大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

楳図かずお(45) 「猫目小僧」

楳図かずお先生の「猫目小僧」(朝日ソノラマ刊)。
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なかなか楳図かずお先生の代表作とまでは言われないものの、激レアな少年画報社のキングコミック、小学館のサンデーコミックス、ワイド版から近年の楳図かずおデビュー50周年記念企画UMEZZ PERFECTION!、各時代に様々な形で単行本化されてきた「猫目小僧」
朝日ソノラマのサンコミックス好きである私は、やはり1982年に出たサンコミ版の全5巻を所持しています。

初出誌を見ると、一番最初は1967年から翌年までの少年画報。あの「笑い仮面」に続いて同誌で始めた意欲作でしたが「不死身の男」「みにくい悪魔」の2編のみで掲載誌が変わりました。
続く1968年の少年キング、ここで猫目小僧の誕生編と言える「妖怪水まねき」「大台の一本足」「妖怪百人会」(掲載時のタイトルは「小人ののろい」)、「妖怪肉玉」「妖怪千手観音」と続きます。
それから長い間が空いて1976年、同作が「妖怪伝 猫目小僧」としてテレビ放送されたのに合わせて、少年サンデーにて「手」「階段」「ともだち」が描き下ろされました。実はもう1編、「約束」という作品もあるのですが、これはサンコミ版には収録されていません。
よって10作品が全5巻の中に収録されているのですが、順不同なので情報を知らずに単行本に手を出すと時代による絵柄の違いでとまどうかもしれませんね。話の関連は薄いし、キャラのデザインまでちょっと変わっているし。

楳図かずお作品における猫へのこだわり、という観点から見たら「猫面」から「ねこ目の少女」、そしてこの「猫目小僧」につながる系譜がありますが、内容は連載当時に大ブームだった水木しげる作品の影響も入った少年向け妖怪漫画。
もちろん楳図先生の圧倒的な個性はそのまま生きていて、人間の生活を屋根裏などから覗き見る猫目小僧を通して人間の複雑な心理を描く。主人公が活躍して事件を解決するというより、狂言回し的な役割で事件を見ている事が多いのは、そのまま後の名作「おろち」へとつながります。少年キング掲載版は、ほぼ猫目小僧が主人公ですが。

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楳図かずお先生のほとんど活字本「恐怖への招待」(河出書房新社刊)では、貴重な『猫目小僧ノート』が載っていますが、ここでテーマは
『妖怪があらわれ、それが人間関係にどのような影響をおよぼすか』
であると明確に定義されています。妖怪漫画を手がけても、やはり描くのは人間の内面なのです。

初出時の執筆順は上記の通りですが、単行本では物語の時系列に合わせて誕生編の「妖怪水まねき」から収録されています。
舞台は奈良県吉野郡上市町(同郡に下市町は実在します)、知らずに妖怪を妻にもらった男が大峰連山で『化け物の集まり』を目撃して気が狂うのがオープニング。目撃されたのは吉野地方で三百年に一度生まれる猫又の子どもの出産に立ち会うために集まった妖怪達だったのですが、ある見開きページを見ると「のろいの館」(赤んぼう少女)のタマミがまぎれているのが見えます。タマミ、妖怪だったのか…まぁ、友情出演ですね。

そこで猫又の子として生まれた猫目小僧ですが、泣き声も風貌も人間に近かったために殺されかけ、結局助かったものの仁王像の所に捨てられて、それを子どもが欲しい人間の美々が拾って育てるのでした。妖怪からは人間に近いと忌まわれた猫目小僧も、人間からしたら異様すぎる風貌で村人に殺されかけ、妖怪水まねきがからんだ大津波で村は飲み込まれて美々も死亡。猫目小僧は一人で旅に出るのでした。

猫目小僧が遭遇する事件の数々はとても面白いのですが事細かに説明するのは避け、回を重ねるごとに完成されていった猫目小僧のキャラクターを見てみましょう。
一本の棒切れに風呂敷包みをぶら下げて旅するスタイルで、特殊能力は目の力や唾液などありますが、感情次第で体内の血を毒に変えたりも出来ます。でも猫に近いのでマタタビに弱い。
あと少年モノのヒーローとしては珍しく、どうやって食料を手に入れて何を食べているのかを描かれる場面があるのですが、それがゴミの山を見つけて食えそうな物を漁ったりしてますよ!確かこれはヒーロー物だったはずですが…
住処は、目星を付けたを民家の屋根裏。堂々と『猫目小僧だ!この家にやっかいになることにしたぜ。』などと宣言した上で、
『おれはおまえたちのような あくどい人間が大すきさ。生命力に満ちているからな。くその役にもたたん善人より数倍もたのもしいぜ。』
などと褒めているわけでもなく言い放った家族の所に住み込むのは、全作品中で一番長い「妖怪百人会」。これは凄い傑作でした。

「妖怪肉玉」の舞台は奈良県五条市で、グロテスクな中にミステリの要素も入れた話でした。全滅しかける五条市ですが、漢字一文字違いの五條市は実在する楳図かずお先生の出身地!
思いもよらぬ方法であの病気…ガンが広がって行く恐怖の話に、ないないと名付けられた可愛い仲間も登場させています。

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「手」は子供部屋と地獄が繋がって展開するイメージの世界と奇想にクラクラするし、その他1976年の短編も傑作揃い。
単行本の最後に「みにくい悪魔」が収録されているのですが、これは脳味噌を入れ替える話であり後の「洗礼」につながるという意味でも重要作品。
しかしこの最終巻(5巻)の収録作品で描かれた時期に10年近いズレがあるので、画風の違いが歴然!しかしどちらも素晴らしく絵が良い事に気付くと思いますが。間違いなく「猫目小僧」は、魅力あふれる楳図絵を活かす内容でしたね。

楳図かずお作品を映像化する時点で、こんなにも素晴らしい絵が無くなってしまうでかいマイナスになるわけですが…それでも歴代、映像化に挑戦するチャレンジャーは後を絶ちません。
「猫目小僧」の映像化は、一番最近だと2006年の石田未来主演、井口昇監督による実写映画版ですね。
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ばかな、おれの顔があんな、サイケデリックな形をしているはずがない。
いくらさわってみても いつもとかわらぬナイスガイの顔だち…
だが、自分の顔を信じられないということは なんという恐ろしいことだ。



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  1. 2014/03/06(木) 23:59:44|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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