大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

藤子不二雄(61) 「エスパー魔美」

藤子不二雄作品、「エスパー魔美」(小学館刊)を紹介しましょう。
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本作は二人の藤子不二雄先生のうち藤子・F・不二雄先生の方。

遅ればせながらの魔美ですが、これは個人的に藤子F作品の中でもトップクラスに好きな作品。
初出は小学館の漫画雑誌マンガくんで、この掲載誌自体が少年ビッグコミックに変わってからも掲載されました。ヤングサンデーの前身だった雑誌ですね。
最終回までの連載期間で見ると1977年から1983年までと長期に渡りますが、少年ビッグコミックになってからは不定期連載になっているので単行本は全9巻の分量しかありません。それも『マンガくんコミックス』から刊行されたものの、雑誌の改変に伴って単行本のレーベルも改名されたので途中から『少年ビッグコミックス』になっています。
今回の画像に使っているアニメ版が表紙の『てんとう虫コミックス』は1987年のTVアニメに合わせて刊行された、つまり私の少年期に出ていた物なので個人的に思い入れ深い本になります。アニメは私が10歳くらいの時に放送スタートしているし、それに合わせて愛読していた月刊コロコロコミックでも再掲載されていたので、子供の時は「エスパー魔美」はリアルタイムで連載している作品なのかと思っていました。
それからさらに20数年経った現在でも印象は変わらず、子供に新作だと言って読ませれば信じるでしょう。多くの藤子F作品に言える事ですが、全く時代で風化しないのは本当に驚くべき事。

主人公が中学2年生(14歳)で藤子F作品にしては高年齢向け作品なので内容もレベルが高い話が多く、一話完結の話が連作で続きます。
女子が活躍し、ちょっとエッチなのも嬉しい「エスパー魔美」…その主人公の少女は佐倉魔美。可愛い赤毛の女子中学生ですが、その髪の色はパパの曽祖母がフランス人だったので隔世遺伝を意受けたからで、祖先はヨーロッパの魔女狩りで殺されたそうです。その魔美が今、超能力に目覚めてエスパーとしての生活を送る!
主人公あ女子だからかファッションにも気を使っていて、「ドラえもん」みたいにいつも同じ服装ではなく、毎回可愛く変えています。

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自分がエスパーである事を自覚した魔美は、超能力を使ったきっかけでもあり同じ"明月中学"に通う同級生の高畑和夫を良き理解者として超能力を訓練し、行動を共にします。
この『高畑さん』が魔美の相手役の異性だから一応本作のヒーローですが、魔美より身長は低いし話が進むにつれ小太りにもなっていく…もちろん運動オンチ。しかし天才的な頭脳を持っていて教科書や本なんか一度読んだら暗記しちゃうから、ちゃんと努力している人に申し訳なくてわざとテストでは間違えているほどで(カゼひいいて頭がホンヤリしてたため、うっかり全問正解しちゃった事がありましたが)、とにかく人の気持ちを分かるタイプ。
もちろん恋愛絡みだと弱くて魔美ともなかなか恋愛には発展しませんが、ちょっと可愛いレベルにはエッチな場面もあるかな。
昨今ではイケメンだのオシャレだの金持ちだの、お笑い芸が得意でオモシロイ人、なんてのが人気者なんですかね。そういった男は藤子F作品ではまず主役級になりません。子供達もテレビを見ていると間違った認識をするのかもしれませんが、男の魅力とは何なのかを藤子F先生から学んで欲しいものです。

この「エスパー魔美」を象徴するようなエピソードですが、魔美はおこずかい稼ぎのために画家であるパパ(十朗)のヌードモデルをしているので、作中で頻繁に全裸になります。それも慣れたもので、全く恥ずかし気も無く脱ぐしパパは(同時に藤子F先生は)胸がふくらみ始めたその女体を乳首までしっかり描いている!
でもまだブラジャーはほぼ装着してないみたいだし…いやちゃんと着けててそれを取るシーンもあるにはあったのですが、着替えの中にブラは無い描写もあったし、つまりギリギリの年齢か。でもだからこそ、近年の現実社会で騒いでる児童ポルノ禁止法がどうとかってのが心配ですね。女子中学生の全裸を描いている、この作品は大丈夫なのでしょうか。劣情を催すような内容ではないのですが、これもマークされて絶版だとか修正入るなんて事にならなければいいですね。
とにかく魔美は自分の裸の価値に無頓着であり、モデル代はパパと交渉して上げようとするも2,000円に値切られたりしてます。
そのパパは画家としてはあまり売れてないものの区立高校の美術の先生もしているみたいだし、魔美はその絵が好きで才能を信じています。ママは、"朝売新聞"の外信部に務めていて仕事出来る人っぽいですが普通に美人。
大嵐の晩に迷い込んできたという飼い犬のコンポコは重要なパートナーで、タヌキとかキツネに間違えられると怒るし、笑い上戸。間抜けな所もありますが、魔美がしばられて溺れ死にそうだった所を縄噛み切って助けたりと名犬ぶりも見せてくれます。

魔美の超能力は種類も強さも徐々に増えていきますが、テレポーテーション出来る距離は当初1回に約600メートルのみだったのと、自分何かが衝突しそうになると発現するために高畑さんが仁丹が飛び出るテレポーテーション・ガンを製作します。これが魔美のイニシャルMがハート形になっているブローチで、トレードマークにもなっていますね。裏のボタンを押すと飛び出す仁丹を自分に発射して600メートルずつパッピッパッピッと瞬間移動していく姿はおなじみではないでしょうか。
他にテレキネシス、テレパシー、念写…高畑さんと実験したりしながらコントロールする能力を身に付け、成長していきますが、魔美は自分がエスパーである事は誰にも悟らせずに生活する道を選びました。一度はマスコミで引っ張りだこになった後に、きっとその反動で超能力を不気味に思い、恐れ妬まれ敬遠されて憎まれもする、ましてフランスのご先祖は火あぶりになっているしというのが理由です。
テレビカメラに撮られて『空飛ぶ少女』としてニュースになってしまったり、隣家に済む陰木さんや、明月中学の先輩で映研のカメラマン・黒沢に知られて写真部の篠山が雇われて探られたりもしますが、一応…超能力の事が世間にバレるのは回避されています。

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佐倉魔美は掃除、洗濯、裁縫などの家事全般が苦手ですが、特に料理はひどい。どれもやる気がないわけではなく、挑戦するけどとんでもない結果を巻き起こすからやっかいなのですね。最初に高畑さんが食べさせられるはめになりそうだった時は、魔美が自分の料理を味見して気絶したために助かりましたが…それほどひどいのです。
『お料理にも個性が必要というのが、あたしの持論なんです。』
という魔美の料理を知る、パパや高畑さんらの反応がいつも面白すぎる。

あとこれはマメ知識ですが、カップやきそばを食べる時は話が未確認飛行物体を主題にしていたからか、『日清焼そばU.F.O.』らしき物を食べています。別の話で誤って飲んでしまった日本酒の銘柄は、正宗冠(菊正宗っぽいロゴ)。
マンガ家になる夢を持つ話もありましたが、パパが画家だからか絵は一応上手。しかしアイデアを考える力があるかは微妙で、天から降りてきたアイデアは…マンガ家のフニャ子フニャ雄が考えた案がテレパシーで伝わっていただけでした。

ところで近年の作品で堺雅人と山田孝之が主演した映画「その夜の侍」を観た時、この「エスパー魔美」にしては最後までシリアスなエピソード『黒い手の巻』を思い出したのですが、あまりにも話がそっくり。赤堀雅秋監督は、やはりこれを原案にしているのだろうか…

『うそ×うそ=?の巻』と『ずっこけお正月の巻』では、「ドラえもん」のキャラクター達が近所の住人役でゲスト出演しています。普通の人間世界ではいないはずのドラちゃんまで、後姿だけですが描かれていますよ。
するとやはりこの2作品は同一世界にあると、まぁシャレで解釈すると魔美らが住む佐間丘陵地帯の町というのも、「ドラえもん」と同じ練馬区が舞台で良いのでしょうか。『エスパー危機一髪の巻』では家から世田谷区のある場所まで走って40分という事が判明するし、東京都内に住んでるのは確か。
余談ながら冬休みに佐倉家の三人+一匹で"青倉スキー場"へ行く『雪の中の少女の巻』という話がありまして、これは多分我が故郷・新潟県の赤倉温泉スキー場がモデルだと思うので嬉しく思ったものです。

他に別の藤子作品との関わりで言うと『ヤミに光る目の巻』で、共演ではないのですが『おのれ放火魔 このうらみはらさでおくべきか~』と、「魔太郎がくる!!」のパロディ場面がありました。
ちゃんと背景の『メラメラ』もありますが、今度は藤子不二雄A作品を元ネタにしている事に注目。

魔美のテレキネシスは一度だけ、20年前のパパの思い出の中で働いた事もあります!
といっても意味分からないでしょうから読んでもらいたいのですが、それは『雪の降る街をの巻』。タイトル通り内村直也作詞の歌謡曲「雪の降るまちを」をモチーフにした名作でした。
この曲はアキ・カウリスマキ監督の「ラヴィ・ド・ボエーム」(La Vie de bohème)…私の大好きな映画ですが、あのエンディングでも使われていますね。

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また、本作はエスパーが魔美一人だけしか出ないのがミソでしょうか。よって強盗だの学園を支配する暴力応援団だのと戦っても敵ではない。犯罪者の不意打ち喰らって気絶したり、まぁミスや不注意からとはいえピンチは起きますが、バトル物としての見せ場は皆無。
そう、超能力バトルとか通常の少年向け作品にならないからこそ藤子Fワールドが保たれているわけですね。
スケールの大きい話として思いつくのも、ブラックキューピットという謎の殺し屋が某政府の大統領を日本で暗殺する計画を防ぐ『弾丸よりもはやくの巻』くらいでしょうか。
魔美も、
『たいぼうの大事件! エスパー魔美の腕のみせどころだわ!!』
と喜んでおります。

ライバルの居ない世界で、魔美の超能力は強さを増していき…終盤には一回のテレポートで5キロ近くジャンプ出来るようになるし、高畑さんを連れたままジェット機並みに亜成層圏航行してみたり。
この魔美がおっちょこちょいで、同じく女子が主人公の藤子F漫画「チンプイ」のエリさまそのまま。少し歳を重ねただけの子供みたいな性格だから良いのですが、妙齢の多くの女性のようにお金とか大好きな感じになっていったら恐ろしい事が起こりそうですね(笑)。
本作ではエスパーと魔女の違いを明確にしていないのですが、私にとって一番好きな黒魔女が黒井ミサなら、白魔女は佐倉魔美でしょうか。

細かく1話1話を語るのは避けましたが、基本はギャグタッチながらサスペンス的だったり泣ける話だったり、とにかくしっかりと山場があって最後はまとめる、正に上手い短編漫画の見本と言えるでしょう。そして可愛い我らのエスパー!主人公である魔美のキャラクターに惚れるわけです。
藤子・F・不二雄先生はこれ以前の1974年に「赤毛のアン子」(単行本収録の際に「アン子 大いに怒る」と改題)という、本作の原型となった読切作品も描いているので、そちらもいつか紹介するとします。


いま、かれの天才的な頭脳は、めまぐるしく回転しているのだわ。
なにかをしんけんに かんがえこんでいる時の高畑さんて すてき!!



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  1. 2014/12/27(土) 23:00:58|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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