大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

梶原一騎(60) 影丸譲也 3 「あゝ五高 武夫原頭に草萌えて」

梶原一騎原作、影丸譲也画の作品をもう一つ…今回は「あゝ五高 武夫原頭に草萌えて」(双葉社刊)です。
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初出は1978年の週刊アクション連載で、単行本はアクションコミックスで全4巻。
梶原一騎作品としてはあまりにもマイナーな本作は、設定が昭和三年(1928年)という明らかに読者になじみの無い時代であり、熊本で実在した旧制高等学校の"第五高等学校"が舞台というのもこれまた物語に入り込めない要因だったかもしれません。タイトルにもなっている『五高』はその略称で、現在の熊本大学。よって熊本大学生にはバイブルとして読み継がれているのかもしれません。
ついでにタイトルを見てみると『武夫原頭』(ぶふげんとう)とありますが、これは五高の代表寮歌で正式名称は東京帝国大学寄贈之歌、だそうです。その後に『草萌えて』と、『萌え』を使っていますが、これはオタク間で流行するより20年近くも先駆けています。
五高寮歌の出だしが、武夫原頭に草萌えて 花の香甘く夢に入り・・・と、こうなのですね。

内容は、五高の柔道部副将(実力はトップ)であり学校の支配者的な豪傑の雲井武夫が、女に惚れて周りを巻き込む騒動を起こし、またふられる…という感じの1話完結連作で続くのが基本構成で、それに東京からきた親友の桃山勉らとの友情を描く。
彼らは大酒飲みであり、すぐに"夕姫"なる飲み屋で宴会をしますが、この当時は学生服のままで学生達が堂々と酒盛りしていますね。街の描写なども含めて戦前の生活・風俗に興味ある人には面白い描写がけっこうあるのかもしれません。

主要登場人物に芥川ニヒル之介と呼ばれる先生がいますが、彼は五高に実在した教師がモデルらしいです。
五高はラフカディオ・ハーンや夏目漱石その他の凄い方々が教員していた事もある名門ですが、ニヒル之介は先輩である夏目漱石の名作「坊っちゃん」に対して
『あの作品は たんなる滑稽小説にすぎん駄作だが 阿呆な世間から不当な評価を得とる』
などと感想をもらしています。
また柔道の父・嘉納治五郎が校長を務めた学校でもあり、主人公は柔道部なのだから柔道漫画になりそうなものですが、雲井は最初から柔道の達人で敵無しなのであまり柔道自体を描くシーンはありません。まぁ、梶原一騎先生が柔道を描いたらまた荒唐無稽な内容になってしまって本作のテーマから離れることは間違いないですけどね。
それでも一応は唐手の牧野猛晴、剣道部主将との異種格闘技戦もあるにはありましたが、本作は恐らく当時の週刊アクションで同時期に連載していて好評だった長谷川法世先生の「博多っ子純情」や、または西岸良平先生のような人情系の劇画を目指しているようです。そして、それに失敗した作品なのだと思います。

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3巻から登場の重要人物は、苦学生の河田哲平
五高野球部きっての巨漢強打者(スラッガー)で九州男児、しかも貧乏でこの丸眼鏡の風貌では 「巨人の星」の左門豊作を思い出そうというものですが、河田は投手まで務めます。ただしこの青年誌版・左門は大酒飲みで笑い上戸の愉快な奴なので、寡黙すぎる左門とは性格が違った。
河田も登場してからは雲井、桃山に加わって三人の青春と友情が描かれることになりました。本作はまだプロ野球が日本に無い時代の設定ですが、河田は職業野球の結成とともに参加して成功する未来が待っているようです。

桃山は文壇で名を上げる事も書かれていますが、では主人公である雲井武夫は!?
彼の岡惚れ常習犯は作中ずっと変わりませんが、何と博徒の不知火お小夜なんて姐御までその対象になったり、鹿児島の実家に帰って初恋の人と再会したり、ヒモ付きの女給だったり…でもいつも振られるし、もちろん童貞です。
しかし、ついに!既に何度か出ていて芥川ニヒル之介先生と結婚した名妓・駒勇の妹、桜子との出会いがあります。孤児で駒勇の仕送りを頼りに阿蘇の遠縁の家に預けられていた桜子は、その家のオヤジに折檻されて育ち、まだ十二歳の時に犯された悲しい過去を持つ女でした。
雲井は就職で東京へ去った桜子を追う形となって行った両国国技館の柔道全国大会で見事に優勝。彼女が働く浅草の"黒猫"というカフェ、ここで雲井は本作で最後の大立ち回りをして五高からは放校処分を受けますが、しかしプロポーズは成功。唐突に姿を消すラストですが、二人は後年大陸に渡って馬賊の頭領として有名を馳せるのだそうです。
途中でも一度『後年の雲井武夫は大陸浪人となり 満州馬賊の一方の雄として大陸を疾駆する運命を辿る』と説明が入った事がありましたが、その馬賊となってからの活躍も見たかったですね。そしたら人情系とは別路線に行ったかもしれませんが、きっと痛快で面白い物語になっていたでしょう。


優勝杯 優勝旗だけが帰ってきて 雲井は帰らなかった………
恋に賭けて放校処分……それはそれで男の生きざまたい!



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  1. 2014/09/30(火) 23:00:01|
  2. 梶原一騎
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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