大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

梶原一騎(59) 影丸譲也 2 「白鯨」

今夜は梶原一騎作品としては少し変り種の、「白鯨」(講談社刊)。
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ええ、このタイトルを知らない人はあまりいないでしょう…ハーマン・メルヴィル著でアメリカの古典小説として名高い海洋冒険モノ、「白鯨」(Moby-Dick)を元に梶原一騎先生が構成し、影丸譲也先生が絵を描いて劇画化した作品です。
よって正確には『メルヴィル原作、梶原一騎構成、影丸譲也画』ですね。初出は1968年の少年マガジンで、単行本はKCコミックスで全1巻。
梶原一騎&影丸譲也のコンビは数々の作品を残していますが、これで組んだのが最初です。

この物語の内容に関して細かい説明は不要かと思いますが、19世紀のアメリカを舞台にして船乗りのイシュメイルを語り手に進みます。
宿で知り合った銛打ちで何と『人食い人種』のクイークェグと友情で結ばれて、共に捕鯨船ピークォド号に乗る事となりますが、他にもあらゆる人種を乗せたこの船のエイハブ船長は、過去に巨大すぎる白鯨(マッコウクジラ)のモビィ・ディックに片足を食いちぎられており、復讐の鬼と化した人物だった…
そして始まる船上での生活と白鯨との対決が描かれるわけですが、原作は難解な長編大作だし何より内容が暗すぎるのですが、イシュメイルがやけに幼い少年の設定にされていたり、適度に少年向けに改変した上で話も上手くまとめています。

当たり前過ぎる事とはいえ原作を読んでいる方には、そりゃページ数の問題と漫画の性質上キャラクター1人1人の描写が少ない事に不満を持つかもしれませんね。例えば同じ船に乗る一等航海士のスターバック…そうそう、この名前がコーヒーチェーン店"スターバックス"の由来になっている事もはマメ知識ですが、その他も主要な3名以外は全員がチョイ役扱い。
でも白鯨を憎みつつ認めている復讐鬼・エイハブ船長がいかに船員たちの反発を退けて彼らの心をまとめるのか、そしてついに大海原での人間と偉大なる自然生物、いや神の死闘。最後に生き残るのはどっちか!?
いくつかの見所を用意しつつ、原作の良い所をこの制限の中ではベストな形で描いていると思います。
ただのダイジェストとか名作文学を漫画で、というだけじゃないんですよ。少年向けには不要な鯨の生態についてのあれこれは省いて、漫画ならではの良さを『絵』で表現しつつ面白いエンターテイメント作品にしているのです。まぁ、オリジナル作品じゃないのでもっと梶原イズムを見たい読者には物足りないと思いますが。

さて、単行本といえば通常はオリジナル版を薦める私ですが、本作に関しては2004年刊行の『20世紀漫画叢書』版、「白鯨」(少年画報社刊)をお薦めしたい!
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同じく全1巻の単行本ですが、サイズがB5判な上に漫画では日本で初めてグラビア印刷が使われたという当時のカラーページを再現していて、見ごたえあります。空が夕焼けで、海とボートの皆は鯨の血で真っ赤…一面赤の世界など、とても美しい。ここで描かれる海と嵐の美しさと恐ろしさを見て、通常はあまり目立たない影丸譲也先生の画力に今一度注目するきっかけにもなると思います。

巻末には3人のエッセイが収録されています。
まず、週刊少年マガジンの創刊から関わり後に編集長となる宮原照夫氏による、この「白鯨」が生まれるまでの貴重な話。
名著「夕やけを見ていた男 評伝梶原一騎」の斎藤貴男氏、そして影丸譲也先生ご本人による当時のエピソード…
この復刻により格段に梶原版「白鯨」に対する理解が深まったし、新たな感動を覚えました。


そうだろう そうだろうとも
あいつはザコくじらどもと群れたりはせぬ……
あいつはほこり高く孤独だ!
すべての勇者がそうであるように!!



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  1. 2014/09/27(土) 23:59:02|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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