大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

手塚治虫(46) 「山楝蛇」

手塚治虫作品より、「山楝蛇」(大都社刊)。
TEZUKA-yamakagashi.jpg
(画像の本は左が1980年版・右が1991年版。それぞれ別の口絵付き)

上記の版で1編だけ差し代わっているのですが、どちらも7作品を収録した短編集。
最初の2編は「刑事もどき -エムレット-」「刑事もどき -鹿の角-」と、たった2編で終わってしまったミステリー短編シリーズ。初出は1973年と翌年のコミック&コミック(徳間書店刊)。
犯人を護送中の船が沈没事故を起こしますが、手錠がつながっていた段袋刑事と護送されていたスリ師の大枚田助五郎は助かります。大枚田は死んだ事にしてもらって段袋刑事に一生ついていく事にする…というわけで生まれた刑事と元スリ師のコンビが、殺人事件を解決する。

次の「ステロタイプ」は1973年の漫画サンデー(実業之日本社刊)が初出で、男なのに女性歌手・森陽子に顔がそっくりなためある理由からヤクザに付け狙われる主人公の受難を描いた作品。
セックス&バイオレンスにドラッグ…そしてユーモア有りの短編で、クライマックスに部屋で自分を狙う組織同士が鉢合わせして三つ巴になる展開は、後のアメリカ映画の名作「トゥルー・ロマンス」みたいでもありますが、手塚作品においては地味な扱いというか、まるで知られていない印象ですね。

そして表題作の「山棟蛇」、これは1972年の漫画サンデーが初出。ふと気になって、試しに近くに居た者にこのタイトル、山棟蛇(やまかがし)を知ってるか聞いたら知らなかった。そう、やっぱり都会者はこういうの知らないか。山では注意するよう言われる危険な毒ヘビ。
いや、私なんかはそう習っていたのですが…手塚治虫先生の認識では『無毒だが毒ヘビと間違えられる』としていて、ヘビの話ではないけどその特徴からこのタイトルを使っているのです!そこで調べてみると、やっぱり毒ヘビなのですが、当時は死亡事故が起きてなくて毒ヘビとも思われていなかったようです。これがまた面白い事にこの作品を描いた1972年に初めて山棟蛇に噛まれて死亡した人が出たらしいです。
話の内容は、貧困の古畑村に東京都知事襲撃の容疑者で全国指名手配されている男が来た事で巻き起こるミステリー物。村長はこれを村おこしに利用しようと企んで、捜査を長引かせるため逃げ出そうとする指名手配犯を縛って監禁までします。しかし真犯人が逮捕されたとニュースが流れると、この事件を終わらせないために腹黒い村長らが取った行動は…!?

「帰還者」は1973年のプレイコミック(秋田書店刊)が初出で、気軽にレンタ・ロケットで宇宙旅行へ行ける未来が舞台のSF。
宇宙空間で異星人達のSOS信号を受けた地球人の若者…宇宙ヒッピー達が、水を求める彼らを殺して金を奪って地球へ帰ると、将来ある方法で『宇宙からの性病』を感染させられて復讐されていく。かなり変態的な描写も見ものな作品でした。

「もの憂げな夜」は1973年のサンデー毎日(毎日新聞社刊)が初出で、世界中で大成功して金をばらまいていた数十年前の日本人が、ある発展途上国で千人斬り(セックスの方)の相手として何十年も歳をとってないという噂のベッピンさんを手に入れたとする所から始まります。
その相手の美女は『太平洋戦争のはじめ村へきた日本兵が村の男全部徴用した』ことで愛人とも二度と会えなくなったために、日本人に深い恨みを持っているため、いやらしい奴だとはいえその時の兵隊とは関係ない千人斬りの日本人に対してある復讐を成す話。
…出ましたね、大日本帝国軍による『強制連行』が。戦時中に少年期を過ごした手塚治虫先生は戦勝国側からのウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム(WGIP)を強烈に食らい過ぎて、ことさらに戦争に行った自分の親達を貶め続けた世代なので仕方ないし、これはまぁあくまでフィクション。

ラストは1980年版と1991年版で別作品が収録されているのですが、まず1980年版の方には「悪魔の開幕」
1973年のヤングコミック(少年画報社刊)、増刊号が初出で、戒厳令が敷かれた架空の日本を舞台とした政治色が強い作品です。
自衛隊を軍隊にして核兵器の製造にも踏み切った丹波内閣ですが、それに反対する思想家の本を読んで奮い立った岡重明は電気科の秀才だったため、その技術を使って丹波首相を暗殺するよう尊敬する思想家から直々に要請された…
仕掛けは成功したものの、何故か暗殺計画は失敗。 岡はその理由、つまり思想家と政府の汚い密約があった事に気付いて自分の命も狙われるのです。ラストは全員穴だらけの血生臭い短編でした。

そして1991年版ではラストが差し代わって、収録されたのは「レボリューション」
1973年の漫画サンデーが初出のレボリューション、Revolution…つまり『革命』の意を持つこの短編、夫立会いの下で難産の末に出産した女が昏睡状態におちいり、意識を取り戻すと別人格になっていた話。全く別の名前を名乗り、その人生の記憶もあるのでついに二人は別人格の故郷まで訪ねると!?
例えば前世の記憶があるとか蘇ったとか、スピリチュアルの世界への認識が広まっている現在では全然珍しくないネタですが、これはネタをばらせば自分に関係ある未来のある人の記憶だったみたいです。この発想を使ったポリティカル・フィクションである事も分かりますが、ラブストーリーとしての完成度も高い名作でした。


いきさらせ この死にぞこない!!
勝手に生きのびやがれーーッ



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  1. 2015/02/19(木) 23:40:27|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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