大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

藤子不二雄(63) 「藤子不二雄少年SF短編集」

藤子不二雄作品、「藤子不二雄少年SF短編集」(小学館刊)。
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1983年から1985年までに全3巻で上梓された短編集です。
まだ二人の藤子不二雄先生が同一ペンネームで活躍していて、日本の児童漫画・テレビアニメの中心だった人気絶頂期の1980年代に幼年~少年時代を過ごした世代の私。
今回紹介する本は後の藤子・F・不二雄先生なので、そちら側の有名作を挙げると「21エモン」「ドラえもん」「キテレツ大百科」「エスパー魔美」「チンプイ」…まだまだありますが、こういった作品はそりゃあ愛してやみませんよ。
しかし大人、というかおじさんになった今でも大の藤子不二雄好きと公言出来るのは、これら深い内容で質の高い短編作品を数多く手がけているからでもありましょう。
安価だし少年達が大好きだったてんとう虫コミックスで刊行されていたため、容易に藤子短編に触れて感動するきっかけを頂けていたのです。

今までにも藤子不二雄短編集はいくつか紹介していますが、今回のはアンソロジー名の通り少年向けでSF(SUKOSHI FUSHIGI)な短編集で、収録作が描かれた時代は1974年代から1985年まで。
「ドラえもん」などのようなヒット作を連発して国民的漫画家になった影響で、藤子F先生は明るく健康的な子供達の模範的漫画しか依頼されなくなったようですが、これら短編ではそのイメージから外れた作品を描けたようで、読切作品ならではの実験的な事もしてみたり社会風刺を入れてみたり、少し暗かったり狂ってたり…作風の自由度が違う。これらの短編を、一口メモみたいな感じで、ざっと紹介していきましょう。

まずは第1巻・第1話目が表題作「ひとりぼっちの宇宙戦争」で、初出は1975年の週刊少年サンデー
平凡な日本の中学生・鈴木太郎が宇宙戦争の代表戦士に選ばれ、時の流れが止まった地球を舞台に地球人全員の運命をかけてハデス星と戦う。しかも、戦う相手は…自分!

続いては「コマーさる」で、初出は1980年のこどもの光
『コマーシャル』と『さる』を掛け合わせたタイトルですが、そのままですね。少年が出会った不思議なさる、こいつが持っているものを見ると、人は同じ物を欲しくてしょうがなくなる…少年はこの特殊な能力を使って近所に住む漫画家のタマゴの有礼内(うれない)さんを人気漫画家に仕立て上げる、という内容。
有礼内さんちには漫画がいっぱいある、という理由で遊びに行っていたのですが、少年が読むのは楳図かずお先生の「まことちゃん」で、小さいコマながら藤子F先生が描いた沢田まことを見れます。

「なくな! ゆうれい」、初出は1975年の小学五年生
小学生の洋一はカエルの置物に取り憑いていたゆうれいと出会い、ゆうれいが持つ200年来の恨みを晴らすため一肌脱ぐ事にしますが…復讐する相手の子孫が、友達のゆう子だった!?
小学生ながらに狡猾な悪者がゴッドファーザーら3兄弟で、手なずけている片目の猛犬・コロシヤも恐ろしい。

「未来ドロボウ」、初出は1977年の週刊少年サンデー。
人生の成功者になるため野球などの楽しみは捨て寝る間も惜しんでガリ勉を続けていた学でしたが、父親の工場が潰れたため進学は諦めるよう言われる。
目標を失い人生おしまいだと落ち込む学は、出会った大金持ちの大脳生理学者と『人格交換』して(まぁ結局は体が入れ換わる)、未来と引き換えに膨大な財産を手に入れますが…!?

「四畳半SL旅行」、初出は1979年のマンガ少年
中学生になってもまだ一つの事に熱中すると周りが目に入らなくなる少年・母伊浩美。彼は現在鉄道模型にはまっていますが、それがエスカレートして…思い込みの激しさが起こす現象を描いた傑作。

「恋人製造法」、初出は1979年の週刊少年サンデー(増刊号)。
主人公男子中学生・内男が地球に漂着した宇宙人と出会い、助けてあげた事でお礼に片思いの美少女・毛利麻理のクローン人間を作る方法を教えてもらう。本当に誕生させたコピー人間の毛利麻理…女子中学生のもうセクシーな体つきになっている娘が全裸で出てきますが、知能や運動機能は赤んぼう同然。それを色々教えて育てながら、楽しい共同生活が始まると思われましたが!?
漂着してきた宇宙人は、内男が食べさせたカップラーメンの味に感激して何個も食べ、
『う、う、う、うまいっ!!わしは銀河系くまなくうまい者を食べ歩いておるが、このような美味ははじめてじゃ!』
とまで言っています。このカップラーメンは日清カップヌードルなのですが、銀河系一の味とまで言われていますからね、日清はこの作品を宣伝に使えるのではないでしょうか。


第2巻に進み、表題作の「ポストの中の明日」、初出は1975年の週刊少年サンデー。
主人公の少年は予知能力の変形と言いましょうか、明日の記事が見えるようになった市川弘。せっかく明日の事が分かっても決定済みの未来は結局何も変えられない事で苦しむのですが、仲間達とハイキングの計画をしていたある日…自分達4人が青木ヶ原樹海で遭難する記事を読んでしまう!警告しても誰も信じずハイキングは決行され、当然のようになるべくして遭難してしまいますが、果たして少年達は樹海から抜けられるのか。
4人のいリーダー格は宇土という少年なのですが、彼の部屋の場面にも注目。何とブルース・リーのポスターが貼ってあります!

「おれ、夕子」、初出は1975年の週刊少年サンデー(増刊号)。
主人公は佐藤弘和という少年ですが、何故か彼の身に1週間前に死んだクラスメートにして好きだった夕子が入り込む怪事件が起こるのですが、それは科学者だった夕子の父親が娘の死を悲しむあまり行ったある行為の結果でした…あまりにも悲しい、見事な泣きの短編漫画。

「ニューイヤー星調査行」、初出は1981年のマンガ少年。
地球から6万光年も離れたロルカル系第3惑星・ニューイヤー星を舞台とした宇宙物語ですが、見た目は人間タイプで性格も良いニューイヤー星人の協力も得てある調査を進めますが…
常識が違う異民族(異星人)の感覚を描いた人間ドラマとしても面白い。

「世界名作童話」、初出は1975年の小学四年生
あの有名な童話、「みにくいアヒルの子」「ねむれる森の美女」「うらしま太郎」「ヘンゼルとグレーテル」「ジャックと豆の木」の5作をパロディとした2ページのショートギャグ漫画で、「ドラえもん」キャラが出てくる話もあるのでスピンオフ物でもあります。

「流血鬼」、初出は1978年の週刊少年サンデー。
これですよ!オープニングから血しぶきで始まり藤子F作品にしては内容も絵柄もハードな本作、小学生当時の私はこれが大好きで、何度も何度も読んだものです。
あのドラキュラの国・ルーマニアから原因不明の奇病で急死者が出ては蘇り、人を襲って血を吸うという吸血鬼を思わせる事象が世界中であっという間に広まり、主人公の少年ら数人以外は恐らく皆が吸血鬼になってしまった。残った仲間も1人、また1人と奴らに捕獲されて、ついに世界で最後の人間になってしまった少年。
彼はどうなってしまうのか…用意されている素晴らしいオチは一応書かずにおきますが、吸血鬼たちとは何だったのか、そしてタイトルとなった流血鬼とは。

本作において人が吸血鬼化する病原体のウィルス分離に成功したのがリチャード・マチスン博士で、ウィルス名も『マチスン・ウィルス』と名付けられます。これは子供の頃は全く知らなかった事ですが、作品の内容自体もリチャード・マシスン(Richard Matheson、現在は普通マシスンと読みます)の小説が元ネタとしつつ改良したオマージュになっているのですね。
該当作品はもちろん長編小説『I Am Legend』。日本では最初「吸血鬼」のタイトルで翻訳されたのですが、これは「地球最後の男」「地球最後の男オメガマン」「アイ・アム・レジェンド」と3回の映画化がされているので有名ですね。どれも個人的に大好きな作品だし、その他にもリチャード・マシスンの小説や脚本を手がけた映画などは傑作が多いので大のお薦め。

「ふたりぼっち」、初出は1979年の週刊少年サンデー(増刊号)。
平凡な少年・健二がある日、世界の境界からパラレルワールドの自分と出会う…自分同士で意気投合して一緒に漫画を描いたりして幸せな日々を送りますが、徐々に2つの世界のズレが出てくる。パラレルワールドの自分、誰もが見たいと願うであろう夢の話。

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最後の第3巻は「宇宙からのおとし玉」からで、初出は1983年の別冊コロコロコミック。
さえない少年が天から落ちてきたボール型の宇宙人と交流を持つ話ですが、「ドラえもん」などに比べ主人公の年齢がちょっと高いので恋愛の要素も盛り込んだ素敵な話。

「アン子 大いに怒る」。初出は1974年の週刊少女コミックで、当時のタイトルは「赤毛のアン子」だったのを単行本収録の際に改題したそうです。
画業の父親と2人暮らしをしている赤毛の少女・青山アン子でしたが、父が詐欺に遭った事で魔女の血に目覚めて超能力を発動する…と、そうですこれは「エスパー魔美」の原型として知られる作品。ヒロインの可愛さでは、魔美よりアン子の方が上かも!

「絶滅の島」。初出は1980年のスターログですが、セリフ無しだったその作品をリメイクして1985年の別冊コロコロコミックに掲載。つまりこの本ではセリフ有りで分かりやすい版が収録されていますが、初出時のサイレント版も現在は『藤子・F・不二雄大全集』の「少年SF短編」第3巻で読む事が出来ます。
宇宙人による地球侵略がほぼ終わりに差し掛かっている時期に最後の生き残りが住む孤島を描いており、藤子F作品としてはかなり残酷描写が多くメッセージ色も強い。人間を虫けらのように楽しんで殺す悪魔のような宇宙人達ですが、それは人類が他生物にしてきた事とそう変わらないのではないか…

「山寺グラフィティ」、初出は1979年の週刊少年サンデー(増刊号)。
『山寺』の通称で有名な山形県の立石寺に残る伝承を元にして、ある男女を描いた切ない作品。ノスタルジックな雰囲気漂う名作中の名作ですね。

3巻の表題作は最後に来て「宇宙船製造法」、初出は1979年の週刊少年サンデー。
宇宙船の故障で銀河系の果てに漂流してしまった8人の少年少女が、船の修復は不可能と分かりその星でたくましく生きるのですが、人間が集団になった時の付き物で力関係による内戦が起きたり。
1人だけ地球へ戻る事を諦めていなかった小山は、ついに宇宙船修復のアイデアを思いつくが…
藤子F先生自身が他の本で書いてましたが、ジュール・ヴェルヌの「十五少年漂流記」の宇宙版ができないかと考えて描いた作品だったそうです。これも凄い傑作。


これでも気をつかってでてきたのに。
おどかさないよう ひるまでたのに。
ゆうれいというだけで みんながきらう。
これは人種差別だべ…。



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  1. 2015/10/06(火) 23:59:39|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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