大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

月刊漫画ガロ(137) ねこぢる 6 「ぢるぢる旅行記」

ねこぢる作品より、「ぢるぢる旅行記」(ぶんか社刊)です。
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ねこぢる先生の感性そのままで面白すぎるエッセイ漫画の中でも最高峰が、この長編旅行記でしょう。
「ぢるぢる旅行記」には『インド編』と『ネパール編』が存在し、まず前者はまんがガウディまんがアロハ!にて1996年から翌年まで連載され、それをまとめた単行本がこのBUNKASHA COMICSで全1巻。

帯文を我らが大槻ケンヂさまが書いていますが、オーケンも初のエッセイ「オーケンののほほんと熱い国へ行く」でインド旅行記を書いているんですよね。その時(1991年)はオーケンが本を出したって事で飛び付いたものですが、まさかその後あれだけの本を出版し、作家として売れっ子になるとは…
オーケンについてを語りだすと長くなるので止めといて、「ぢるぢる旅行記」によせた帯文の裏側を載せておきましょう。
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ねこぢる先生(もちろん猫の姿)が夫の山野一先生と二人でインド旅行に行き、見てきて感じた事を作品化したいわばノンフィクション漫画で、もう最高な二人のかけあいを通して作者の素顔もよく見える作品です。
臭く汚くいいかげんなインドというカオスの描写や二人の感想にユーモアセンスが面白くて面白くて…一体今まで何度読んできた事か。

冒頭、1ページ目からタージ・マハールに着いたらガイドが出てきて何やら遺産を指し、メインゲートは高さ××mだの建造には22年かかり…だのと言ってるのを受けて、『あーとりあえずトイレ行きたいんですがね』『あーはいはい22年ね』とか興味を示さない二人。
いわゆる普通の日本人がするような観光には興味がない二人が見て回る神秘の国ガイドですが、移動時などインドらしい苦労は多々あるけど、基本的にハッパでキマッてみて力を完全に抜いた状態、忘我とか本当のリラックスなんかの説明が勉強になります。精神の解放か。

ちなみにインド物の紀行文や写真集でよく見られる『生とは何か 死とは何か』みたいな厳粛なテーマがありますが、屋外の火葬シーンを見てねこぢる夫妻は『実際 まのあたりにしても 別になんの感情もわかない』と正直すぎる感想です。『あー…これってアジの開きを焼く匂いだな』とか言ってますからね。
サドゥー(苦行者)の正体だとか、あと『波長が合わない人』の説明も面白い。

あ、この作品を読んでインドに行きたくなるかというと、私はこんな汚い所に行きたくないなーというのが正直な感想ですが、バナラシ名物のバングラッシーなんかは飲んでみたいと渇望したものです。
まぁトリップ出来る物が普通に街中で売られている国ですが、前にも書いた通りねこぢる作品はトランス状態の描写が多く、上手い。レコード盤の上に乗ってくるくる回り、それからぐにゃぐにゃに曲がって飛んで…と、第4話「バング」で最初から見れる描写は全作品中を比べても秀逸、必見だと思います。

第12話「ホーリー」の中で、次は西暦2000年行われる予定のクンブメーラ(12年に一度行われるヒンズー教最大の祭典)について触れ、『そん時はオレ達もここにいるのかな?』の問いかけに『なーんか その辺ウロウロしてるよーな気がするなー』と言っていたのが、寂しいですね。1998年5月に亡くなるのだから…

にゃーことにゃっ太モノに代表されるような残酷メルヘンほどシュールではないけど、やっぱり夢の世界のようなインド旅行記。
日本で売れっ子漫画家になってから行っているのもあり、二人が旅したのは何泊何日とかって日数でしかないと思います。それでは浅いとかではなく、むしろ向こうに住んでるとかヒッピー生活で何年も放浪しているとかって人より、はるかに生々しくインドの匂いを伝えてくる力量、センスに脱帽するのです!

さて最初に書いた通り、「ぢるぢる旅行記」の第2弾である『ネパール編』。
これはまんがアロハ!にて1997年から翌年に亡くなるまで6話が連載されたのですが、絶筆となってしまいました。永遠に未完となったネパール編は単行本化するのか不安はありましたが、まず掲載誌であるまんがアロハ!の7月19日号増刊として、1998年にぶんか社から…
インド編にネパール編も加えた「ぢるぢる旅行記 総集編」が発売されました。『追悼・ねこぢる先生』の文字が悲しかったなぁ。
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実際の時系列としてはインド編に旅立つ前の旅行記で、同様に夫妻で旅してネパールを見てきたもの。
『ぢるぢるインドギャラリー』という、ねこぢる先生が撮影した写真を載せてるページ、そして同インド写真(今度はカラー)と共に山野一先生による的確すぎる故人の人物像紹介ページは貴重です。ねこぢる作品は、右脳型でブッ飛んだ感性を持つねこぢるプロットを、山野一先生が常人にも理解可能なレベルまでオトす"通訳"する事で生まれていた!

この時の私はネパールの事なんてほとんど知らなかったので、本屋に行ったのですが…ネパール物の旅行記や出版物自体が日本ではほとんど存在しない事が分かって、その意味でも貴重なネパール編。やっぱり面白すぎるので、未完なのが惜しい。
でも、ブルース・リーの「死亡遊戯」のように、未完成だからこそ今も繰り返し読み続けられ、研究されたり読者の頭の中で想像され続けたりするのかな。
もし生きていたらこの後、またインドやネパールに行ったり、また他の国へ行って旅行記描いたりしたらという想像もしちゃいますよね。

あくまでネパール編は雑誌の増刊号の形でしか出ていなかったのですが、2001年にいよいよ「ぢるぢる旅行記 総集編」(青林堂刊)としてA5判で単行本化もされました。
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もちろん内容はインド編に未完のネパール編を加えて、まんがアロハ!増刊にあったインドギャラリーや人物像紹の文章は無くなっていますが、山野一先生による新たなあとがき「黄色い街」が加えられて全1巻。

あれ、第6話「クレイジー」で語られる、頭がおかしくなって物乞いになったある日本人女性の話ですが、行方不明になった説明の最後に水に浮かんでる絵で『死んだんだろうと思う その人の望み通りに…』の文章が消えてる。特にまずい表現とも思えないし、これは出版社のミスかな?これはこれで、この版しか読んでない人は絵だけで死んだ事を表現したのだと思うだろうし、意図的なのなか。
とにかく現在の決定版は青林堂のになります。この傑作をまだ読んでないような不届き者は…今すぐ買いに走るように!


でもそれってなんかつまんないよね
日本もインドみたいな
もっとデタラメな国になっちゃえばいーのにな



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  1. 2013/12/24(火) 23:00:36|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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