大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

梶原一騎(69) 中野善雄 1 「人間兇器」 1

今夜は梶原一騎原作、中野善雄劇画による「人間兇器」(日本文芸社刊)。
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本作の作画担当、中野善雄先生もこのブログで紹介するのは初めてでしたが、まぁ正直あまり知りません。この「人間兇器」だけで強烈な印象を残してはいますが…あと読んだのは、梶原先生の実弟である真樹日佐夫先生を原作とした「女子レスラー炎の身上書」くらいかな。
「人間兇器」の初出は1979年から1985年の週刊漫画ゴラクと長期連載ですが、途中で原作者の暴力事件を原因とする逮捕、そして闘病も重なり一年半ほど休載しています。それでもとにかく完結して、単行本はゴラクコミックスで全23巻。

単行本の巻数で見ると「空手バカ一代」に次いで2番目に長い作品でしょうか。
その長さのほとんどをレイプ、浣腸、拷問に費やし…と書くと大げさかもしれませんが、とにかくそれらが繰り返し繰り返し描かれる不道徳な作品なので、好みは分かれると思います。私はまぁ、笑ってしまいながらも大好きですね。
完全に漫画ゴラク読者のオヤジ達に合わせたお下劣な内容ながら、やはり凡百のセックス&バイオレンス作品とは違う、梶原節なセリフ回しの良さも光ります。

主人公は美影義人。後に世界を股にかけて暴れ回るこの作品の主人公も登場時は中学生、舞台も日本の横浜で時は昭和30年。
本作のスタート以前にも問題児すぎて中学校をたらいまわしにされているらしい美影ですが、また教師を汲み取り式便所に叩き込み、告げ口(チツクリ)した女生徒のスカートを剥いてを教壇の上で尻叩きのお仕置き、学校を飛び出して伊勢佐木町での窃盗から追いかけてきたアメリカ兵士の黒人をドブ川へ叩き込む。警察に捕まるも取り調べの警官をぶちのめしたりと、ヤバすぎます。この導入部分で読者に知らせたい事は、この作品の主人公は常識外れのワル、そして正義の味方(ここでは「黄金バット」の名が繰り返されます)がヘド吐くほど嫌いという事。
家族構成も出てきますが、座布団売春している飲み屋を経営する母親(売春場所は2階にある美影の部屋)、それと3年前に麻薬がらみのイザコザで殺された男が父親。こんな環境なので美影はまるで家族に執着がなく、ここで少年院送りになりますが出た後もこの母親は話題にすら出てこない…と言いたいところですが、実は2巻でと後の話になりますが、炎熱と煙地獄に燻された時に回想だけながら母の面影がよぎっています。
そこまではまだ、世間なりに親子の愛情が残っていたという表現でしょうか。その後もロッキー山脈でグリズリーに食われかけた時とか、やはり回想で1コマだけ出たりもあったのですが、話題にも出ないままどんどん忘れていった感じでした。

美影はまず神奈川少年鑑別所に送られますが、ここでも暴れて部屋の主をぶちのめしています。そしてもう一つ重要なのは身体検査のシーンか。少年達の裸を点検し続けている係のおじさんが大げさに魂消ていますが、そうです美影は人並み外れてあれが『でかい』のです。
この時はただのケンカの天才だった美影は後に出会う空手で鍛えていくのですが、それは男用の兇器。こちら生まれ持った『股座の凶器』では女達を操る事になります。ちなみに中一の時に初テスト済みだそうです。

鑑別所の次は横浜家庭裁判所で判決が下り、武蔵野特等少年院に送致される事となりますが、この裁判官が『心を入れ替え更正の日々を送りなさい』とか言ってるのに切れて、何と裁判所内で裁判官席に突入して、
『かるがるしく吐かすなあ!!
 これから家に帰っておまんま食って かあちゃんとオ××コして寝る野郎がよ!』

と言いながら裁判官を蹴り上げるのだから、もう気持ち良いほどの凶暴性。

こんな美影が、さすがにレベルの違うワルが集まる特等少年院ではおとなしくなるか!?
確かに最初は剣持浩介という男、シャバでは右翼テロ少年の政治犯で殺しをやってのけてる大物が登場して美影もぶちのめされ、梶原原作の少年院ネタでおなじみの『ねじりんぼう』と『パラシュート部隊』(本作での呼称は単にパラシュート)を喰らい…
完膚なきまでにやられた美影ですが、これで骨抜きにされるようなタマではありません。気を失いそうになりながらこの中で自分の中の凶器を磨き抜く事を考え、
『生き地獄を住めば都に変えたとき……美影義人は本物の凶器になりおおせる!』
と誓うのだから、この挫けないメンタルの強さは見習いたいもの。
集団の力で体を土中に埋められて頭から小便かけられる屈辱にも、『これも凶器の鍛えられる過程』と耐える。

しかし美影は特等少年院五百名のボスとして君臨する剣持に、隙を見つける…
それは剣持が女神のように大事にしている美しい姉。美影は逆転のチャンスとみて弟の面会に来た姉を豚小屋でレイプ!その処女を奪って写真まで撮りまくるのだから酷いけど、こんな男が今作の主人公なのだからしょうがない。
そのフィルムを種に剣持をぶちのめし、下克上するのです。少年院で出会う憎い奴なんだから、本作ではこの剣持浩介が「あしたのジョー」における力石徹のようなライバルなのかと思いきや、あっさり作品から退場。
それから不平分子を粛清していった美影が特少のボスとなって特権を手にするのですが、その特権として作業さぼりやメシ食い放題なんてのはともかく、『美少年との男色行為』もあるのが凄い。
そんな環境を楽しみながらも一人で図書館に入り浸って六法全書を読み込んだりしていて、持ち前のIQの高さに加えて勉強した事も己の凶器として役立てるべく学んでいく。

そして特等少年院を出所。
まずは"ピンクサロン美麗"でバーテンを始めますが、美影義人がまっとうに働くタマじゃないのはご存知の通り。店のナンバーワンであるルナを犯すと、股座の凶器の力で女をメロメロにして貢がせ始めるのです。しかも美影が指定する金持ち客と売春させ、また同じ手口で店の他の女にも貢がせて。
そんな股座の凶器ばかりを活かした生活をしながらも、『頭(ヘッド)も肉体(ボディ)もとぎすまさんことには天下一の凶器にのしあがれずさびついちまう』という事で出会ったのが、"日本空手道 空心会"
そしてその総師・・・・大元烈山!!この国内に数十、海外に数百の支部を有する巨大カラテシンジケートの首領はかつて数百人のレスラーやボクサーとも戦って全勝し、牛や熊とまで戦ったという"神の手(ゴッドハンド)"の持ち主。ええ、もちろん大山倍達がモデルである事は言うまでもない人物ですね。

大元烈山館長に見込まれ、茶帯まで昇級した美影は、街のチンピラ3人をあっさりぶちのめした後で改めて空手の力を痛感しますが、その場に現れた暴力団の用心棒は、総髪で長身の空手家・桔梗十八郎
美影はあっさりのされてしまいますが、後で知る所によればこの桔梗、かつて空心会で本部師範代まで上りつめた天才でしたが、その空手は鹿児島で流派を開いている"旭掌拳"のために学んでいた事がばれて破門となった男。まだやっと茶帯の美影がかなうわけもない相手でした。
美影はいつの日か桔梗をブッ倒す事を誓ってますます空手修行に打ち込むのですが…
剣持浩介なんかと違って、桔梗十八郎はこの後本作で全編通して登場する事になる重要人物。そもそも桔梗が旭掌拳のためにスパイみたいなマネしたのは、その旭掌拳当主・朝日奈薫子を慕っているがための事。この薫子は古代・琉球拳法の流れをひく旭掌拳の当主だけに女だてらに達人、しかも美女ですが、ある理由から盲人となっています。その性格はもう、聖女のようと言うしかありません。

美影義人は股座の凶器の力で支配している女たちがいましたが、ルナは暴力団たちによって逆さ吊りにされて(出た!)、その状態でパンティを取られると…力のある暴力団側について他の女達と共謀して美影を裏切り、今まで稼がされた金を持って去りました。
そしてボロボロになった美影ですが、これで目の色が"無"になって空手道の入口に立ったと評価され、大元館長自ら熱心に教えてくれる光栄にあずかって鍛えられ、初段を許され黒帯を得ると新設された鹿児島支部に送られます。
この鹿児島県は都道府県で唯一空心会の支部がなかった土地で、桔梗十八郎が率いる旭掌拳の縄張り。当然対立する事となり、とてもかなわぬ桔梗に追われて山中に逃げ込みますが、そこにハイキングに来ていた女子5人を人質に取り、裸に剥いて四つん這いにさせたりと非道の限りを尽くし…でもついに桔梗の手に落ちて殺されかけると、そこに大元館長が登場してかつての弟子・桔梗を倒したため美影は助かり、同時に空心会は鹿児島を獲るのでした。

ここまででまだ2巻。
しかし普通、漫画の主人公というのは自分より強い敵に立ち向かっていき、いつかは乗り越えるというのが定跡じゃないですか。自分の命を顧みずに強敵に挑んで…ねぇ。
でも現実ではそんな奴はバカで早死にする結果になるだろうし、本編の主人公はとにかく弱者には強い!こんなの通常の格闘漫画のルールから外れまくりだし、とても「あしたのジョー」と同じ作者が書いた物語だとは思えないでしょうが、、ある意味で目からウロコな作品。
また次回よりこの続きを見ていきましょう。


女どもよ こっちからサラバ……
この地獄の底の充実感に比べては
おまえらと粘膜こすり合わせる陶酔なんざ 浅い 浅い



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  1. 2016/10/10(月) 23:59:42|
  2. 梶原一騎
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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