大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

楳図かずお(50) 「14歳 FOURTEEN」 1

わたしの名前は、チキン・ジョージ。
誰にも望まれずに、生まれてきました。



楳図かずお先生の「14歳 FOURTEEN」(小学館刊)。
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楳図かずお先生はこれを最後に長編漫画を描いていないので一応最新作ですが、連載は1990年から1995年のビッグコミックスピリッツ…終了時で見てももうすぐ20年。漫画界に偉大すぎる業績を残しながらも、もはやそんなに長い期間描いてないのです。
単行本は全20巻と、全楳図作品の中でも「まことちゃん」に次ぐ巻数であり、つまり長編ストーリー物では一番の長さとなる終末SF漫画です。

あの「漂流教室」の続編だとも公言されている作品ですが、作中の時間軸的には翔らが飛ばされる未来の世界の前で、いかに人類が滅びたかを描いています。
この『最後の作品』はキャリアの集大成だけに、それ以前の作品で見られたネタがいくつも見られます。子供と寿命という事で流れは短篇「Rojin」から来てるし、終末モノというテーマの点では「地球最後の日」「笑い仮面」を思い出す。チキン・ジョージという存在の元ネタは貸本期の傑作「ばけもの」で描かれた動物の憎悪心が具現化した怪物かもしれないし、さらにこのキャラの心理は「洗礼」だとか、この場面は「闇のアルバム」だ、このキャラは「わたしは真悟」…と、他にもまだまだ熱心な読者なら嬉しい気付きがありますね。さらには「14歳」から遡る事30数年前…あの単独デビュー作「別世界」で出てきたガイコツ岩まで登場しますよ!

壮大なスケールの話を、荒唐無稽さもかまわず勢いにまかせて突っ走って描いている感じが素晴らしいですが、すぐに違和感を覚えるのはその絵。あれ、絵柄が違うと。意識して歪めて描いている部分はもちろんあるのですが、ちょっと下手なカットも多くて…私はずっと週刊誌の連載だから間に合わず、適当に描いたりアシスタント任せにしている部分があるのかと思っていたのですが、今や真相は判明しています。
この頃、少年時代からずっと漫画を描いてきた楳図先生がついに重度の腱鞘炎を患らってしまい、不自由な手で頑張って描かれていたのだそうです。これはこれで味のある絵だ、そう思って読みましょう。

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さて「14歳」のストーリーを紹介していきましょう。
まず舞台は、今より何だか汚らしい世界になっている近未来の22世紀。女子中学生のヨッコこと戸川洋子は14歳にして歌手とセックスして子を身ごもっていたので、親友に連れられて占い師の元へ悩み相談に訪れます。その占い師は突如口からエクトプラズムを吐き出しました。エクトプラズムが『14歳で終わる。』と言葉を発して泣き出すと、ヨッコらは叫びながら逃げて行く…インパクトの強いオープニングは、後で活きてくる事になります。

それから東京名物で『東京ピラミッド』と呼ばれる"チキンカンパニー"、バイオチキン製造技術を開発した鶏肉製造工場ですが、ここから鳥の頭の怪人チキン・ジョージが生まれました。長編なので生まれる過程もじっくり描いていますが、異様すぎる風貌の彼が人間とは比べ物にならないほど高度な頭脳を持ち、自らを動物の怨念が終結して生まれた動物代表と認識します。全ての動物を救い、多くの動物を絶滅させた人類に対して復讐する事を誓うのです。

『うろたえろ うろたえろ、思い上がった人間どもめ!
 だが、こんなものはほんの手始めだ!
 いずれ、心の底から震え上がる恐怖を味わわせてやる!
 お前らが、今までに一度も経験したことのない恐怖を………!
 ハハハ!ハハハ!』


それから地球上で産まれる赤ちゃんが全部、全身緑色になるという異変が起こります。チキン・ジョージの存在が動物の呪いなら、この緑病は植物の呪い。この後すぐ、地上の植物がいっせいに枯れ始める事になります。
初めて産まれた緑病の赤ちゃんは冒頭に出てきた日本の14歳の少女、ヨッコの息子。学校の体育館でおぞましく産まれた世界一不幸な生い立ちの彼は、きよらと名付けられました。
この母子はチキン・ジョージと邂逅して命を救われ、きよらと同年に産まれた子は14歳で終わる、そしてこの子の代で人類自体も滅ぶ事を知らされます。
チキン・ジョージは世界中の学問を学びましたが、さらなる知識を得るため秘密基地であらゆる実験を繰り返しており、ヨッコに神様だと思われるのもあながち間違いではない存在になっています。彼の技術にかかると、手持ちのトランクからチラノザウルスが出てきて大暴れといった奇想天外な展開も有得る話になりますね。

しかしチキン・ジョージは『人間の恐ろしい秘密』を知ってトサカが真っ白になったり、まぁ世界の核心を全部知ったのだと思いますが、それらを言おうとして引っ込めたり、物語全体がそうですが引っ張りすぎなんですよね。
それが長編を続ける秘訣かもしれませんが、いつも内容がギッシリ濃かった楳図かずお作品らしからぬ感じで1回1回の内容が薄い…

また物語は宇宙規模にまで発展するスケールの大きさなので、世界の首脳が登場します。この時代もやはり人間の代表はアメリカ合衆国大統領のアーサー・ヤングで、正義漢の素晴らしい政治家。初めて産まれたその息子はアメリカ・ヤング。きよらと同い年で、やはり緑病ですが彼は髪の毛だけ。
我らが日本国の岬一郎総理大臣(まさかの初期作品、少年探偵・岬一郎シリーズから!)の子はタロウ、フランスのジュウル大統領もカトリーヌという同じ年齢の子供がおり、現実世界と違って元首同士が本当の親友みたいな感じです。

加えて悪役の権力者としては、世界の経済を自由に操る最高位(グランド・マスター)のローズが登場。不老不死を追い求め、チキン・ジョージから何と九千兆ドルでその知識を買い取りました。売ったチキン・ジョージの方は、あと14年で滅ぶ人類と決別して動物を連れて地球脱出すべく"チラノサウルス号"というロケットの建設開始。

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チキン・ジョージと動物達の地球脱出まであと一歩と迫った所で、急展開。
あの天才科学者を止めるのは、魅力的な人間の女でした…つまり、ローズの手先である美女・バーバラの魅力に心を奪われ、地球を離れる事が出来なくなりました!
しかし動物達を裏切れずに薬品を飲んで天才すぎる頭脳を自ら退化させ、人間の欲望に協力出来なくしてからバーバラとの愛に生きる道へ進むのです。

ここまで、
第一章/チキン・ジョージ
第二章/緑の髪の少年
第三章/不老不死の血

と進んできたのですが、第四章/地球重態で突如チベットが舞台になります。最初の2話だけですが、ある一家が『落ちてくる空』から逃げるシュールな話で、これが楳図ホラーとして評価したい素晴らしい出来栄えでした。「14歳」中で世界に異変が起こっている事を伝える重要なエピソードではあるのですが、単独作品だったらもっと人々の目に触れたのかな。

『病理学的に言うならば、地球は死にかけている!!まさに地球は重態ですぞ!!
そして、この私の説が正しければ、いまに、さらに恐ろしいことが起きる!つまり!!
地球の人類に対する復讐が始まるでしょう!!』


そして私は「14歳」の目玉の一つと思っているのですが、地球滅亡を前に各国の首脳がアイスランドに集まった文字通り最後の地球会議。この時点で地球はあと三年で終わる事が発表されると、それぞれ首脳達は全員が川のような涙を流し、ざんげを始めるのです!
やはり歴史上自然破壊や先住の動物や人類に対する蹂躙を繰り返し、広島と長崎に対しての原爆投下までを正義の名のもとに行ってきた忌まわしきアメリカ合衆国、そのヤング大統領は地球を死に追い詰めたのはアメリカだと思うと告白し、すると続いてヨーロッパや日本、あの韓国までが続いて長々とざんげするのです。その内容もけっこう核心をついているのですが、地球と人類の最後を前にしてようやく…

チキン・ジョージは捕らえられてローズの元で不老不死の研究をさせられていますが、今作の主人公は彼の周辺から、こんな時代に生まれた子供達へとシフトしていきます。
第五章/子ども選び
に入ると、不老不死研究の成果で『もの』と呼ばれる人口人間が誕生していて、殺人プロレスが人気興行となっているのですが、リング上で相手レスラーを犯し、心臓をえぐり出し…と、おぞましい物がウケている時代。
章のタイトルになっている『子ども選び』というのは、もう人間が住めなくなる地球から限定数だけの選ばれた子供を脱出させて宇宙に送る計画。頭が良くて健康で、運が強いという三つの条件を持つ子供達を!

なかなか物語の核心を見せずに不気味なキャラ達だけで展開していた序盤から、中盤に移るとようやくそれらの伏線を回収し始め、つながってきました…
ここから終わりまで、怒涛の勢いで流れていきます。
物語の100年ちょい前、21世紀の現実を生きる我々読者には環境破壊の愚かさなどを訴えながら魅せる超エンターテイメント、続きはまだ次回。


考えてみれば、間違いなく人類は確かに14歳だ!!どう考えてもそれ以上ではない!!
つまり、自分達の母体である地球を、自分の手で壊してしまう、いまだ未熟な存在なのだ!!
だから、人類はやっと14歳だということだっ!!
14歳という言葉は そのまま人類という意味だ!!



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  1. 2014/04/07(月) 23:00:56|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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