大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

ホラー漫画(83) 御茶漬海苔 8 「魔夜子ちゃん」「魔夜子ちゃん完結編」

御茶漬海苔作品より、「魔夜子ちゃん」(リイド社刊)。
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残念ながら現在は廃刊となっているリイド社の少女向けホラー漫画誌、恐怖の館DXで1995年から1997年まで連載され、単行本は全3巻。2,3巻はタイトル表記がただの『魔夜子』になってますね。
この時はあまりにも中途半端なままに終わった物語がおよそ7,8年くらい経ってから完結させているので、それも後述します。

御茶漬海苔作品は傑作が多いながらも大長編は無く、ハッキリした『代表作』と言うと人の主観によって違ったりして難しい所もありますが、私にとってはこれが三本指に入る作品だと思っています。
もちろんハードなグロさなら、とか泣きの要素で言えば、とかそれぞれの観点での順位はあるでしょうが、本作は御茶漬海苔の主要な要素が詰まっているので興味ある人に最初に紹介しやすい作品でもあります。

タイトルの通り、主人公の名前は魔夜子(まよこ)。
学校でイジメられ、極限まで追い込まれた少女が殺意を抱いた時、何処からか現れて
『そんなにつらいなら殺しちゃえばいいのに
 私は魔夜子…悲しい目にあってる人を助けに来ました』

そう言って地獄の殺しグッズを与えてくれる女の子です。

この1話目で渡す『悪魔ノート』というのが殺したい相手にしたい事を書くとその通りになるというアイテムで、これは後の大場つぐみ&小畑健「DEATH NOTE(デスノート)」の元ネタになっている可能性がありますね。この悪魔ノートは悪魔ノートで、それ以前に水木しげる先生の「不思議な手帖」を元ネタにしているのかもしれませんけどね。

御茶漬海苔先生にとって初めての、同じキャラが毎回登場する連載物として創作された魔夜子ちゃん。
単行本の表紙だけ見た人はこの娘が害をもたらす恐ろしい子だと思うでしょうが、実はそうではありません。短編形式の話が少し進むと魔夜子ちゃんはママに会いたいだけの子である事が分かります。
第3話(3夜)目から準主役にして"私立東中学校"の女学生・川相素之子(かわいそのこ)が登場すると真実が明らかになります。魔夜子ちゃんは自動車事故でガラスが頭から左目にかけて突き抜け幼くして死んだのですが、地獄で閻魔大王に1年以内で100人の人間の殺せば(魂を集めれば)また生き返らせてママに会わせてやると言われたため、この世に舞い戻って怨まれている人間を殺す手伝いをして、罪悪感を覚えながらも魂を集めているのです。
素之子は素之子で生きているけど両親を失って預けられた親戚の家で手ひどい差別やイジメを受け、学校でも"クズ子"と呼ばれて激しいイジメで素っ裸に剥かれたりを日常的にされています。どれだけイジメられてもその相手を殺そうなんて思わない素之子でしたが、何故か魔夜子ちゃんが部屋に現れて意気投合し、今後は素之子が住む屋根裏部屋で居候の霊魂みたいになる流れです。

素之子登場以降は完結までずっと世界観と登場人物も固定されますが、これはもう「ドラえもん」に対するスプラッター漫画家からの回答。
虐げられて殺意を抱いたイジメられっ子(のび太)がいると魔夜子ちゃん(ドラえもん)が現れて、ニャンニャンバック(四次元ポケット)から殺すための地獄グッズ(ひみつ道具)を取り出すという…するとやはり、ジャイアン的なキャラとして転校生の鬼山蛇子が登場。ホラー漫画なのでジャイアンの根は優しい部分すら排除されている邪悪の権化であり、イジメってレベルじゃなく医者の娘なので素之子の腹を捌いて腸を取り出して、また縫合してみたり(!)するわけですよ。
もちろんスネ夫キャラとしての手下もいるし、人間ではただ一人素之子の味方で命がけで助けてくれる織田良男(織田くん)がしずかちゃんか。

川相素之子の名前は、あのおニャン子クラブ・河合その子から取っているのですかね。ただ『可哀想な子』というだけの駄洒落かもしれませんが。
基本的には蛇子に執拗に狙われる素之子が何とか生き残るのがストーリーの主軸ですが、魔夜子ちゃんから家の場所を聞いてママに会いに連れて行く話があります。実際に魔夜子ちゃんが住んでた夏目家を突き止めて訪ねるのですが、ママと魔夜子お互いには見えず触れられず、素之子を通して様子を伝える事しか出来ない。文字を書いても、お気に入りだった人形を渡しても見えないし、二人のコンタクトは絶対に取れないのです。魂を100集める前にフライングして会っちゃうインチキ行為は認められないのでした。

しかもまごまごして魂を集める作業を進めないでいると、ケガした左目が腐ってウジがわいてくる…
魔夜子ちゃんはママに会うためとはいえ他人の人殺しを手伝うのが心底嫌になっているのです。
そんな悲しい殺人者・魔夜子は、やはり邪悪な蛇子、
『人を殺すくらいなによ なんとも思わないわ 私みたいなすばらしい人間だけが残ればいいのよ』
という思想の迷いなきナチュラル・ボーン・キラーに利用されてますます傷付きますが、素之子と協力して『本当につらい人 悲しい人だけを助ける』ように頑張るのです。

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鬼山蛇子みたいな稀代の悪人なら、親も普通なわけがありません。鬼山病院を経営する医師の父親・鬼山重四郎も、蛇子そのままの性格をしてまして…
不老不死の薬を作るため患者を人体実験して殺したりもしていますが、こいつも東中学校女子生徒達の間に絡んできて展開されるのは殺し合い。
鬼山医師はある事から地獄送りにされるので、御茶漬海苔先生の描く地獄の光景や鬼を見れるのも嬉しい所。こいつがまた現世に舞い戻り、川相素之子まで地獄に引っ張るべく動くのですが、いつも善良すぎてひどい目に遭っているだけの素之子も亡くした両親を殺した疑惑を持たれて悪魔扱いされ、学校内で『素之子狩り』が行われます。かばった織田くんも含めて逃げる2人が、迫り来る魔の手から逃げている所、鬼山医師が娘の蛇子にトリカブトの毒を手渡した所で最終の3巻が終了。

スリリングな場面で突如終わり、読者は続きをあまりにも長く待たされる事となるのですが…
「魔夜子ちゃん」が全3巻で物語途中にして終わってしまったのを悔しく思う編集者もいたのでしょう。別の出版社から2005年になって、「魔夜子ちゃん完結編」(青林堂刊)が上・下巻の全2巻で上梓されるのです。 あの青林堂ですよ…さすがです!
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間が空いたからといって変にアレンジされたり画風が変わったりせず、とにかくあの『素之子狩り』の場面からです。そしてこの校内バトルがやはり本作のクライマックスであり、そのままラストまで続きます。
テンションもスプラッター描写もますますアップした完結編、ガチの殺し合い。

逃げる川相素之子と織田くんは、それに魔夜子ちゃんが地獄グッズを出して協力して鬼山蛇子らと戦うのですが、結局は敵も味方も地獄行き。
再び地獄の責苦が描かれ、両親殺しの疑惑を持たれている素之子は裁判も受けましたが、消えていた記憶の謎は解けました。徹底的に争いが嫌いで、どんなに酷い事をされても人を不幸にする『憎しみ』を持つ事がない素之子はやはり潔白。

地獄では人間界の敵も味方も平等に責苦を受けますが、こりゃひどい…行きたくない…体をバラバラとかグチャグチャにされても、燃やされても死ねずに痛み苦しみだけを永遠に味合わされる世界!
でもそこから不老不死の秘密を見つけた鬼山医師。地獄から無理矢理脱出したので拷問の傷が完全に治らず体が腐ったままですが、現世に帰った鬼山親子はまた殺人ゲームを始める。

蛇子の陰謀で魔女としてまた追われる身の、ただ逃げるだけの素之子ですが…
手錠でつながれたまま目の前で織田くんを屋上から落とされ、自分の右手を切断してまで助けに行くも間に合わず死なせてしまい(眼前で脳みそをぶちまけるヒーロー!)、ついに!
最後の最後になってあの人を憎む事が嫌いな素之子が強烈な殺意を抱き、魔夜子ちゃんの地獄グッズを大量に入手して本物の魔女となり、クラスメートを殺戮する展開に発展しました。今まで抑えていただけに、素之子の怒りは収まる事を知らない。
ちょうどイジメられっ子が最後にテレキネシスを爆発させてその場に居た人間を全員殺しまくるスティーヴン・キングの小説(及びブライアン・デ・パルマの映画)、「キャリー」みたいな事になってしまいました。しかしずっと虐げられて耐えてきた素之子を見てきた読者は殺せ殺せ~と応援しちゃいますよね。

血まみれの、悲しい悲しいこの物語もついに決着がつきました。
川相素之子と織田くんは、鬼山重四郎と蛇子の親子はどうなる?そして魔夜子ちゃん100人の魂を集めてママと再会出来るのでしょうか。
このブログはネタバレだとかってたまに批判される事があるので、今回は書かずにおきましょう。
ただし世界の皆が幸せになるだとか全員が仲良くだとかの綺麗事が現実にはありえない事は、多少人生経験があって世の中を見ている大人なら皆が分かっているじゃないですか。それをほとんどの人が見ぬフリしている物語が多い中、本作はそんな甘くない、とだけは言っておきましょう。


あの魔夜子に100個の命を取らせてあげるわ
人間の恐怖心を引き出して フフフフフ
ほら 死の恐怖を味わいなさい ククククク



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  1. 2014/11/30(日) 23:59:52|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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