大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

藤子不二雄(80) 吉田忠 1 「藤子不二雄物語 ハムサラダくん」

今夜は吉田忠作品、「藤子不二雄物語 ハムサラダくん」(小学館刊)です。
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前回まで「ココ」「ココ」で、大好きな藤子不二雄先生の自伝的漫画「まんが道」を紹介しているので、次は当然これになるでしょう。
『藤子不二雄物語』を銘打っている作品なので、タイトル通りだとすれば藤子不二雄Ⓐ先生の目線以外から偉大な2人の人生を追う事が出来るわけですね。
作者の吉田忠先生...ヨシダ忠名義で児童向け漫画を数多く描いている方ですが、1944年の福岡県生まれで、何と藤子スタジオのアシスタント第一号でもあった人物という事で、この作品を描くにはふさわしいですね。アシスタントを辞めた後も藤子不二雄関連作品はけっこう描いていて、私も「ドラえもん全百科」等のドラ物くらいは買っていました。

初出の連載は月刊コロコロコミック(小学館刊)で、1977年の創刊号から1980年まで。
という事は連載開始時は藤子不二雄Ⓐ先生の自伝作品である「まんが道」のあすなろ編(少年チャンピオン版)が終わっていた時ではありますが、すぐに立志編(少年キング版)が追いかけて始まってしまっていますね。つまりご本人が描く藤子不二雄物語と同時に連載していた事になります。
もちろん藤子不二雄の2人以外の目線からなる『まんが道』にも、ファンなら興味がないはずがありません。むしろもっともっと色々な方々が藤子不二雄物語を描くべきだ!
単行本は、てんとう虫コミックスで全2巻。まだ連載途中の部分までしか収録されておらず、『第3巻につづく』と書かれているのに続巻が出なかった残念なパターンです。しかもある採用試験に作品を持ち込みした、いい所で切られて...

こちらはてんとう虫コミックスの裏ジャケ。同じ漫画家のライバルの影に追われていたり、2人の生み出したキャラクター達が銀河を渡っていたり。
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そんな尻切れのままだった「藤子不二雄物語 ハムサラダくん」の完全版(マガジン・ファイブ刊)が出たのは、てんとう虫コミックスの2巻が出てから何と27年後の2007年!今度も上下巻で同じ全2巻ですが、本の厚さは倍くらいになっています。
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この時は嬉しかったですよ...本作連載開始年に生まれた私はコロコロで描いてた時にはちょいと間に合わず、ハムサラダくん好きを公言しながらも旧・単行本収録文までしか読めていなかった私にとって正に幻の回が、最後までたっぷり読めたのですから。
しかも嬉しい事に、連載終了後の1981年と1982年に読みきりで描かれた『特別編』の2話も収録されているのですから!巻末にはヨシダ忠・ロングインタビュー&作品リストも載っています。
今度の裏ジャケ、上巻は旧1巻と同様に藤子キャラ達が銀河のやつが使われていて、
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下巻は、あの漫画の神様を背景にハムサラダくん達...って上巻の表紙とほとんど同じだ。
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さらにさらに!2010年3月には松文館からも全1巻の形で『豪華ワイド愛蔵版』として再復刻されました。
小学館から刊行していた藤子・F・大全集と判型はもちろん、装丁を表紙・裏表紙・背表紙の全てを模して出てきたこれの売りといえばマガジン・ファイブ版では原稿紛失していたため初出雑誌から複写していた特別編が、後に発見された原稿からちゃんと印刷出来ている事か。さすがにもうマガジン・ファイブ版が出た時のようなインパクトはありませんね。
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そんなわけで「藤子不二雄物語 ハムサラダくん」
内容を見てみると、主人公はもちろん2人の藤子不二雄。『こちらが藤本弘 そんでもってこちらが安孫子素雄』と、いきなり「まんが道」では出なかった本名での登場!
『偉大なまんが家 藤子不二雄とてきみたちと同じ ごはんも食べればトイレにだって行く。
 ……だが、今のようになるには きみたちとちがう何かがあったはずである………。』

として、すぐに少年時代の回想シーンに入ります。

やはりスタートは2人の藤子不二雄の出会いから、というわけで藤子不二雄Ⓐ(安孫子素雄)先生が富山県高岡市の藤子・F・不二雄(藤本弘)先生がいるクラスに転校してくる所です。
安孫子、藤本の本名が使われたのはほとんど連載開始当初だけで、すぐに安孫子は野菜好きなのでサラダくん、逆に藤本はハムとか肉ならいくらでも食っちゃうというわけでハムくんとあだ名も決まり、2人合わせてハムサラダくんになるのです!(その後は実の親までハムくん・サラダくんと普通にあだ名で呼んでいます)

それから2人は一緒に漫画家を目指し、オリジナル雑誌のマンガ少年を創刊したり、手塚治虫先生の「新宝島」で衝撃を受けたり手塚先生にファンレターを書いたり、毎日小学生新聞に自分達の作品「天使の玉ちゃん」が掲載されてデビュー作になったり...といった「まんが道」と同じ話が出るのですが、これは単純に同作を原作に使っているからというだけ。
それも別人からの視点で見れる良さはあるのですが、せっかく作者はアシスタント出身というのに「まんが道」で描かれなかった知られざるエピソードなんてのはほぼ無し。というか復刻単行本の巻末インタビューで、藤子不二雄先生に取材すらしていない事を告白しています。
そんなだからか、すぐに『藤子不二雄物語』だなんて言えないフィクションに作り替えてしまうのです。

そうだ、待ちに待った憧れの手塚先生からのハガキが届いた時は、ハムくんの母親がエプロン姿のまま走ってきて、授業中のクラスまで飛びこんでくるのですが、この話はこの後のゴリラ先生の対応も含めて感動エピソードでした。
それから兵庫県の宝塚にある手塚治虫先生の自宅を訪ね、仕事中の姿を見ると目の中に炎をメラメラと燃やしているのですが、この表現は「巨人の星」から来てますね。実際に吉田忠先生は梶原一騎ファンであった事もインタビューで告白しています。

はい手塚先生宅の訪問。ここまでで、これ以前に出ていた「まんが道」のあすなろ編に追いついてしまいましたね。あすなろ編は、すでにブラックな味わいの作品を描き始めていた藤子不二雄Ⓐ先生のクセが出ていてむしろ暗い絵柄だったのを、幼年向けなので絵を圧倒的に可愛いくして明るくテンション高く描き直した、といったのがこれまでの「藤子不二雄物語 ハムサラダくん」でしたが...
作者に取材せず「まんが道」を原作にしていたのだから、まだあすなろ編までしかなかった当時は続きを描けない!そこであとはオリジナル・ストーリーですよ。状況して墨田区三丁目の○○荘に住んだハムサラダくんを、梶原ファンなりのスポ根要素が襲います。メチャクチャ厳しい編集者と渡り合い、ハムくんが病気で血を吐いても原稿に付いた血をホワイトで修正して漫画を描き続けたり、またハムくんですが右手に釘が刺さった時だって血まみれで執筆を続けました。

『藤子不二雄物語』ならば、漫画家仲間たちも大事でしょう。
1番最初に登場した重要人物はジャンボ漫作こと細井万作。こいつは石森(石ノ森)章太郎先生がモデルかな。全然似てないけど、白雪姫のような美少女の姉(細井幸香)がいて、しかも亡くなるし...ちなみに彼女をジャンボ漫作の恋人と誤解した2人は、
『恋人がなんだ!恋人が!!』
『ぼくらの恋人は まんがだけじゃ!!』

と開き直ってました。

他に、ギャグ漫画の名手である風車かん平は、順当に考えれば赤塚不二夫先生がモデルでしょうか。 他に畑大輔...あれ、幅広い才能を持ちギャグ物SF物少女物と、次々に発表しているって、こいつも石森先生がモデル?
そしてアメリカ帰りのミスター竜こと福富竜太郎。こいつは誰がモデルかまるで分からない...いやそりゃそうだ、インタビューで勝手に作ったキャラだと告白していました。
あとは細井みち雄、春丘ゆり、ミッキー絵川といった漫画家たちが登場します。主役の2人が本名で出てくるのに、他は手塚先生以外は実名無しと、「まんが道」の逆パターンでした。

『がははは、なやみがふっとんだら、えらく快調だ!!』と言いながら描きまくるシーンは印象深い!このキャラで笑い声が『がははは』はないでしょう。
復刻版が出てついに読めた最終回は、ハムくん・サラダくんの母親が絡んだ感動エピソードでした。共に町内の団体旅行で伊豆へ行くので、上野駅で息子の元気な顔を見たいという手紙が来たのですが、漫画の仕事が迫っていて行けない。しかも編集長の命令で旅館にかんずめにされて描きまくる事になるのですが、実はその旅館はハムサラダくん達のお母さん達が乗る列車が窓のそばを通過する線路沿いの立地なのでした。
旅館の窓と列車の窓で、ハムサラダくん達は『日本一の漫画家になります』という横断幕をかかげて大粒の涙を流しながら手を振り、お母さん達は『ハム~~。』『サラダや~~。』と、やはりあだ名で息子達を呼びながら手を振る。短時間ながらの母子の再会で、物語は幕を〆るのでした。

既に書いたように連載終了後に描かれた読みきり『特別編』も2話が存在します。
最初のは、もう売れっ子漫画家になったハムサラダ先生の元に押し売り弟子が来る話。サラダくんは坊主にメガネで風貌同じですが、ハムくんの方は後のトレードマークであるベレー帽をかぶっていますね。
最後に小学館漫画賞に新設された児童部門で、記念すべき第1回に審査委員全員一致で受賞するまでに出世した藤子不二雄(ハムサラダ)先生が、過去のあるシーンを回想する話でした。
物凄い激情型になっていてやたらと大粒の涙を流しまくる、もう一つのまんが道!「藤子不二雄物語 ハムサラダくん」...これも読むべきです!!
(作中何度も2人が力を合わせれば...という描写が出てくるのですが、1987年のコンビ解消は吉田忠先生もショックだったでしょうね)


先生たちは まんがなんてと思うかもしれません、……でも。 でも ぼくにとっては!!
まんがは生きがいなんです。だれでも何かに挑戦するように、
ぼくは まんが家に挑戦したいんだ!! それがなぜ いけないんです!!
東京へ行って まんが家になるんです。



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  1. 2017/07/25(火) 23:59:35|
  2. 藤子不二雄
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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