大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(185) 風忍 2 「バイオレンス&ピース」「ガバメントを持った少年」

風忍作品の紹介を続けます。

前回紹介した「地上最強の男 竜」はカルト漫画として金字塔を打ち立てた作品ですが、それ以上にぶっ飛んでいて破茶滅茶な世界観を持つのが実は短篇の数々。
それを楽しめるのが、私が風忍先生を知った当初に入手したこちら、奇想天外コミックスで1980年出版の「バイオレンス&ピース SF短編集」(奇想天外社刊)。
KAZE-violence-and-peace.jpg

収録作品は…
1980年の「男は度胸」
1978年の「心の内なる声を聞け!」
1978年の「宇宙へ向かってとび出せない」
1976年の「絶滅者」
1978年の「超高速の香織」
1976年の「ガバメントを持った少年」
という順になっています。

オープニングの「男は度胸」、アメリカの雑誌・HEAVY METALに載ったオールカラーの作品ですが、これがいきなり凄い傑作!
『おれはヤクザだ おれはだれにもまけない強い男だ』
で始まる本作も「地上最強の男 竜」と同様に子供が考えたような設定が目立つ本作ですが、この絵とよく分からない精神世界を絡める事でもしかして深い世界を表現しているのかと心地よく騙されるんですよね。オチまで、正に風忍作品だなぁ。
それに何と美しいサイケデリックな色使い…まぁこの部分は横尾忠則の影響が強すぎる気もしますが。

この単行本は『SF短編集』と付いているように、どの作品でも未来的なマシンや装備なんかが惜しみなく出てきますが、それらがまたカッコいいんですよね。フィリップ・K・ディックあたりのSF小説で読んだような内容・テーマの話なんかも、これを絵にして違和感無く読ませる漫画家は風忍先生の他にほとんどいないと思いますよ。

「超高速の香織」だけオリジナルでなく、後藤俊夫原作の作品。
女性科学者の香織が実験成功して作った加速剤を飲み、1秒を2698秒(45分)として体感する時間感覚になっている時に…このタイミングでF-15ジェット戦闘機が墜落して突っ込んでくる事に気付き、数秒後に激突する事が分かります。
加速剤といっても要は「サイボーグ009」の加速装置と同じだし、009以前にもSFでは出ていた物ですが、本作で面白いのは加速剤を飲んでいないまだ乳児の息子の俊一、もちろん生身の肉体である赤子を連れて脱出しなくてはならない事。
加速している時間の中でも人間が普通に歩いたりしていた初期のSFと違って、ここではどうなるかをしっかり描いています。よって加速には耐えられない赤子と加速している香織とでビルを脱出する事がサスペンスを生む!

凄い…これもあれも、全部凄い。
とはいえこれらは誰もに薦められるわけではなく、かなり読者を選ぶでしょう。私自身も本作に出会ったのが確か10代後半とかで、もうガロとか読んでたし変わった作品にも慣れていた時期なので感銘を受けましたが、それ以前の普通の少年漫画しか読んでなかった時期なら全然ワケ分からない漫画というだけの評価で投げていたかもしれません。

そしてQJマンガ選書より1997年出版の「ガバメント(軍用拳銃)を持った少年 自薦短編集」(太田出版刊)。
KAZE-the-boy-who-has-government-45.jpg

初期はサブカルチャー雑誌だったQuick Japan(クイック・ジャパン)ではカルト漫画を再評価する事に多大な貢献をしていましたが、その一環でこの単行本が出たのです。
収録内容は「バイオレンス&ピース」ともかなりかぶり、「男は度胸」「宇宙へ向かってとび出せない」「絶滅者」「ガバメントを持った少年」「超高速の香織」と、6編中5編までが再録されています。1編だけ風忍先生から『自薦』されず外れた「心の内なる声を聞け!」の立場はどうなるのですか、しかもあんなに名作なのに!

ともかく単行本「ガバメントを持った少年」は収録作品数がより多いし、サイズも大きい。上記の作品の他には、
1981年の「HEART AND STEEL」
1984年の「花鳥風月」
1986年の「愛染転生」
1984年の「霊体人間」
と、先の単行本が上梓されて以降の1980年代作品がいくつか読めるのですね。

こちらでは「男は度胸」に続いてもう1編、やはりアメリカの雑誌・EPICに載ったオールカラーの作品「HEART AND STEEL」が続きます。
え、え?え~~!!これは…
はい、やはり風忍作品は漫画というより美術作品、どちらかというとバンド・デシネのように楽しむのが良いのだと思わせてくれます。

他の80年代作品を読んでも、あんな軽薄短小化の時代にあっても既に特殊な作品世界を完成させている風忍先生は惑わされる事無く、変わらず独自の感性で異様なモノを描いているのが分かって嬉しい。オカルト色は若干強まったか!?
とにかく金が儲かりそうな普通の漫画を描こうかなんて気持ちは、これっぽっちも持ってなさそうですもんね。
漫画の定跡を破りまくっているので普通の漫画読者が付いて行きにくいでしょうが、でもこの作品の難解さ、人によってどうとでも解釈される部分。これは上手くいけば1990年にもてはやされた、というか勝手に深読みとか考察しまくって社会現象にまでなった「新世紀エヴァンゲリオン」のように扱われた可能性もあったかも…いや、ないか。

この単行本では巻末解説で増子真二、宇田川岳夫、石井聰互、米沢嘉博と初期Quick Japan読者には嬉しい面々が参加しています。
特に石井聰亙(現・石井岳龍)監督は私も風忍先生に出会うよりずっと前から大好きだった映画監督ですが、実は音楽活動も行っていてボーカルとして『石井聰亙&バチラス・アーミー・プロジェクト』というバンドを率いていました。で、あのサイバーパンク映画「アジアの逆襲」では音楽も担当して同名アルバムもリリースしたのですが、そのジャケを描いているのが風忍先生ですよ。
Bacillus-army-project.jpg

あと、1990年代の半ばに角川ホラー文庫より出ていた『ホラーコミック傑作選』のHOLYシリーズ。
あの第2集はやけにマニアックな作品が集められていて、風忍先生の1986年から翌年までに描いて単行本未収録だった作品が「死霊の涙」「神秘鏡」「殺人鬼には死を」「エンゼルの瞳」と、4編も収録されていて嬉しかったのが思い起こされます。まぁ、大方の読者は一人だけわけわからない漫画を描いていると思っただけかもしれませんが…その中の一部、不特定少数でもこういったカルト漫画に目覚めてくれたら嬉しいですよね。


その時 ぼくの 潜在意識 を通して その言葉 が突然 口から とび出し て来た それは ……

進化だ!



スポンサーサイト
  1. 2015/12/10(木) 23:00:00|
  2. 劇画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<劇画(186) H・P・ラブクラフト 1 松本千秋 1 岡本蘭子 1 「ラヴクラフトの幻想怪奇館」 | ホーム | 劇画(184) 風忍 1 「地上最強の男 竜」>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://mangabruce.blog107.fc2.com/tb.php/1441-d0c4269d
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

BRUCE

Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する