大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

月刊漫画ガロ(133) ねこぢる 2 「ねこぢるうどん」

今夜はねこぢる作品、「ねこぢるうどん」(青林堂刊)です。
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ガロの枠を大きく飛び出した売れ方で一世を風靡し、キャラクター商品も好調に売れている時期に自殺してしまったねこぢる先生…
あの活躍も、まず初めに「ねこぢるうどん」ありきです。
1990年の月刊漫画ガロで連載開始したこのデビュー作は、同時に代表作であり、青林堂からのオリジナル単行本は全2巻。
最初に単行本化した時点では続きが出るか分からなかったのか、1巻の背表紙に『1』の番号が振っていなかったのですが、
NEKODIRU-nekodiru-udon2.jpg
後の重版では追加して書かれました。
ちなみに1巻の帯文は知久寿焼、2巻の帯文はサエキけんぞうです。

「ねこぢるうどん」で描かれる主人公の猫一家は、にゃーこ(言葉を話す)とにゃっ太(言葉はまだ話せない-猫の鳴き声のみ)の姉弟、それにしっかり者の母親にゃす江と、アル中の父親にゃん五郎
擬人化したこの猫一家を主人公としながらも人間の世界が描かれる形式で、可愛いキャラクターのくせに残酷な世界に生きる様を一話完結型の短編で描く、というのが基本。
これが礼儀だの常識だのを習う前の子供が持つ無邪気な暴力性(肉体・精神共に)を上手く表現していて、グロテスクさが痛快ですらあります。

第1作目(サブタイトル無し)は登場するのが全然違う猫たちな上に四足歩行しているし、第2作目『かぶとむしの巻』からあの姉弟が登場するものの、にゃっ太が普通にしゃべっているのですが…
すぐに設定が定まって、暴れまわったり狂った世の中をただ眺めたりしているにゃーことにゃっ太。
やはり初期作品『いいさかなの巻』では、画:ねこぢるし・作:山野一と夫婦連名の合作になっていますが、そもそもねこぢる先生はデビュー前から山野一作品の手伝いをしていたし、逆もまたしかりだったようです。

猫の他も様々な動物や虫けらの姿で心を持ったキャラクターが登場しますが、その中で巻き起こる差別!ブラック過ぎて私には笑えず、ただ心が痛む作品もあります。ボケ老人を描いた『じじいの巻』とか、もっとひどいのもありますが、これが現実社会を生きる上で必要な教訓、栄養。世の中は弱肉強食なのだから。しかもキャラが可愛いのもあって、暗くはないんですよね。
バイオレンス描写に加えて特筆すべきは、トリップ描写でしょうか。ぐにゃんと歪んだ背景、複雑なスクリーントーン使いで表現されるトランス状態なんかが素晴らしい。薬物のトリップに限らず、霊界というか精神世界につながる物を描くのもメチャクチャ上手い!
その他、セリフや人名のセンスとか、細かく見ていったらたまらない所だらけ。自然なドレッドヘアのこじき達をレゲエに見えるからか『まーりー』とか呼んでたり、知恵遅れの大男がブルース・リーの影響受けたトラックスーツ着て川の中で生うどん食べてたり…etc.etc.

ところで「ねこぢるうどん」は、ガロで掲載されながらも↑の青林堂版の全2巻では収録されていない作品が複数あったのですが、1998年から翌年にかけて文藝春秋ビンゴ・コミックスで再発された折に、ようやく網羅されました。
オリジナルの四六判からA5判とサイズも大きくなって、こちらは全3巻です。
NEKODIRU-nekodiru-udon3.jpg

今度の帯文は1巻が山野一先生、2巻がhyde、3巻が香山リカです。
3巻が丸々青林堂版で入らなかった作品で、ねこぢる先生が残した"夢のメモ"から山野一先生が漫画化した作品として1巻に『とうめい』、2巻に『へんないえ』、3巻に『探偵』を追加収録。その原作となった夢のメモ自体も載っているので、シュールなねこぢる世界は本当に自身の夢を基に漫画化するみたいな手法で作られていた事が確認出来て、資料的にも貴重。
各巻に特製シール付、装画まで追加されています。

では後から出たビンゴ・コミックス版だけ持っていればいいのかといえば、それは断じて違う。
確かに単行本未収録だった作品を収めたのは快挙ですが、元々あった『□ぬごろしの巻』がヤバイからか丸々カットされているし、珍しく3話に分けて描かれた『やまのかみさまの巻』が、セリフを改変・伏字・削除されまくってます!!
変わった神様に出会ったにゃーことにゃっ太が、おとーちゃんが工場で働かなくていいように凄いダイヤモンドをもらうのですが、それを"湯田屋"(…つまりユダヤ)の商人にだまされて300円で取られたのですが、それを怒った神様が商人をこらしめる、というのが元々の筋。
(ちなみにこの話では"ころぺた号"という、ねこぢるキャラ屈指の凄いヤツが出てきます)

で、これが同じ原稿を使ってよくここまで変えたな、という感じで変えられていまして、店名は"スミス屋"になっているし、セリフもざっと以下の通り。

『オレは全知全能 唯一絶対の神エ■バのしもべなんだ』
 ↓
『オレはもっと ずっと上等な神を信じてるんだ』

『ユ■ヤのブタめ』
 ↓
『ブタめ』

『そーちょーしおって劣等民族が あのとき根絶やしにされておればよかったのじゃ』
 ↓
『そーちょーしおって外人めが いつまでも敗戦国だと思うなよ』

『ああ エリザベート アンネ ヤコブ シャミル』
 ↓
『ああ マーガレット メアリー ジミー マイケル』

他にもありますが、つまりユダヤ人という設定を丸々無かった事にしているのですね。まぁユダヤ人差別につながると判断した自主規制なのは分かりますが、こんな風にアメリカ人という事にすれば良いのでしょうか?
別の『クリスマスの巻』のように、キリスト教の布教に来た外人牧師達を『かえれ どけとう』とかって焼き殺す話なんかがそのまま収録されていますが、バレて怒らせるとまずい民族とそうでない民族がいるのは確かですもんね。
あと、根本敬先生が贈った死体写真コラージュの「ほっかほっか家族天国」もカットされています。

NEKODIRU-nekodiru-udon4.jpg

この3巻に収録の、つまりようやく日の目を見た作品群も何故青林堂では単行本化しなかったのか分からない名作揃い。
『FBI捜査官の巻』は、デイヴィッド・リンチの「ツイン・ピークス」で出てきたクーパー捜査官をパロったクルパーというキチガイの話で大好きだし、『たなばたまつりの巻』は「子連れ狼」が使われていたり、パロディ物も最高に面白い事が分かります。

特別収録されている「にゃんごたん」は、ねこぢる先生が亡くなった1998年に山野一先生がねこぢるy名義を使ってコミック・ゴン!(ミリオン出版刊)に描き下ろした作品で、人前で読んでいたので涙をこらえるのが大変だった記憶が蘇ってきました。
妻の死を乗り越えて今後どの方向へ行くのか…注目の中で描かれたこのCG漫画はオールカラー作品でしたが、残念ながらモノクロになって収録されています。
ねこぢるyとしての活躍は長らく滞ってましたが、ちょうど最近復活し、先日「ココ」でサイン会の様子をアップしたばかりですね。

この後は外国にも翻訳やらテレビアニメ化までされるし、各誌で引っ張りだこで常に新作を求められる事になるねこぢる作品ですが、この「ねこぢるうどん」に代表されるような子供(猫)が巻き起こす残酷世界の物語と、分類するともう一種類あります。
それがねこぢる先生自身が猫の姿ながら主人公として登場するエッセイ漫画。これも後に大成功するので、徐々に紹介していこうと思います。


目はウツロ その目に映るものもまたウツロ
世界はがらんどう 私はもぬけのから
虚無主義者じゃよ わしは。
何も無いという事じゃ



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  1. 2013/12/07(土) 23:10:52|
  2. 月刊漫画ガロ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

こんばんは!すげー読みたくなってきましたw
懐かしい!そしてめちゃくちゃコアな情報ありがとうごtざいます^^
初版帯付きで集めたい衝動にw
またお邪魔します^^
オーケンさんの書籍アップもそのうち御願いしますw
  1. 2013/12/08(日) 16:33:45 |
  2. URL |
  3. 新参 龍 #-
  4. [ 編集]

コメントありがとうございます。

>新参 龍さま

ねこぢる作品は現時点ではプレミアが付いていないので、集めるなら安値でいけると思いますよ!
もちろん比較的新しいので、全て初版帯付きというのもそこまで難しくないでしょう。
応援してます!
  1. 2013/12/09(月) 01:29:00 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

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Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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