大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(187) H・P・ラブクラフト 2 田邊剛 1 「アウトサイダー 」

H・P・ラブクラフトのコミカライズ作品で続けますが、今夜は田邊剛先生の「アウトサイダー 」(エンターブレイン刊)。
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田邊剛先生は1975年生まれで、2003年にアフターヌーンの四季賞を受賞した「砂吉」でデビューの実力者。
本作はラヴクラフトが1921年に書いた小説「アウトサイダー」(The Outsider)を漫画にしたのを表題作にした2007年の作品集ですが、これが田邊剛先生にとって初の単行本。ラヴクラフトも、商業刊行物としては初めて上梓した作品集がこの「アウトサイダー」(The Outsider)を表題作にした『The Outsider and others』でした。ラヴクラフトの場合は生前に名声を得る事は無かったので、本人の死後に『クトゥルフ神話』の立役者であるオーガスト・ダーレスが"アーカムハウス"というラヴクラフトが創造した架空の都市にちなんだ名称の出版社まで立ち上げて出版したものですけどね。

帯を見ればお分かりの通り、あの松本大洋先生が絶賛している田邊剛先生の作品集。
トップの「アウトサイダー」は原作をほとんどいじらず正攻法で忠実に漫画化していますが、画力が高く画風もストーリーと合っているので、違和感なく読者を作品に引き込んで読ませます。本当、今まで読んできたラヴクラフトのコミカライズ作品で、これが一番上手いかもしれません。
田邊剛先生はホラー物を描きたいと思って色々な恐怖小説を読んでいたらたまたま出会ったのがラヴクラフトだったそうですが、その後は特別に思い入れてもいるのでしょう。この画力がさらに発展して、後に難易度が高いラヴクラフトが創造したオリジナルの神々が登場する作品にも挑戦していく事になります。それらも昨年から今年にかけて発売された単行本「魔犬 ラヴクラフト傑作集」「異世界の色彩 ラヴクラフト傑作集」で読む事が出来ますよ。もちろん凄い傑作!

続いても小説原作モノで、ロシア文学が続きます。
アントン・チェーホフの「中二階のある家」、そしてマクシム・ゴーリキー「二十六人の男と一人の少女」ですね。古典的な純文学、それも社会主義リアリズム作家の作品なんかは漫画にするには娯楽性の部分で厳しいかとお思いでしょうが、これが全く退屈させずに読めて面白く、しかも原作の思想を損なわずに上手く漫画にしていると思います。デビュー直後と言える時期に描いた作品でこれだから、いやー凄い漫画家です。

そして後半はオリジナル作品で、『呪画』の連作シリーズ5編。
それぞれ「呪画」「續呪画」「呪画之参」「呪画之四」「呪画之伍」とタイトルが付いていて、人が人を喰い、生首が転がる1話目の表紙がいきなりヤバい。
江戸時代中期の日本を舞台にした時代劇ホラー漫画で、主人公の幻象義梵は僧にして絵師。墨が溢れる巨大な筆で呪画を書くと、その中に取り憑いた魔を封じ込めて人を救う話。この名前からして、同じく江戸時代の僧で絵師の仙厓義梵がモデルなんですかね。絵のスタンスや作風はあまりにもかけ離れていますが。

凄い絵の上手さと個性を持つこの漫画家・田邊剛先生。オリジナル作品も描けるのに、後にまたH・P・ラブクラフト作品を描いてくれている事に喜びを感じ、感謝の念でいっぱいです。


おれはどうして ここへ戻ってきたのか…
この場所を あれほど嫌悪していたのに…
だが…ここより他に おれは何処へ行けばいいというのだ?



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  1. 2015/12/20(日) 23:00:31|
  2. 劇画
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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