々は藤原カムイ作画のサルまんが企画されていたそうですが、現在の姿を見ている読者からしたら絵が綺麗すぎて全然イメージ違うし、全くの別物になったであろう事が想像されます。

上記のオリジナル単行本の発行は1990年でしたが、1997年になってついに「新装版 サルまん サルでも描けるまんが教室」として、普及版的なA5サイズの単行本が発売されました。
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こちらは上下巻の全2巻でまとめられています。オリジナルではフルカラーだった爆笑編『まんがと法律』がモノクロになっていたり、もちろんサイズが小さい等、いくつか不満点があるのも確かながら、『新装版特別付録』として「サルでも描けるまんが教室 海外雄飛編」が追加収録されています。これは「消えたマンガ家」著者の大泉実成に落ちぶれた竹熊&相原が追い回される写真漫画で、ファンなら当然抑えておきたい所です。
さらにさらに2006年になって「サルまん サルでも描けるまんが教室 21世紀愛蔵版」も発売されて、時代に合わせて『萌え』がテーマの章も追加しているし、2007年には月刊IKKI誌上にて「サルまん2.0」という正式な続編が連載開始しましたが、1年半ほどで連載終了して単行本化もされていないという、いわば黒歴史のようになっています。

竹熊健太郎先生の活字本「マンガ原稿料はなぜ安いのか?」(イーストプレス刊)では、サルまん誕生の経緯やボツにしたネームなどを掲載しているのでこちらも抑えておきましょう。表紙は羽生生純先生の手による画です!
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竹熊先生はいつまでも『サルまんの竹熊』と言われる事を嘆いている文章も書いていましたが、相原コージ先生にしたってそうでしょう。それほどインパクトが強く、黒歴史も含めて伝説にふさわしい作品なのでした。


ちんぴょろすぽ~~ん!!


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  1. 2013/11/20(水) 23:59:43|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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