大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

ホラー漫画(87) 犬木加奈子 9 「裸の女王様」

続いての犬木加奈子作品は、「裸の女王様」(リイド社刊)。
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前回の「スクールゾーン」と同じ恐怖の館DXにて、1995年から1998年の間に描かれた作品を集めて12編も収録した短編集。
とはいえそのうち8編が後述する『怪子ちゃんシリーズ』なので、まずはその他の4編を見てみると…

最初の「アンディヌ」は、ある古き"災いの魔"に狙われている夜野トバリがある学校に転校してくる所から始まります。雰囲気も服も経歴も一般人とは別格のお嬢様ですが、隣の席で彼女の面倒を見ていた蛭間が次々と災難に遭う。これはトバリを狙うエルリクという魔のせいで、蛭間は敵の目をごまかすための身代わり仕立て上げられていた、と。
タイトルのアンディヌというのは『除外された人』の意味で身代わりの事。エルリクの姿・正体は分からず邪悪な能力だけ描写される所など「クトゥルフ神話」の旧支配者(古き神)のようだとも言えますか。そういえば、海外の怪奇小説的な味わいがあります。

「裸の女王様」は育ちが良くてチヤホヤされて育ち、スクールカーストでもトップが当たり前だったサマ子が実は自分自身に自慢出来る事も無い裸の女王様だったという話ですが、自分のカゲ口に異常に反応するようになり、聞こえない声も聞こえてきて精神が病んでいくサイコホラー物。

「真昼のルヴナン」は、スターシステムで夜野トバリが再び登場。
ある学校で死んだ女生徒がルヴナン(歩く死者の事)となってまた教室に現れると、次々に生徒が死んではルヴナンになる事象が繰り返されると…学校中がほとんどルヴナンであふれかえるという事態になり、しかし生きている生徒達も反撃を開始する!

「輪廻」は、ある『女流ホラー漫画家』の怪死事件を通して前世の記憶や魂の記憶といった物の正体を描いた…若干ギャグも入ってる凄い作品。

そして『怪子ちゃんシリーズ』ですが、これは何と犬木加奈子先生の自伝的漫画作品です!
「古い記憶のホラーストーリー」「5円玉にぎって」「こわい夢」「おばあちゃんのこわい話」「迷い道」「登校拒否の道」「ふすまババア」「怪子未来を夢見る」
…という8編が収録されていますが、それぞれの話は短い。犬木ファンにとって貴重なシリーズだし、楽しいだけに短すぎて悔しい。

主人公の奇木怪子ちゃんというのはもちろん犬木先生自身で、幼少期に聞いた怖い話の最も古い記憶から始まり…
東京都中央区湊町にあった父の実家の向かい側には貸し本屋があって、従兄弟がそこで借りたというある本と出会うのですが、それが楳図かずお先生の「あなたの青い火が見える」(あれ、正確には「あなたの青い火が消える」じゃないかな!?)。怖がりながらもこの世界にはまり、「人形少女」「幽霊を呼ぶ少女」その他を次々と読んでいくわけです。
『その人のマンガは ただ怖いだけでなく 女の子の心をくすぐる ロマンや夢や悲しみや不思議も入っていた』
というわけで字は読めないのに従兄弟に何度も読んでもらって丸暗記し、文字も楳図マンガで覚えたというのですね。世代は違うながらも私も同じウメカニストであり幼少期の出会いの衝撃も持つ者として、楳図体験話は嬉しい。
後に妹が生まれて、東京から当時まだ何もなかったというS県なんて田舎に引っ越して貸し本マンガ屋さんともお別れになったのですが、ちょっと遠い町まで出ると本屋さんがあり、そこで
『うっ…うめずだ うめず!! うめずの新しいマンガが載ってるぅ』
というわけで興奮し、初めて買ったマンガが少女フレンド。楳図かずお先生が貸本誌から少女漫画誌に活躍の場を移した辺りの時代をリアルタイムで体験している世代は羨ましい!

それから怪子ちゃんは田舎の学校で先生ぐるみのイジメを受けて登校拒否児になったりもしますがマンガにのめり込み、何とか登校するようになってクラスで絵を描いていると、馴れ馴れしい少女にマンガノートを取り上げられた!
これをみんなでバカにしてイジメられるのかと思ったら、その上手な絵を見て逆に人気者になる感動エピソードになり、その馴れ馴れしく元気な少女・堤淳子(淳ペー)におだてられて、後の犬木加奈子が誕生するのだと分かります。
絵ばかり描いていた怪子ちゃんですが、淳ペーにそれをマンガにする事を勧められて、友達のお姉さんで実際に自分でマンガを描いている中学生の所に連れてってもらえる事になり…なり…で、ここで!尻切れトンボのまま終了してしまいました。
メチャクチャ面白い犬木版まんが道は、ホラー漫画雑誌で掲載していた非ホラー漫画ですが読者に受け入れられなかったわけではありません。最後の話が掲載された1998年5月号、これを最後に雑誌が廃刊になったのだと記憶しています。いつか続きを描いて単行本にまとめていただけると、本当に嬉しいのですが。


先生 先生と 呼ばれるほどのバカは無し
あんたがもし 将来先生なんて呼ばれる事になったら
この言葉を思い出すのよ



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  1. 2015/05/15(金) 23:24:48|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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