大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

トキワ荘(71) つのだじろう 12 「銀座花族」

今夜のつのだじろう作品は、「銀座花族」(主婦と生活社刊)です。
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これまでも書いてきたように、様々なジャンルの漫画を手がけてヒットも飛ばしてきたつのだじろう先生ですが、「恐怖新聞」「うしろの百太郎」がブームを巻き起こしたのもあり、特に恐怖漫画家・心霊漫画家としての姿が圧倒的大多数の方々に認識されているでしょう。
しかし1980年から漫画雑誌以外の、それも主婦層向けのゴシップ記事や社会ニュースで誌面が埋め尽くされる…あの週刊女性に活動の場が移され、描かれた作品は何と銀座ホステス漫画でした。
それが「銀座花族」です!漫画で第一章のタイトルだった「虹子の冒険」を使って、夏目雅子主演でTVドラマ化もされるほどの人気連載となった作品で、単行本は全5巻。

平凡な"神代商事"なんて会社の経理課でいわゆるOLをしていた河野虹子が、女の花盛りの年齢(18~25歳だそうです)のうちにホステスとしては恐らく世界一、『銀座花族』と呼ばれる超一流の仲間入りして優雅に生きる事を決意します。そして、目指すは貯金一億円!
虹子は会社の同僚であり"ゆたか荘"で同居する親友の瀬戸かおりと共に、ある作戦で銀座七丁目の摩耶涼子ママの店"ヴァンテレーヌ"へ入店しました。
銀座特有の様々なシステムや、上手く売り上げを得るための方法まで勉強しながら楽しめるサクセスストーリーの開始です。

一緒にスタートラインに立った虹子とかおりですが、やはり最初から決意を固めている者と流されて入っただけの者では結果が全然違います。
第一章はホステス一日目が終わるまでですが、最後までお店に残って研究しつついいお客さんの席に着く虹子に対して、かおりはいきなりどうでもいい客とセックスしちゃう失敗をしていますから。
黒髪で姫カットのかおりは性格は良いし一人称が『あたい』な所も可愛いと思うのですが、純粋すぎて頭も悪いから稼げないし、客にホレちゃってだまされたり、何と自殺未遂に堕胎までして…虹子と対照的な立ち位置にいるキャラとして確立してしまいました。
唯一かおりが勝っているのは、体の感度が抜群な所。何しろ虹子は高校を卒業する頃に貴重なバージンを捨てちゃった上に、『SEXなんて痛いだけで快感があるなんて信じられない』と思いこんでいるのですから。

メインである女性読者に向けての知識としては、ほとんどの方に無縁な銀座のシステムなどより、男の性について学べるのがいいかもしれません。作中通して説明セリフが多い本作ですが、これはプレイボーイの論理…
『本能として男は同時に何人もの女性を愛せることくらいは知っているだろう?
 女がそうでないからといって そういう男の生理を不潔視するのはあくまで女の感情で…
 男である以上 どんな男でも気に入った女の子みんなとSEXしたいと考えるほうが普通なんだ!』

とか、虹子と一緒に勉強していきましょう。もちろん女性、特にホステスはそういう男の生理を利用して女の色香で高いお金を取っているわけですけどね。
他にこの作品で自らを省みて女性は『本質的に感情的だし物質的』であり、また男の側の欲望や行動原理についても知り、得た知識を応用して是非とも人生に活かしてください。

銀座でも目立つ存在になってきた虹子はヴァンテレーヌ以外の店から引き抜きの声がかかるようになってきて、何と3軒から同時にきました。それぞれの条件、例えば『ヘルプ』としてか『売り上げ制』でか、雇用形態は『やとわれママ』の話か…
様々な選択肢の中から芥川賞作家の牧草介(この人、スターシステムで他作品でも出てきます)らからアドバイスを貰い、結局は銀座中の話題となって電通通りに新規オープンされた超豪華な"花族"へ移る事になりました。一緒に働くのも銀座の一流クラブでナンバーワン・クラスを務めたホステス達になるので、常に強力なライバルに囲まれた茨の道に踏み込む形となりました。
後々まで指名争いその他で戦う事になるのは五十嵐真樹石坂るみ、あたり。他に次々とトラブルがあったり新ライバルが登場したりして物語は進行します。

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偶然ぶつかった相手が大企業の重役・加賀茂で、お詫びでドレス買ってもらった上に店の上客にもなってもらう、なんて後の「サラリーマン金太郎」並みにご都合主義の展開がありましたが、この加賀部長が体を迫ってきた時についに虹子はこれも仕事としてやらなくてはならぬ覚悟を決め…
あ、ここもご都合主義続きか、突然の生理が来て助かりました。

幼い頃から貧しかったのもあって恋愛より成功・貯金といったタイプの虹子ですが、転職前の一人旅で奈良県の斑鳩の里に行った時に出会った写真家の斑鳩三郎、若い彼のさわやかさに惹かれて好きになりそうになる。これは、ついにヒロインの相手役が登場か?
そして銀座で運命の再会。となったまでは良かったのですが、彼が嫉妬深くて悪気の無いトラブルメーカーだという事が判明してきました。虹子にベタ惚れして結婚まで申し込んできますが、うまくいかないと荒れて仕舞いには親友のかおりと心中を図る!かおりは助かったものの斑鳩は腹上死を遂げ、しかしそれだけで終わらず…遺書に虹子を悪者に仕立て上げるため有る事無い事書きたててあり、虹子は斑鳩の父親から嫌がらせを受けて追い込まれる事になるから怖い!

このトラブルと、もう一つはミッキー梶村という世界的なホテルのチェーンを経営していると自称する日系人の男。
大金持ちを自分の客にして売り上げを上げたい気持ちと、一晩メーク・ラブしたら三百万円のオパールをくれるという言葉にだまされて、虹子はこの男に今度こそ体を捧げるのです。ホステスになって初めて、金のためにセックスまでしたわけですが…
そのオパールは二束三文の偽物と判明、全てツケだった五百二十万円の呑み代を残したまま、ミッキー梶村は詐欺師とバレて逮捕されました!本名は牧田久哉といって、普通に日本人だったっぽいし。虹子は、身体を弄ばれた上にやっとためた貯金も半分になってしまいました!嗚呼、一億円の道は遠い。
この作中最強のとんでもない悪役に、つのだ先生を脅して『詫び状事件』を起こした梶原一騎先生の『梶』の字が付いているのは偶然でしょうか…そういえば花族における最大のライバルを梶原先生の実弟と同名の『真樹』としたのも、何か意図があるのでは。

二度目の自殺未遂から生き残ったかおりは、今度は虹子のように銀座花族を目指すのではなく、自分は虹子のヘルプに徹する決意を持ち、二人でもう一度やり直す事になりました。悩みを吹っ切り、今まで学んだテクニックを駆使して客からお金を吸い上げるプロに徹する覚悟も固まった、と。
それからイメチェンをするのですが、いきなり4巻表紙の髪型になるのだから驚きます。それがきっかけで、お客の中にいた日宝映画の古城浩監督にスカウトされて新作「五本の剣」に謎の女役で出演する事になりました!銀座にはあらゆる一流の人が集まるから、こういうコネができやすいそうです。
映画に出ても銀座花族みたいな収入が得られるわけはないのですが、有名になってさらに客を集められるというメリットにかけてスペインロケを決行し、これが大成功でした。話題なんて一時的な事でしょうが、ヌードにまでなってSEXシーン撮るにあたり古城監督に特訓を受けた事で、苦手だった色気も引き出せるようになってセックスアピールで売れるようになったのです。

売り上げ戦争が加熱する中、新規のお客をつかむために行った虹子の奇策は驚きますが、トップを争うまでになりながらなかなかナンバーワンにはなれない。
そこへエルザという強敵が優秀な専任ヘルプ連れで花族に入ってきて、厳しい状況が続きます。このエルザ、自己催眠で自分の性格をベストに変えているやり手で、こんな名前ですが本名は坂梨元子という日本人でした。

そんな中で虹子は熊谷幸平という医者の金持ちじいさんと仕事としてアフリカ旅行へ行く事になり、大金を貰っているし助平じじいの夜の相手もしなくてはならない…という時、熊谷は虹子の女性器を舐めるのです!それで変態だと虹子にキレられて中断。正常なSEXならしてもいいなと思っていたそうですが、これは驚きますね。アダルト動画の普及が原因か、今では当たり前すぎるそんな行為が、この時代ではそうだったのか、と。

海外旅行で色々と今後のヒントを得た虹子は、スウェーデン人のアニカ・ヨハンソンとスペイン人のテレモート・デ・マドリーという、何と外国人ホステスを銀座に引き抜いてヘルプにつける作戦に出ました。虹子自身も日替わりで世界各国の王妃のコスプレをする『女王シリーズ』でお客を喜ばせ、大成功したのも束の間、汚いライバルホステスの妬みから大麻を吸っていると嘘の密告されて操作が入り、嫌疑は晴れても外国人ヘルプは使えなくなりました。
しかもキレた女に割ったビンで刺されたり、一難去ってまた一難、安心などない感じで激動の戦いは続きます!

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一方、親友のかおり。彼女は交通事故がきっかけで知り合った優秀な外科医の早川先生と結婚する事になりました。最初はかおりの心根の優しさで気に入った早川先生は、三百人以上の女とセックスしてきた中でかおりの身体が一番合ったのだとか。
しかし早川先生の両親に猛反対されて、認めてもらうために看護婦の資格を取るため学校に通わされますがドジを続けて飛び出して、それでも主婦になったら暇すぎて耐えられず、街で昔の知り合いと会ったらやっちゃったらバレてたった三ヶ月で離婚。失意のうちに父親の故郷がある、四国は愛媛県松山市に流れたら、知り合ったアメリカ人旅行者のジョージとまたセックスしちゃったりして。
『虹子 あなた外人とSEXしたことないでしょ? よく外人のは大きいだけでフニャチンだっていうでしょ!?あれほんとね!』
なんて言ってますが…
細かい事にこだわらない、そして男に誘われると断れないおバカなかおりが、読み続けて感情移入していくうちに男の読者ならきっと後半には可愛くなるでしょう。
笑顔の裏にある女同士の争いだとか金取り合戦が主題の作品なので、そこと無縁のかおりは清涼剤としての役割もしているのだと思います。

このように頻繁にセックスシーンがある作品ですが、そういう時はヌード写真まで挿入しているし…扉絵で何故かヌード絵とか女性の艶かしい姿が使われていたりもします。
いや本作だけじゃない、つのだ先生が主婦向けの週刊女性を発表媒体にしてから描かれた作品は、この後のも含めてどれもエッチなシーンが満載なんです!女性も実は、そういう所が見たいわけですからね、需要に答えて供給した結果でしょう。

出戻ってきたかおり、それにジュンという優秀な専任ヘルプも得て体制が整った虹子は、ついに花族でナンバーワンになりました!また次の月からは新たな戦いになるわけですが…
念願の貯金一億円の方は半分の五千万円を超えた当たりですが、プロゴルファ-の朝比奈祥一と出会って、女として生まれて初めての幸せまで得てから、物語は完結!

密度濃く銀座の内幕に踏み込み、ドキュメンタリータッチのリアルさを持たせながら描いた娯楽作品。これはもっと知られるべき傑作でしょう。
明らかな欠点もいくつかあるにはあり、もう画力に力を注がなくなった時期に入っているので、絵が下手な所が多い…というか、どうみてもつのだ絵じゃなくて他人(アシスタント)の手による部分が多く見受けられます。それに関連しますが、どうしても主人公の虹子をそんなに美人だと思えないんですよね。
それでも銀座の夜という世界一華やかな舞台…だからこそ自分や他の多くの貧乏読者は客としてもホステスとも全く関わりが無さそうな世界ですが、そんな彼女達のナンバーワン争いで、こんなにも熱くなるのです!

この手のホステス漫画としては、これ以前に藤本義一原作・川崎三枝子劇画の「首狩族」だとか、つのだじろう先生にとって何かと縁がある梶原一騎原作・松久由宇作画の「哀愁荒野」も微妙に早く連載開始しているのですが、ここまで職業としてのホステスや銀座の店を細かく取材して、純粋に描いたのは「銀座花族」だけでしょう。
もちろん、ずーっと後の倉科遼原作・和気一作作画による「女帝 SUPER QUEEN」に続く流れを作ったとも言えるかもしれません。ちなみに現在は、何故かホステスよりホストを描いた漫画の方が圧倒的に多い感じがしますね。

例えばこのちょっと前の「5五の龍」(1978年~1980年)は将棋そのものを描き、実際に勉強になるという意味では未だに将棋漫画随一の内容でしたが、つのだじろう先生の綿密な取材力や、それを実録タッチな娯楽漫画に昇華する能力が凄い。
「銀座花族」を描くに当たり、実際に銀座に通いつめたのでしょうが…恐ろしくなるほどの金額を使ったのではないでしょうか。だからこそ描けた部分が多く、またホステスの世界を甘い夢としてより、厳しい現実として描いているのもリアル。
随所にお店からの給料支払明細書だとか請求書、売掛金(ツケ)といった伝票、銀座花族達の名刺、挨拶状の写しまで載せて、それはうかがわせます。
店長やその他、男のスタッフ達の仕事内容はおろか、借金を残してトルコ嬢に流れた女もかなり存在するとして、その後どうなるか実話を元にトルコの仕事の流れまで紹介している丁寧さで、これはもう銀座の夜業界のハウツー本ですもんね。


お金のため いやな男でもがまんして寝る…!それじゃあ売春婦だわ
わたしは河野虹子!! 華麗な"銀座花族"よ
女としての最後のプライドまで捨ててしまっては 人間のクズになりさがる!



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  1. 2014/07/14(月) 23:59:27|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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