大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

楳図かずお(48) 「神の左手悪魔の右手」

楳図かずお先生の「神の左手悪魔の右手」(小学館刊)。
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ビッグコミックスピリッツにて、前回紹介した「わたしは真悟」に続く形で1986年から1989年まで連載された作品で、単行本は全6巻。
真悟はSF要素の高い作品でしたが、今度は一番得意なホラー。それも今までに類を見ないほど純然と恐怖を追及した内容になっています。ただしサイコ・サスペンスとかって言葉が出てくる前から心理的な恐怖漫画を量産してきた楳図かずお先生が、グロさを前面に出したスプラッター度の高い作品を手がけた所は特筆しておきましょう。やるとなれば徹底的に…どぎつい描写のオンパレードで!

今回は"八天王市立八天王小学校"に通う1年生の山の辺想が主人公。この年齢なので、夢と現実の区別が曖昧な部分があったり、周囲の人々に言う事を信じてもらえないのがポイント。想は悪夢ばかり見て苦しんでいるのですが、これはもう書いちゃうと夢の中で癒しの『神の左手』と攻撃の『悪魔の右手』を駆使して事件を解決すると、それが現実にも反映されて…と、幻想的かつヒーロー物の要素もあるのです。

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今作は連作長編の形で、全6巻の中にHORROR/1~HORROR/5まで、5つのエピソードが収録されています。

まずは『HORROR/1 錆びたハサミ』。当然1巻の最初から始まるのですが、表紙をめくるといきなり、少女の両目をハサミがぶっ刺している見開きページ!それも顔の中(内側)から突き破って飛び出てくる図なのですが、気合い充分すぎますね。青年誌に連載しているから良いものの、これ子供が見ちゃったら冒頭だけでページを閉じ、トラウマだけ残して本を遠ざける事になりますよね。
最初の凄いインパクトそのままに、ほぼ毎回過度とも言える残酷絵、グロ絵が出てきます。もちろん楳図かずお先生の絵ですからね、グロくても美しい。
拾った錆びたハサミと都市伝説を絡めて進むこのエピソードは、想の姉で高校生のが酷い目に遭いまくるのですが、口から教室の床を埋め尽くすほどの臭い泥を吐き出すシーンが圧巻!その後、人間の骸骨も次々と吐き出し、さらには体内からおっぱいを突き破って新聞が、腹から三輪車が飛び出して…と続くのですが、これらはある空間と泉の体がつながってしまった事で怒る怪現象でした。
「神の左手悪魔の右手」は生々しいショック描写に重点を置いているのは確かであるものの、やはりストーリー構成の上手さはこのエピソードだけ読めば充分に分かると思います。

『HORROR/2 消えた消しゴム』は、子供たちがイタズラで担任の女教師を殺してしまう事から始まるのですが、それに関わった児童が1人1人順に消されていき、最後に想が…という話。子供の無邪気さと残酷さも描きつつ、ある種のモンスター物でもありました。
最後に夢の中で変身したあいつ(後で名前はヌーメラウーメラだと分かる)になった時、敵に
『あなたは想!!』
『想なのね!?』
『そうでしょう!?』
と言われる、まぁ細かいシャレというかギャグが入れられています。

『HORROR/3 女王蜘蛛の舌』は、避暑地に遊びに行った山の辺姉弟が蜘蛛女と出会い、対決する話。蜘蛛嫌いの人は多いと思いますが、そういう人にこそ読んでもらいたい…生理的嫌悪感の強い作品。この1編で蜘蛛を一体何万匹描いたのですか!

『HORROR/4 黒い絵本』では、想は今までと違って会った事のない遠い所に住む親子の夢を見て、その子供…足の悪いももちゃんという少女を助けに向かうのです。
父親の正体は恐ろしい殺人鬼なのですが、これまた血!血!また血!という残酷ファンタジー。

ラストは5,6巻を全て使った長編『HORROR/5 影亡者』
泉の同級生・みよ子に憑いた恐ろしい守護霊(背後霊)、影亡者が他人の守護霊を惨殺しておとしめていく。地味な少女だったみよ子は、影亡者に守られて強運の持ち主になったためスターになりますが、はじかれた本来の守護霊が…そんな話。
想はみよ子を追って病院に行った時から急に覚醒している状態でも霊が見えるようになるのですが、影亡者が暴れ回ったため血まみれの霊達ばかり。というか、霊が死にかけている、とか霊のバラバラ死体とかって斬新ですね。これで見ると例も人間と同じような構造をしているらしく、脳みそとか内臓をぶちまけ、血まみれになっています。
想にしか見えない、みよ子にベッタリと憑いている影亡者のデザインは、「進撃の巨人」似。というよりどちらも、筋肉むき出しの人体模型がモデルなのか。
みよ子に危害を加えようとしたスケバンも守護霊が殺されると、自分も階段から落ちて顔面が消火器に突き刺さり、中の溶液が噴射!耳や口から吹き出す…ってゴア描写ここに極めり。霊能者の香月先生の頭がグシャっと潰れた時の描写もヤバいし、ホントよくやりますよ。
みよ子自身の人格も変わっているので影亡者だけじゃなく自らの手も汚していますが、芸能界でライバルの少女の何と女性器に硫酸らしき液体をぶっ掛ける!
間違いなく今作で最大の強敵である影亡者に対して、想は自身の存続の危機にもさらされますが、ヌーメラウーメラとなって解決する事はできるのか!?

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ん?最後の悪い背後霊が他者の背後霊を食って運を奪う話、他でも読んだって!?
そう、「妄想の花園 単行本未収録作品集」で『ホラーの妄想』の巻に収録された1987年の短編「背猛霊」も同アイデアの、いわば兄弟作品。凄いアイデアだけに楳図先生もお気に入りだったのか、ほぼ同時期に2回ネタにしているのです。
ちなみにその「妄想の花園」には、小学館文庫ビッグコミックススペシャル 楳図パーフェクションといった後の単行本にも収録されていない「神の左手悪魔の右手」の番外編「おふだ」がありました。しっかりスプラッター物ですが、想は出てこないし何故同じシリーズなのか分からないくらいの4ページ漫画です。

そんな「神の左手悪魔の右手」…ビジュアルはもちろん、過剰でおぞましいゴアなアイデアを楽しめる作品でありますが、実はストーリーも奥が深い。
というのも主人公のキャラと展開から、どこまでが妄想・虚構だったのか分からない部分が多いのです。考えてみればあの時もこの時も、いやそもそもアレは?となるのですが、答えは読者自身が判断するしかないのですね。
この作品を連載終了した理由が、担当の編集者が育ったアシスタントを勝手に引き抜いたからだというから、惜しい話です。

ちなみに「神の左手悪魔の右手」は、2006年に実写映画化されています。
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この原作なら、きっとマリオ・バーヴァやルチオ・フルチといったイタリアのホラー映画監督が生きていれば撮りたがったでしょう。そして全盛期そのままに撮り上げたら、とんでもない傑作になっていたと思うのですが、製作したのはやはり日本。
しかも映画「ビー・バップ・ハイスクール」のシリーズで知られる那須博之監督作品となる予定でしたが、何と監督が急死して金子修介監督が引き継いで完成させる事となりました。楳図かずお先生も自ら出演しているのが嬉しいポイントではありましたが、楳図作品実写化の常。やはりイマイチでした…


わたしはヌーメラウーメラ!!
この世のもとなり!! もとはうたえり!!
神の左手!! 悪魔の右手!!!
あの世の者!!消えよ!!



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  1. 2014/03/28(金) 23:00:16|
  2. 楳図かずお
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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