大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

月刊漫画ガロ(148) 古泉智浩 6 「ワイルド・ナイツ」

前回からの流れだと当然、古泉智浩先生の「ワイルド・ナイツ」(双葉社刊)になりますね。
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2008年に漫画アクションで1年近い連載をしてた作品で、単行本は全2巻、同時発売でした。
月刊漫画ガロで再デビューしてから数えても10年を越える漫画家キャリアを持ち、単行本も何冊も出してるしメジャー誌でも連載を持ってそれなりに売れていたと思われる古泉智浩先生でしたが、1冊で完結しなかった作品は本作が初めてです。こちら、帯も付けて。
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舞台はとある田舎…って作者が住む新潟県なのですが、方言も使いまくってるし実在の地名も出てきます。地方色を出すための効果として使用している方言ですが、私も新潟県出身なので全部分かるのが嬉しい。懐かしい。
ここで確認しておくと新潟県は漫画家を輩出している数が多い事で知られているのですが、トキワ荘関連の寺田ヒロオ先生と赤塚不二夫先生(生誕は旧満州)は別格すぎる偉大さだとしても、他にいつも挙げられるのは大抵が高橋留美子先生と水島新司先生で、他に大御所だと叶精作先生、魔夜峰央先生、小林まこと先生、聖悠紀先生、柳沢きみお先生、八神ひろき先生、しげの秀一先生、山田芳裕先生、木葉功一先生、高野文子先生、高橋亮子先生…って、有名所だけ見てもやっぱり新潟県は凄いな。
他にガロ系で近藤ようこ先生や魚喃キリコ先生、エロ系で氏賀Y太先生やSABE先生、少年ジャンプ系でえんどコイチ先生や新沢基栄先生や和月伸宏先生や小畑健(土方茂)先生…等々と続きますしね。
で、それら全てを見ても一番地元に貢献している、最大限に新潟色を出した作風を保っているのが古泉智浩先生ではないでしょうか。新潟のみで発売されている情報誌でも連載しているし。

本作の主人公・国森則彦は、そんな新潟県という田舎でパチスロ屋の店員をしながらつまらない日々を悶々と、実家で親と共に暮らしている…30過ぎのいい歳した大人。今回は得意の童貞ではないどころか婚約解消歴があり、その相手との間に見た事も無い子供までいます。そのために婚約不履行で起訴されて何と1300万円の賠償金を求められて人生詰みかけ、冒頭でそんな説明がされています。
見た事のない実子は男子だという事でいつか復讐に来るのではと怯えながらも安い手取りの半分以上かかる毎月の養育費に追われて生きているし、人格的にも小心者のくせに友達とのくだらない会話の中でいちいちキレたりするダメな奴。
でも22歳の可愛い恋人・朋恵がいてセックスしまくってる羨ましい奴でもあって、マンガ的な徹底したダメ人間ではないんですね。そこが中途半端だからこそリアルな部分であり、本作で描くセックスの部分で必要な設定。ご丁寧に女体を喜ばせるコツを教えてくれたり、生々しすぎる描写もあったります。
さらにたまに合コンで会ったブスだとか、テレクラを利用してもセックス、さらに後半でデリヘルに出会ってこの世の幸せを感じたりしています。若い時にモテな過ぎた男にありがちな事でしょうか、異常なほどのセックス欲に支配された男でこちらも面白い展開になるのですが、あとは『セックス&バイオレンス』のバイオレンス部分。

国森が思い立って通りがかりの空手教室"越道會"に通い始めるのですね。道場のビデオ棚にはブルース・リーの「燃えよドラゴン」だとか、千葉真一や志穂美悦子主演の東映カラテ映画なんかが並んでますが、練習はマス大山の極真空手だとかああいった厳しい世界とは全く違ったぬるい内容。
それでも習い始めて4ヶ月くらいもすると、パチスロ屋でヤンキーに絡まれたり同僚に脅されてもビビらなくなっている自分を見つけます。本業のパチスロ屋は適当に働いてますが、空手の方は人生でかつてないレベルの運動を自らして、ブラジリアンキックを研究したりとかしているのだから、いい趣味に出会ったのでしょう。
そして考え事をしながらドライブして新潟市から白根市を越え、夜の長岡市まで…住居から離れたそこの場末のコンビニで、一人で来たヤンキーを狙って空手による辻斬りを決行する痛快な展開に!
何しろ空手を始めて強くなる男、つまり空手マンガのお決まり要素が描かれているのに空手で日本一を目指すとかではなく、近所のヤンキーでしかも一人でいる奴を狙って叩くのだからスケールは小さい。しかし我々が実際にやっつけて欲しいと思うのは屈強な格闘家なんかではなく、田舎ででかい顔している迷惑なヤンキー連中であろう。

その後も国森はヤンキー襲撃を繰り返します。
空手で習った技の実験台にしてやり…と、これはかなりデンジャラスな行為であり、だからこそ格闘モノだったら武勇伝として描かれる所ですが、空手学んでちょっと強くなっても元々の性格上ビビりながらなのでそんなに勇ましい感じがしませんね。ヤンキーは実際闘ってみたら弱かったからというのもあるか。でも実戦だから危ない事もあるし、ヤバい時は逃げて車からエアガン撃って撃退なんてカッコ悪い事態にも陥ったり。
こんな事をするのはただの練習ではなくてメンタル面の安定を得るためでもあり、この戦いで不安を解消して眠れるようになるのです。

それから空手の初心者大会に出場して闘ったりして、最終回ではまさかの事態へと流れるのですが、これで全てがまとまる素晴らしいオチが用意されています。
ちなみに1巻の表紙で「死亡遊戯」風の服を来てヌンチャクまで構えていますが、これは単行本用に描き下ろしたイラストであって本編でヌンチャクは使われません。まぁ私は連載時から読んでたから分かっていたけど、単行本で初めて読む人はガッカリするかも!?
で、古泉智浩作品できっと多くの方が楽しみにしているのは『あとがき』じゃないでしょうか。これがあるから常に初出誌を読んでいてもファンは単行本を買うのが絶対に必要となるのです。
さらに本作では『古泉智浩ロングインタビュー』も収録されていて、例えばどれが実体験でどれほど自伝的な話だったのかとか、聞きたい話を聞かせてもらえる感じでした。
とにかく全ての男達…いやせめて、文科系の男達必読の名作です!(今作ばかりは女性には薦めません)


オレは闘争心がないことはないですが
絶対に負けたくないというような なにクソ根性みたいなのが全然ないです
オレはあれですよ 自分よりものすごく弱い相手しか勝てない気がします



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  1. 2015/09/06(日) 23:59:48|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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