大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

月刊漫画ガロ(146) 水木しげる 10 「復刻版 妖奇伝」

今夜は水木しげる作品から、「復刻版 妖奇伝」(青林堂刊)です。
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1960年に水木しげる先生自身が編集して兎月書房から貸本屋向けに怪奇漫画専門の単行本として出版した伝説の雑誌、「妖奇伝」からタイトルを取って月刊漫画ガロの青林堂から、↑の函入り仕様で全2巻にて復刻された作品。
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オリジナルの「妖奇伝」はテレビ東京の「開運!なんでも鑑定団」で150万円の鑑定額が付いたレア本ですが、当時は全く人気が出ずに2号で廃刊になっています。そう、妖奇伝といえば2号までしか出せなかった水木本として有名なのですが、ただし打ち切り後に読者から連載再開を要望されたため『妖奇伝』→『墓場鬼太郎』と誌名を変えて実質的な続きの3号~5号までが出ているのですね。よって全5冊となったこの水木しげる編集の貸本雑誌(形式の単行本)ですが、それから水木しげる先生以外の作家の短編は除いて、水木作品のみを集めて復刻してくれたのが本書です。
ちなみにその後の「墓場鬼太郎」は、現実の世界でも興味深い展開を見せます。兎月書房がまるで原稿料を払ってくれなかったために水木先生は憤慨して青林堂の前身である三洋社で続きを描き、兎月書房側も竹内寛行という代役を立てて4巻~19巻までと、水木先生より長いニセ鬼太郎が描かれる事となるのですが…このあたりのエピソードも水木しげるファン周辺では有名な話。

繰り返すと、本書に収録されているのは兎月書房時代の鬼太郎モノ5編。
まず『妖奇伝』の1号で描いたのは鬼太郎が漫画では初めて登場した作品(紙芝居作家時代には既に描いているし、そもそも元ネタは伊藤正美原作の紙芝居「ハカバキタロー」)として有名な「幽霊一家」、2号で「幽霊一家・墓場の鬼太郎」
『墓場鬼太郎』と誌名を変えてからは、墓場鬼太郎夜話の第1話~3話として、「地獄の片道切符」「下宿屋」「あう時はいつも死人」

初出から32年後の1992年についに青林堂が復刻したこれらのエピソードは、リアルタイムで貸本世代のおじいちゃんしか読めていなかったオリジナル版の復刻…特に重要なのは『幽霊一家』の連続2作、つまり鬼太郎誕生(同時に目玉おやじも)の話でしょう。
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掲載する出版社を渡り歩きつつ描かれ続けた鬼太郎なので誕生編もいくつかのリライト版があり、これまでも1966年に描かれたガロ版の「鬼太郎の誕生」が最も知られていて用意に読めるバージョンでした。私が少年時代に揃えてた単行本にも収録されていたし、ずっと前に「ココ」で紹介したコダマプレス版の「墓場の鬼太郎」にもそれが収録されていました。
それが文句無しの名作だし広く読まれる文には申し分ないのですが、ここでついに読めた元ネタの兎月書房版がですね…素晴らしいんですよ!当然話は知っていても、この時代にしてこの着想、ストーリー、絵がかもし出す作品の怪奇な雰囲気!感動を覚えます。
この時はここに収録されている幽霊一家も墓場鬼太郎モノも、とんでもないプレミアが付いたオリジナル本を入手する以外には青林堂の復刻版…つまり本書でしか読めなかったのですが、後に角川書店から「貸本まんが復刻版 墓場鬼太郎」として復刻されて、さらに後には文庫化までされたし、小学館クリエイティブから「貸本版墓場鬼太郎 限定版BOX」なんて凄いのが出たり…つい昨年にも講談社から「水木しげる漫画大全集 貸本版墓場鬼太郎」が出たりして、かつて幻の作品だったのはもう忘れた感じになってしまいましたが、この時代に生きててラッキーなのだと言えます。水木先生自身も原稿料を貰えなかった兎月書房用の原稿で、何十年も後に印税がガッポリ入るとは当時思いもしなかったでしょう。
どの出版社から出ている版も収録内容の違いなどで一長一短ありますが、コレクターなら全部揃えて欲しい所。でもそれよりとにかく、まだ読んだ事のない方にどれでもいいから読んで欲しい。

幽霊族最後の生き残りで醜い主人公…それが「ゲゲゲの鬼太郎」として最初のアニメ化がされる頃にはポップな人気者になっていた鬼太郎。近年でもまだ新しいアニメが作られたりしてるし、妖怪好きとか関係なく日本人で鬼太郎を知らない人なんていない、それほどメジャーな存在ですよね。
にもかかわらずアニメで可愛く、正義の味方になった鬼太郎しか知らない人、原作なんてどうでもいい人は目玉おやじが鬼太郎の髪で隠れた片目の所から生まれたとか勘違いしていたり、遍歴等々何も知らないみたいですからね、鬼太郎がどういう存在であったのかくらいは読んで知って欲しいと思います。

もちろん国民的キャラクターも黎明期の事、『墓場鬼太郎』の2話目である「下宿屋」の途中から潰れている目が左目から右目に移っていたり、これは同じエピソード内ではないけど当初は鬼太郎を育てていた日本血液銀行の秋山がいつの間にか水木へと名前が変わっていたり、ささいなミスなのか設定変更なのかといった場面もあります。
そんな不安定さも面白くて、妖怪仲間…というか当初は鬼太郎の敵でありドラキュラの下男で、まだ本当にねずみっぽい顔をしていたねずみ男が登場し、あれやこれやと楽しいエピソードにシュールな地獄の光景、何処も彼処も面白すぎる初期の鬼太郎!


まったく こんな下等なやつとはくらせない
ふんどしはしめてないし 風呂には入らないしガマは食べるし!!
こんなきたない いやらしい人間ってあるだろうか



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  1. 2015/08/25(火) 23:00:38|
  2. 月刊漫画ガロ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

墓場鬼太郎

初めましてU・Mと申します
水木先生が亡くなられて暫く経ちましたが
これを機に昨日、なかなか読む機会が
無かった、鬼太郎の原点と言われる「貸本
漫画復刻墓場鬼太郎」 を買ってみました。

凄く面白かったです!
特に鬼太郎、目玉おやじの誕生の下りは
長い間行方不明だったパズルのピースが
発見されてピタピタと合わさって行く
様でかなり興奮してしまいました笑

ただ「墓場鬼太郎」と言うタイトルの本は
結構色々あり(それだけ鬼太郎と言う
マンガは歴史がある?)どれが本当の
元祖が結構迷いましたが笑
  1. 2015/12/14(月) 08:21:44 |
  2. URL |
  3. U・M #y5ou25a6
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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