大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

梶原一騎(58) 峰岸とおる 1 「悪役ブルース」

続いての梶原一騎作品は、峰岸とおる作画による「悪役ブルース」(講談社刊)。
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梶原一騎原作作品を紹介していく上でちょっと困るのがこういう…正直に言っちゃうとイマイチな作品。
もちろん梶原作品の全てを愛するマニアにとっては見所も多く、レア度が低いので簡単に読めるし、これを知らない人はモグリでしょう。でも有名な作品だけ適当に読めればいい、というような読者の目には今となっては届かないし、読まなくていい作品でもあります。
今作は週刊少年マガジンで1982年から翌年まで連載されたのですが、原作者である梶原一騎先生の逮捕劇で打ち切りとなった作品の一つ。単行本は全6巻で、もちろん中途半端な所で中断しており、これこそが梶原史における少年誌で最後の作品となりました。

作画者の峰岸とおる先生は、「空手三国志」「素晴らしきバンディッツ」(史村翔原作)、「あばれ!隼」 (古沢一誠原作)といった代表作を持ち、梶原原作を手がけたのはこれ一作のみで終わりましたが、近年になって梶原先生の実弟である真樹日佐夫原作で「新☆四角いジャングル」を手がけていました。
そして実は、本作も梶原先生の死後に徳間書店から単行本が復刻される際、真樹日佐夫先生が描いた結末が付け加えられています。これから集める方は、そちらのトクマコミックス版・全8巻が良いかもしれませんね。

本作の主人公は18歳の若き空手家、吹雪純也
日本武道館で行われた全日本空手選手権大会で楽々と決勝まで進出し日本一を目前にしますが、胸を狙った貫手が相手(山上五段)の腰がくだけて顔の位置が下がったため両目に入ってしまって失格負け。しかも山上五段は失明の危険があるというので、その手術費を稼ぐ為にテレビ番組に出演。そこで悪役外人の覆面レスラー・ミスター0に挑戦して賞金を稼ごうとしますが、純也は後ろ手錠をかけられた状態のミスター0にすらまるで歯が立たずに失神して負けてしまいました。
今まで散々空手最強のパターンを描いてきた梶原一騎先生ですが、本作では日本一かもと思われた空手家がここまでレスラーに子供扱いされるとは…プロレスは、純也程度の空手が通じるような甘い世界ではないそうです。

その後純也は、ミスター0に恥を忍んで借金してまで山上五段の手術費を支払いました。その代わりにミスター0についてアメリカまで同行し、向こうのリングでパートナーとして空手の試割りを客に見せる契約を結びます。
ミスター0は純也を実戦での腕前はともかく、
『東洋の神秘カラテ!アメリカにもブルース・リーのカンフー映画がまきおこしたカラテ・ブームがある以上 これはウケる』
と見込んで、リングで二人殺して干されている身でもプロレス界へカムバックするのに利用出来るとふんだのですね。
それに乗った純也は金のためだけでなく、いつか空手でミスター0の首を取る目標を胸に秘めて渡米する…

それから純也はリングで地獄を味わったりプロモーターと対立して土地を追い出されたりしますが、スタン・ハンセンの必殺ウエスタン・ラリアットにヒントを得て、空手の回し蹴りをノドチンコにぶちかます『レッグス・ジャパニーズ・ラリアット』開眼。ミスター0との間にも友情が芽生えてきました。
ミスター0の子供達…父親を憎む娘・ダイアナと息子・レオも登場して複雑な親子関係を描いていますが、これが収まるとまだ15歳のダイアナは純也に惚れて追いかけてくる事になります。

表のプロレスに出られなくなった二人はニューヨークから『闇のプロレス』の本場であるシカゴへ流れ、ここを新天地に戦うのですが、ここで新たに出会ったのが"闇のプロレスの不吉な星"と呼ばれるプラチナ・アポロ
ここからこの天才レスラーを中心に物語は進んでいくのですが、強い奴を見ると燃える純也は無鉄砲にもアポロに挑戦してレッグス・ジャパニーズ・ラリアットがやぶられた上にボロボロにされます。それから実力が段違いのアポロを勝手にライバル視して、ブッ倒す目標とするのでした。

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また、純也はガラガラ蛇のモーガンと呼ばれる額に蛇の刺青がある男と出会い、ミスター0に内緒の秘密特訓で関節技と寝技を教わる…
モーガン曰く『人間の体は胸の部分だけをのぞいて関節だらけよ』という事で、2人が組み合って様々な関節技をかけまくる描写は、まだ総合格闘技が無かった時代の事なので早いですね。まぁ、プロレス的な関節技ですが。

後でミスター0がプラチナ・アポロにやられて覆面を脱がされそうになった時、純也は呑気にも
『絶対に素顔を見せねえ0の旦那にはよほどの理由があるはず!ハゲ 醜男 いやもっとほかに・・・・』
なんて言ってますが、知らぬは24時間ほぼ一緒に居る純也のみで読者はすぐに分かる事なのでタネを明かせば、ミスター0の素顔がモーガン。
ミスター0は純也気性の激しい純也の止め役、モーガンは純也をけしかけ鍛える役…と一人二役してますが、この異常に素顔を隠すミスター0の秘密も徐々に分かってきます。

純也はリングに飛び込んでミスター0の覆面剥ぎを邪魔して逃げた事で恐ろしいアポロから命を狙われるのですが、メキシコのリングに活躍の場を移したアポロを自ら追う。しかもある弱みをネタに純也はアポロとタッグを組む事になりますが、表のプロレス界を追放されている身なので、覆面レスラーのザ・カミカゼ(覆面は「タイガーマスク」のミスター・カミカゼそっくり)として再びリングに上がるのでした。
ザ・カミカゼというネーミングで既に国辱レスラー、グレート東郷やトージョー・ヤマモトが原点だと想像出来る事でお分かりの通り、戦いぶりは空手に反則殺法を交えた悪役のもの。タイトルが悪役ブルースだし、この姿の純也を一番描きたかったのか!?

仇敵同士が組んだ正義のアポロ&悪役のザ・カミカゼのコンビはそれなりに成功してますが、メキシコでプロレス、つまりルチャリブレといえば…
そう、帝王ミル・マスカラスとドス・カラスの兄弟。ここから実在するレスラー達も物語に参入してきて登場人物達と戦う、つまり原作者お得意の現実と架空を絡ませる手法が使われています。それで面白くなる部分もあるのですが、この方法の欠点としてハッキリ分かってしまうのが、マンガ的でバカ強かった登場人物が、アレ、よく見るあの人と同じくらいの強さなんだ、となってしまう事ですね。
ともかく、の大敵との戦いが元でアポロと純也に友情が芽生えます。首を取るため狙っていたはずが仲良しになる、ミスター0の時と同パターンが繰り返されました。

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次に2人の前に立ちはだかるのは、NWAとWWFで2冠王となってメキシコに遠征してきたタイガーマスク。ご存知、本作の原作者が漫画のキャラとして創作したのが実在のレスラーとして登場して大成功を収めた人物。
今度はタイガーマスクの魅力を、実力に加えてその人格も素晴らしい所までしっかり描写されています。

この時にタイガーマスクの相棒として同様にテレビのヒーローにあやかって実在キャラとして出てきた…ウルトラマンが登場します。これ原作者は事実だと書いているけど、どうせ創作だろうと私は最近まで思っていました。しかしメキシコのリングで事実、円谷プロのあのキャラのマスクをスッポリとかぶった、こんな奴がリングに上がっていたらしいです。
で、アポロ&純也はタイガーマスク&ウルトラマンとタッグ戦をしますが敗退。生まれて初めて自分をKOしたアポロ、そしてあご砕きの殺人反則も通じず逆に血まみれにされた純也。2人はタイガーマスクへの復讐を誓い、この新たなターゲットを追って日本へ渡りました。

久々に故国へ帰った純也、
『いまは誰も知らずとも あしたを見てやがれっ あしたを!
 あしたのジョーは矢吹丈 あしたのジュンは吹雪純也』

なんて原作者手前味噌ネタで息巻いてます。
彼は無法者のように新日本プロレスのリングに乱入してマスクに放火し、後のシングルマッチ実現にこぎつけます。

ここで空手の内弟子時代に世話になった先生として…かつての『極真の猛虎』、そして本作連載時には既に士道館館長となっている添野義二が登場します。この時の士道館は、梶原一騎先生が会長も務めていたのですね。
純也が士道館門下生だった事も判明しましたが、彼は自分がザ・カミカゼである事を隠して秘技三角飛びを習うのです。

そして迎えたタイガーマスクとの対決、それも金網デスマッチ。ここで又も敗北するのはともかく、恐怖で見栄も外聞も無くなって惨めに逃げ回って生き恥をかかされる。全く、何て主人公だ。
同じ梶原原作でこの数年前に連載開始し、掲載期間が重複してもいる「人間凶器」(中野善雄画)の主人公・美影義人と中途半端に空手が強い所まで似ていて、あの少年誌版といったキャラなんですね。
純也の父は九州の博多で吹雪一家をかまえた暴力団の組長だったのでドンパチを子守歌みたいにして育ったそうですが、それにしては度胸がない…というか向こう見ずなだけで、ここまで物語が進んでもイマイチ魅力が出てこない!

続いてアポロもタイガーマスクと再戦しますがこちらもまた負けて国に帰り、純也の方はさらにラッシャー木村らとタイガーマスクを付け狙い、後にタイガーマスク(もういいでしょう、正体は佐山聡)が立ち上げた格闘技であるシューティング(後に修斗)に参加して…という流れ、加えて真樹日佐夫先生が完結させた部分までをトクマコミックス版で読む事が出来ます。

劇画好きの私目線では、漫画界の暗黒史とも言える1980年代に描かれた「悪役ブルース」。そう、劇画の写実的で陰影の多い画と重い内容のシリアス物より、『軽薄短小』がもてはやされたこの時代の例に漏れず、梶原作品も時代に沿った絵柄の人が作画担当者になる事が増えました。
よって荒唐無稽な必殺技が飛び出すとかの面白さとは別次元で流れる、思想的な梶原イズムや暗さが表現出来なくなっており、それ以前の梶原作品を読み続けている読者にはこの時代の作品は辛い。原作のクオリティも下がっているのは否めませんが、才能が枯渇したというより作画が合わずに盛り上がれずに質が落ちていたのかもしれません。


逆であった!!
いま このふたりの男と男は 最高に愛し合っていた!!



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  1. 2014/09/24(水) 23:00:48|
  2. 梶原一騎
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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