大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(184) 風忍 1 「地上最強の男 竜」

おれは雷音竜(らいおんリュウ) 地上最強の男だ!
フフフ・・・・あれはアメリカから来たFBIか・・・・むこうはイギリス ドイツ フランス 中国 ソ連・・・・ずいぶん きたな おれを殺しに



今夜は風忍先生です。
読み方は『かぜ しのぶ』、1952年生れの神奈川県出身で、1970年に永井豪先生のダイナミックプロに入社して漫画界に入りましたが、このアシスタント時代にあの傑作、「キッカイくん」「ガクエン退屈男」を手伝っています。
で、翌年にはギャグ漫画の「百円病院」でデビュー。ええ、風忍先生が描きまくっていたのは狂気とアートにまみれた作品の数々であり、伝説になっているそれらの作品はいいオヤジになった現在に読み直しても強烈すぎる印象が薄れません…が、実はデビュー当初は全然違う絵柄でギャグ漫画を描いていました。
それがあのバンド・デシネ界の巨匠フィリップ・ドゥルイエなどに出会って徐々に目覚めていき、1970年代に半ば以降は世間のオカルト・ブームにも乗って奇妙すぎる世界が確立されていくのですね。
多くの作品で見れる精神世界に異常に傾倒している作風、あれらは横尾忠則の影響を公言していると知って納得したものです。
一般的には1990年代の真樹日佐夫原作「タイガーマスク ザ・スター」辻なおき先生と版権トラブルが起こり、連載が中止させられた事が知られていますか。

彼の作品はサイケデリックで幻覚作用を伴う読むドラッグ…というと現在では小池桂一先生の「ウルトラヘブン」等が非常に有名ですが、確かに小池作品の先駆けだったのだと思います。しかも自身がドラッグをキメる事は無く、全てはナチュラル・ハイの状態で描いているらしいんですよね。凄い…ダイナミックプロは多くの漫画家を輩出していますが、明らかに出身漫画家の中で一番の個性を発揮しています。
そんな脳内トリップ漫画を上梓している風忍先生にしてはかなり娯楽性を意識したアクション漫画が、『風忍&ダイナミックプロ』名義にて1977年の週刊少年マガジン(講談社刊)で連載された「地上最強の男 竜」
こちら朝日ソノラマのサンコミックス版で全2巻です。
KAZE-the-most-powerful-company-in-the-ground-ryu1.jpg

ずっと後で分厚い角川書店版、そして双葉社版が共に全1巻で出ましたが、後者は描き下ろしのカラーページが加筆されています。
KAZE-the-most-powerful-company-in-the-ground-ryu2.jpgKAZE-the-most-powerful-company-in-the-ground-ryu3.jpg

あらすじを簡単に紹介しましょう。
道教師範の下で修行した羅城門空手の達人・雷音竜という主人公が、強すぎるがために全日本空手大会で対戦相手を殺してしまう。その相手・加山五段の死に様ですが…竜に蹴られた頭部は脳味噌や目玉も吹っ飛ぶ爆発を起こし、殴られた腹も腸を撒き散らし、触れた足は千切れて大変なモノ。この人体が内側から破裂する残虐な描写は、とてもデヴィッド・クローネンバーグ監督映画「スキャナーズ」より4年も前、日本の漫画では武論尊原作・原哲夫作画の「北斗の拳」より6年も前の作品だとは思えませんね。
(ずっと後の1988年に骨法の堀辺正史を怪しさそのままに描き単行本としても上梓した「ケンカ必殺拳・骨法」でも、一応は実在の人物を描いたノンフィクションだというのに派手な人体破壊を描いてました)

竜本人すら恐れるこのあまりの強さに、師匠の道教は念をかけた面を竜にかぶらせて破門し、竜は地下に篭るのですが…その五年後に加山五段の婚約者だった二階堂邦子が竜を殺すため現れる。あの試合の時は「パタパタパパ」が大ヒット中の歌手という事でしたが(ちなみに本作はあの「パタパタママ」が発表された翌年に連載しています)、復讐のため羅城門空手を修練して女戦士となっているのですね。しかも道教と共に来て一対二で決戦となるのですが、これがいきなりクライマックスかっている凄いテンション。
戦いの場は、予知能力者だった竜の父が残した秘密部屋。戦う気が無かった竜、そして変な機械を操って必至にその戦いを止めようとする竜の妹・悦子。しかしこのまだ小学生だった妹が、邦子の蹴りで加山五段のように頭を潰されるに至り、竜は啼いた、そして吼えた!
相手は強いとはいえ老人と女性ですよね。それを…女の足を掴んでぶん回して頭を老人にぶつける等、激しく痛めつけるのです。そんなわけで頭に回転するノコが付いたヘルメットも装着して頑張った邦子でしたが、返り討ちにあいます。しかもとどめを刺した方法なんて、「あしたのジョー」のネジリンボウですよ。あれで完全に体を捻り殺すまでやっちゃってるんですね。しかし道教の方は両手を切られ腹部は手刀で貫通させられたりしますが、それでもしぶとく生きててある爆発で空に飛んでいってしまいました。

ここからが後半か。
両手を失ってもやはり生きていた道教が、羅城門神殿の底から現れた神と出会う。そして念力増幅コントロール装置内で霊的エネルギーの中心体である七つのチャクラを働かせると、全国の仏像が空を飛んで集まってくる…それらの中にばらばらに封印されていた肉体が集まると統合し、あの救世主イエス・キリストが復活しました。
あれ、神は仏の姿をしていたのですがキリストがその下に?仏教こそキリスト教より上位にあるのでしょうか。細かい事は目をつぶって先に進むと、実はキリストは二千年前に竜に殺されていて、聖書の一部は何者か書き換えてその事実を隠蔽していたらしいですね。

蘇ったキリストは竜を殺そうとするのですが、最初の奇蹟として『世界でいちばん強い男』を蘇らせます。世界でいちばん、しかも人類史を遡って歴代でですよ。となると誰だと思います?いちばんと言いながら二人が蘇りますが、まずは我らが日本の宮本武蔵!
そしてそして…ブルース・リーです!うん、その人選は正しい!
彼らを竜へ差し向ける刺客として使うわけですね。ちなみに数々の漫画に登場しているブルース・リーですが、本作におけるブルース・リーはファンの間であまりにも有名。

一方の竜は何故か恐山へ。弥勒菩薩を指導霊として持つ霊媒・橘と出会い、エクトプラズムの悦子も出てきて核心となる事実の断片だけ掴むのですが、真実はキリスト、そして宮本武蔵とブルース・リーとの対決の時に明らかになります。
竜の秘密、竜が何者で何故戦わなければならないのか…

ネタバレになりますが、一つこれは書いてしまいましょう。まぁ、有名な作品なので知ってる人も多いと思いますし。
ここまで読者は、どうやら竜は悪魔らしいと信じるように誘導されていたのですが、実はイエス・キリストの方こそ悪魔でした!しかも竜の攻撃で傷付いた顔がパックリ割れるとそこから「デビルマン」的なヤツが正体を現すのです。
衝撃の事実は続いて竜の正体が何かという事になるのですが、それは書かずにおきましょう。

もう何かとんでもない事が起こっているとしか言いようがないラスト近くですが、正拳での地球割りも圧巻です。
幼少期に大好きだった「Dr.スランプ アラレちゃん」、あの則巻アラレが行なう地球割りの元ネタがこんな所にあったとは!初めて読んだ時は驚きましたね~。
これだけでなく、どんな奴も0.2秒で殺す空手とか、そもそも『地上最強の男』というのもそうだし、色々と子供の発想そのままみたいな設定が目立つ本作ですが、緻密な絵柄に斬新なコマ割りやデザイン等々の表現ですっかり意識がもっていかれてしまうのですね。

絵も内容もヤバすぎるだけに量産がきく作風ではない風忍先生、まだまだ凄い作品が残されていますが、代表作はこの「地上最強の男 竜」で間違いないでしょう。
2000年代に入ってまさかの関連作品「地上最強の男 竜 episode 0」「新・地上最強の男 竜 R-01」というのが描かれていますが、未読の方はまず、黙ってオリジナル版を読んでみてください。


おれは地上最強だ
どんなやつがきても0.2秒であの世へおくることができるんだ
武器はもたない カラテだ!



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  1. 2015/12/07(月) 23:59:32|
  2. 劇画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

男と女の凄絶デスマッチ最高‼︎

初めまして。このマンガ大昔に読みました。一番印象的だったのが、竜と女闘士の肉肌あらわな凄絶デスマッチ。ノコヘル攻めで苦戦しながら起死回生の逆転劇、そして肉体絞りの刑で勝利する竜…読んでいて爽快でした。師の坊主の手の平をすべり落ちる女の手首が、なんとも色っぽかったのを覚えています。
  1. 2016/07/11(月) 18:00:12 |
  2. URL |
  3. ユウチャン #-
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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