大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

ホラー漫画(89) 円山みやこ 1 「蟲笛 Koteki」

今夜は円山みやこ先生の短編集「蟲笛」(青林工藝舎刊)。
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ここまで何年もかけて散々ホラー漫画を紹介してきた私ですが、このジャンルにおいても今までで最も後味が悪く、心が痛さでゆさぶられる作品かもしれません。救い?そんなものはありません。でもでも、紛うことなき名作。
何しろ実在した陰惨すぎる事件を基にして漫画化した作品を中心に集めているので、聞く度に嫌な気分になる有名事件を漫画で再確認して…ね。これは多くのホラー映画などでも描いている事ですが、やはり幽霊だのモンスターだのより間違いなく人間が一番怖い事実を知らしめた方が良いという意味で、社会的な意義も大きいと思います。
何しろこんなヤバい作品の初出が少女向けホラー漫画専門誌の月刊ホラーMであり、そのぶんか社ホラーMコミックスで単行本化していた所に鋭いメッセージも感じます。
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治安の良い島国で住むがゆえの能天気さを持つ我々ですが、これらは遠い国の関係ない出来事ではなく、いつでも自分の身近で起こりうるのだと認識し警戒しておく事が大事なのだから…もちろん自分が加害者側に立ってしまう事だってありえます。
人の性は悪なりと知り、そう心構えを持ち覚悟して生きて行くのは良いと思いますが、でもこれを普通に女子小学生が読んでいたのだとしたら、私がその頃に読んでいたひばり書房のホラー漫画群などとは桁が違うトラウマを与えているのではないでしょうか。

青林工藝舎版では再編集していてホラーMコミックスとは収録作一覧が大幅に異なりますが、作者のまえがきに続いて漫画作品は1995年から2002年の間に描かれた5編が収録されています。
いずれの作品にも共通して言える事ですが、現実の事件を忠実にコミカライズしているだけの物ではなく、漫画である事を活かしたデフォルメをしてホラー漫画作品に仕上げているのです。
それが顕著なのが冒頭の「傷の軋み」。幼い少女の目線で巨大な蟲の化物と同居する様子が描かれているのですが、タネを明かせばその化物は虐待する父親で、最後はあまりにも不幸な結末が待っています。

次の「葉隠しの家」は女子小学生が何と9年間も監禁された新潟少女監禁事件を題材にして、加害者の母親と盆栽を絡めて描いています。
そして表題作「蟲笛」。『こてき』と読むその意味は作品を読んでもらうとして、これの題材は…嗚呼、誰もが聞く度に沈んでしまう、足立区綾瀬の女子高生コンクリート詰め殺人事件。未成年の少年らによる残忍な行動はもちろん、少女が監禁されている事に気付きながら救わなかった周囲の人間達。悲しい悲しい物語、ここでもあるモノがデフォルメされた醜い蟲が登場します。
実在の事件とは時代設定を少し変えていて、少女が当時は一般的でなかった携帯電話を持っていますが、これは後に同事件を題材にして高岡蒼佑主演で映画化した「コンクリート」にも影響を与えているかもしれません。「コンクリート」も扱った事件が故に批判が多すぎてまともに上映出来なかった不幸な作品ですが、それ以前の「女子高生コンクリート詰め殺人事件 -壊れたセブンティーンたち」は幻の映画になってしまったし、そういった現状を見ていると「蟲笛」もいつまた読めなくなるか分かりません。

次の作品は事件を起こした加害者本人ではなくその家族という、別の意味で被害者である立場の少女を描いた「ハイエナの粉」…これも悲惨な話ですが、とにかく鬼気迫る内容。
最後の「嗤う花」は現実の事件モノではなく、創作サイコホラーですね。東京のお嬢様学校から転校してきた少女の狂った精神を描いてます。

最後に著者の円山みやこ先生についてですが、私はこの短編集でしか知りません。ここまで傑作揃いの作品を描く漫画家の本は普通なら他も買い集める所ですが、元々は三原順先生のアシスタントで普通の少女漫画を描いていた方らしく、1981年に花とゆめ(白泉社刊)でデビューしているそうで…つまりホラーMに執筆してなければ絶対に出会わなかったわけですね。
可愛い少女漫画の画風で残忍な物語を描く事による効果は、私の大好きな関よしみ作品に通じる物がありますが、その後もホラー漫画はほとんど描いてないようです。葬儀屋漫画「お見送りいたします」がちょっとヒットしてますけどね。
普通の人が隠したい人間心理、醜く見たくないモノを見せる稀有な才能を持っているのだから、そういった社会派ホラー作品に絞って描かないのが本当に勿体無い!今後に期待しましょう。


可哀相だけど もう面倒見きれない
世界中で自分だけが傷つきやすいのね?
自分の殻の内側の痛みしか感じられないのね?
でもあなたを撫でてなぐさめるたびに その殻でわたしの手も……ほら



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  1. 2015/06/29(月) 23:59:42|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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