大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

楳図かずお(42) 「雪の花」

楳図かずお先生の「雪の花」(小学館クリエイティブ刊)。
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代表作「漂流教室」が描かれた時には、あの楳図かずお先生がSFを描いた!と驚いた方も多かったと思います。しかしそれを遡ること何と10年近く前、1964年の時点で既にタイムパラドックス、そして時空を超えた愛の物語が描かれているのです。いや、もっと遡って1955年の単独デビュー作「別世界」からしてSF色は強かったんですけどね。

そもそもS-Fマガジン(早川書房刊)を愛読していた楳図先生は『SFに見えないSFを描こうと思った』そうですが、それがこの「雪の花」
上京してしばらく描いてたひばり書房の貸本向け描き下ろし単行本作品で、今回紹介する復刻版は2007年に上梓されましたが、そのカバー裏は当時のオリジナル版カバーになっています。いつもいつもさすがですよ、小学館クリエイティブは。
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オリジナル版カバーには『楳図かずお幻想ロマン』とありますが、同シリーズであり最初にひばり書房で描いた1963年の作品「宿り花」も、この時同時に復刻されています。こちらも重要作品と言うべき幻想的なラブロマンスなので、是非ご覧ください。

さて幻想SF漫画「雪の花」
主人公の男は吉野屋の屋号を持つ人形師の若旦那・結城。吉野名物の雪人形を次々と彫る事を求められているのですが、完璧を求めるあまりに自作に満足出来ず、同居している加也という少女に八つ当たりして殴る蹴るの暴行を加えている困った芸術家。それでも健気に彼を慕う加也は、幼い頃に捨てられていたのを結城に拾われたのだそうで。

結城は満足のいく雪人形を造るため、ついに雪山での山篭りを決行し…そこで出会った、雪女みたいに不思議な女が雪絵。この女の古風な雰囲気が雪人形のモデルとしてピッタリ合致し、山小屋で二人の不思議な時間が揺り返されたのですが、理想の雪人形が完成したと同時に雪絵は山小屋に姿を現さなくなるのです。
雪絵を恋しがる結城ですが、一方で雪絵も…彼女はお分かりの通り別の時代の人間であり、二人は時の歪みによって出会っていたのです。同一場面を別時代・別人物の視点で反復して見せてくれる見事な演出が流石ですが、ある方法で二人は時を越えて結びつく事となるのです!

良かったですねぇ不思議な物語でしたねぇ…で、何ともロマンチックな愛、タイムパラドックスまで扱った素敵なLOVEで終わるハッピーエンド物語かと思わせておいて、それは否なのです!
そう、結城のどんな横暴にも耐えて付き添っていた加也。結城が理想の相手を掴んだと同時に彼女は可哀相な事に一人で去って行くラストが待っているのです。何でこんなに可愛いくて性格も最高な加也がこんな目に!?
愛を掴む事は、自分の幸せのために誰かを傷つける事である、そんな理を楳図先生は当時の少女向け漫画で教えていたのでしょうか。

ところで天才・楳図かずお先生とはいえデビュー当時の作品や岬一郎シリーズなんかは、さすがに幼さが残るし画風が全然確立されていないじゃないですか。
それが貸本漫画時代には「俺の右手」などで劇画に移行してしっかりとグロテスク描写にも着手し始めて…貸本漫画末期の今作「雪の花」では、絵柄もすっかり我々が広く認知するあの絵に近くなっています。
そんな成長の過程を楽しみつつ、他に同時期のSF『的』作品として有名な「地蔵の顔が赤くなる時」あたりと併せて読んでいきましょう。


この世で愛ほど強いものはない……
どんなに離れていようとも…………
いつかは結びつく……
こんなに遠く離れて 愛し合う二人は ほかにない。



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  1. 2014/02/10(月) 23:59:31|
  2. 楳図かずお
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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