大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

月刊漫画ガロ(144) しりあがり寿 2 「ジャカランダ」

しりあがり寿先生、紫綬褒章(しじゅほうしょう)受賞おめでとうございます!

そう、様々な分野で優れた業績を残した方に対して日本一偉い天皇陛下の名で授与される紫綬褒章、2014年春の受賞者が先日発表されましたね。漫画家が受賞されるのも珍しくはなくなりましたが、それでも正直ヘタウマな作風のしりあがり寿先生が選ばれたのは驚きました。
もちろんベテラン漫画家であり、その才能は少しも疑う所はありませんが、最近何か目立った活躍があったか考えても思い浮かばないし…
東日本大震災を受けて、その震災をテーマに描いた「あの日からのマンガ」(エンターブレイン刊)で第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門の優秀賞を受賞したのは記憶に新しいですが、その辺りの評価が今さら?
でも考えてみたら昨年もほとんど漫画の第一線から退いたようになって長い時間が経っている大友克洋先生が突如受賞して何故かと思ったし、他の方々もそうか。
恐らく漫画家に関しては、その前年の活躍とかではなく過去の長いスパンを見て思いついた時に授与しているのですね。でもそれならあの人は…とかいくらでも出てくるからか、その基準とかは全然発表されていません。こういうのは意外と、単に選考者の好みの問題であるのかもしれません。

それはさておき、今回紹介したい作品は「ジャカランダ」(青林工藝舎刊)。
SHIRIAGARI-jacaranda1.jpg

アックス(AX)で2002年から2004年まで連載された物に描き下ろしを加えて2005年に単行本化された作品で、300ページの大作の中、ひたすら破壊が描かれる…
ずっと前に紹介した「方舟」と同様に絶望系の物語なのですが、ちゃんと最後に希望らしき物が残されていて、現に作者のあとがきでも
これは『方舟』のような「滅び」ではなく「再生」の物語だ。
と書かれています。

このような物語なので、東日本大震災以降にも新装版が刊行されました!! 
SHIRIAGARI-jacaranda2.jpg

改めて読み直してみても、やはりこれは凄いですよ…延々と、ひたすら東京が壊滅していく姿が描かれています。
それも大地震や津波などの天災だとか戦争でもなく、ある日生えてきたたった一本の巨樹によって!その巨樹の名前は『ジャカランダ』で、中南米原産の現実に存在する木ではありますが、本当はこんな恐ろしい木ではないそうです。

冒頭の山の手線内で老人に若者達が暴力を振るい、それを周りの乗客はとがめもしない…小さいながら世紀末を示唆する描写だったのだと思いますが、あとは唐突にジャカランダの木が生えてきて、みるみるとでかく育っていくと都市が壊滅していく。
ジャカランダは巨樹であり、その根はまた凄い大きさで広がるわけですが、それが大都市の地中に埋まるライフラインを全て破壊していくのですね。そこら中でガス爆発が起こって大火災が発生する流れになっていくので、都市崩壊に一番貢献するのはガス管かな。
実は私、多少はガスに関わる仕事をしている身として、ここまで安全装置がまるで働かずに配管が破れたまま漏れ続けてガス爆発を起こしまくるとは考えにくい事を知っていますが、それは本筋じゃないですね。ガス爆発が起こらなくても必ずどこかから破壊が用意されないと作品が進まないので。東京に原発があれば、もっと分かりやすい感じで使われたのだと思います。

とにかく続く、破壊と殺戮の描写…
ハッキリ言ってそれしかない作品なんですが、登場人物は主人公すら設定されずにほとんどが殺されていく群集。ガラスが顔に刺さりまくる人とか、逃げ惑う人々に踏まれてグチャグチャになる女性とか、けっこうエグい部分もあります。
国会議事堂も燃え、東京ドームは爆発、救助するはずの警察署も消防署も壊滅、司法・立法・行政・経済その他の中心的機能が集中している東京がもはや火の海、阿鼻叫喚のパニックシチーとなりました。
圧巻の破壊が済んだ後は、ラストに作者の言う『人類再生』へと続く、ある希望を見せて物語は終了します。

これは連載中にも思いましたが、作品の出来が云々の前にまだ商業誌(まぁ、アックスとはいえ)で漫画家にこんな連載が許されるというという所に、可能性を感じたものです。終わってみれば300ページも使って東京壊滅と逃げ惑う人々を描いたのですから!
それが後にしりあがり寿作品として初のフランス版が出たり、こうして新装版も出るヒット作となりました。

徹底的に破壊を描いたこの作品で死とか滅びを意識し、改めて今の生を感じる事が出来るでしょう。考えてみれば、死がなければそもそも生という概念すら無いのですから。
人類は死が怖いために宗教を作って神や仏などの姿を創造したり、天国だの輪廻転生だの極楽浄土だのって概念を作ったのだと思います。今はこんな平和すぎる現在の日本の中では自分が死ぬ事も想像しにくいですが、もうちょっと生と一体である死を意識して、備える事が大事ですよね。限りある時間をどう生きればいいのか…そんな事も考えさせられる作品でした。


早く逃げないと
…どこへ



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  1. 2014/05/14(水) 23:00:38|
  2. 月刊漫画ガロ
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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