大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

手塚治虫(53) 「サンダーマスク」

手塚治虫作品より、「サンダーマスク」(秋田書店刊)。
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初出は1972年から翌年の週刊少年サンデー(小学館刊)で、単行本は全1巻。
単行本はこのサンデーコミックスの他にも出ていますが、秋田文庫版では我らが大槻ケンヂさまが解説を担当しています。
TVで同時期に放映されたオリジナルの特撮ヒーロー番組があったのですが、本作はそのコミカライズとして手塚治虫先生が描いていたのです。自作がアニメ化された事は数え切れないほどありますが、TV版を原作にしての漫画担当というのはかなりレアな事。とはいえ漫画の神様のプライドゆえか、内容はTV版とはかけ離れた物になっているようです。TV版は私が生まれる前の作品であり、ソフト化も再放送も全くされない封印作品なので確認する術はありませんが…主要キャラのネーミングとサンダーマスクのデザインは一応同じみたいですね。

本作は主要登場人物として人気漫画家・手塚治虫がいる事が嬉しい。そりゃ手塚作品は自作に作者がよく出てきますが、ここではチョイ役じゃないし最初から最後までずっと登場し続けの準主役です。この設定時点で手塚ファンにとって嬉しい作品となっています。

197X年の名古屋青少年ホールで開催されていた日本SF大会の帰り道に、手塚先生がキングコングのような巨大な猿に襲われるプロローグで幕を開けます。
その時に世話してくれた少年が主人公の命光一。再び現れた巨大猿を、自身も巨大な謎の生物と化して始末しました!
ちなみにこのサルは"犬山モンキー・センター"から逃げ出した奴が巨大化したものですが、愛知県犬山市には"日本モンキーセンター"という施設が実在するようです。

この命光一は、本名が飯田光一。
工場地帯に住んでいたために公害で胸を病んで死期が近づいた少年で、ヤケになって『命売ります』というプラカードを持って街を歩く…この行為は三島由紀夫の小説「命売ります」が元ネタだと思います。で、その命を一千万円で買ったのは高瀬博士
博士は地球(岐阜県の養老山)に落下してきた宇宙生物を発見して自分の研究所に保存しているのですが、そいつはガス状の生物で肉体が無い。そこで命光一の体を貸して欲しいというわけです。その生物こそはサンダー。それから光一の体を使って活動出来るようになるのですが、博士に
『十分たってその肉体から出なければ きみの分子と地球人の肉体の組織が拒否反応をおこして爆発する』
と釘を刺されており、「ウルトラマン」と同じく時間制限の弱点が設けられています。
またサンダーが命光一の肉体を借りて実体化すると鱗と羽毛に覆われた姿になるのですが、それが『ちょっとおっかなくて…あのかっこうじゃ人に見せられないよ』というわけでタダでマスクとコスチュームをデザインしてくれたのは手塚先生自身!
それを着用すると、サンダーがスーパーヒーローのサンダーマスクになるわけです。

ヒーローには当然敵対する悪者の怪人がいなくてはなりませんが、それが本作ではデカンダー
サンダーもデカンダーも1万年かけて地球に着た地球外の宇宙生命で、それ同士が地球で戦いを繰り広げる事となるのです。デカンダーもサンダーと同様に気体生物なので他の生物の体に宿らなければ活動出来ず、冒頭のサルだったりそこら辺のクモだったりの体を使って巨大化しているのですね。

さてさて、本作にもヒロインが存在するのですが…それが高瀬博士の娘・まゆみ
横浜のミッションスクールに通う美少女で、初登場時がオールヌード姿と、読者サービスしています。ヌードになっていた理由は本人も全然思い出せないという事ですぐにネタバレしているようなものですが、そうです悪玉のデカンダー側が自分に合った体として探し当てた少女だったのです。
つまりヒーロー(命光一)とヒロイン(高瀬まゆみ)の惹かれ合っていく二人が、サンダーVSデカンダーの戦いに体を貸していて、憑依されている間の意識は無いので本人達も知らぬ間に対決しているという悲しい物語。しかもこの敵対関係はどちらかが倒されるまで続く…

わりとヒーロー物の定石通りの展開ではありますが、これを初めて読んだ若き日に驚いたのがデカンダーが珪素型生命体であるという設定。この宇宙には、その珪素型生命体と炭素型生命体の2種類があるそうなんですね。我々地球の生物は後者で、本作の悪者・デカンダーは地球人より強いとかでかいだけの話ではなく、そもそも生物の型が違うという。
だから『炭素型生物なんてケシズミになってしまえ』とか言うし、『人間なんて』ではなくもっと大きいくくりで別種の生命体による侵略を描いているのです。

よってデカンダーの地球に対するあいさつは、こうです…
『地球の全生命体よ きくがよい!われはデカンダー!!
 われは宇宙の果てしなきかなたからただよいつづけ この星へたどりついたのだ
 この地球という星を わがすみかにきめた!
 わが身は珪石(シリコン)より生まれた! われはフッ素を吸いメタンを飲みアンモニアを食らうのだ
 酸素を吸い水を飲み有機物を食らう 地球の生物よ!
 なんじらは かわるべし!』

そう宣言されて、地球の生物が人間だけでなく虫や植物までもデカンダーと同じ石みたいな生物に変えられていく!!
生物が珪素生命体か炭素型生命体かなんて考えた事も無かったし、前述の通りサンダーは気体(ガス状宇宙生命体)ですが炭素生物側。何か…この設定には度肝を抜かれた覚えがあるなぁ。

悪魔崇拝的にデカンダーを崇める怪しいミッションスクールの存在とか、ある黒幕の存在、手塚先生が大宇宙の歴史を書いた文字盤・バイブル(まぁ、映画「2001年宇宙の旅」のモノリスですな)からある謎を解明し…と、ラストまで凄い勢いで展開していきます。このスピードは明らかに打ち切り指示による連載終了の時に見られるそれですが、きっちり決着を着けています。それからヒロインのまゆみの体に起こるあるオチも、これは見様によっては秀逸なのか。

手塚治虫史に詳しい方ならすぐ分かった通り、本作が描かれたのは絶不調期。しかも落ちぶれた身だから受けたのであろうTV番組が原作の仕事…手塚先生が何を思ってこのSFヒーロー漫画を描いたのか、作品の端々から想像するのも楽しいですね。
長い不調期の作品だってやはり天才の描く物なので、どこか他の漫画家にはない面白さがあって私はどれもけっこう好き。もちろん翌年には「ブラック・ジャック」で起死回生のヒットを飛ばすのだから、安心してください。


夜の名神高速道路は事故が多いってえから心配だな
だいいち ぼくは無免許運転なのだ



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  1. 2016/05/20(金) 23:00:52|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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