大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(14) 大友克洋 1 「ショート・ピース」

short-peace.gif

大友克洋先生を紹介してないのでは、この名作漫画紹介のブログは片手落ちというものでしょう。
そんなわけでやっと登場した大友先生は、1954年生まれの宮城県出身。

宮城県出身で偉大な漫画家と言えば、すぐに石森章太郎先生と荒木飛呂彦先生を思い浮かべるでしょうが、特に石森先生とは出身の町まで同じで、同高校の卒業生です。
その高校の名は佐沼高校…凄い!

もしかすると漫画家としてより、アニメーション映画の監督としての方が一般には有名だったりするのでしょうか。
何しろあの、自らの漫画を映画化して世界中から絶賛された「AKIRA」の監督ですからね。
「AKIRA」は当時凄い衝撃的な作品でしたが、もちろんこのブログでは漫画の方を紹介していきます。

大友克洋先生が初めてアニメに関わったのは1983年「幻魔大戦」ですが、漫画家としてはその10年前、1973年にプロスペル・メリメ原作の「銃声」でデビューしています。
それから次々と発表されていった作品群は、絵がバカ上手い上に細部まで緻密だし、リアルだけど今までの劇画とは全く違う、まさに革新的なものでした。

日本のストーリー漫画は、革命とも言える手塚治虫先生の登場以来、何度か転機を迎えてますが、大友先生の登場も確実にその転機でした。
大友登場以前とか以後とか、よくそんな区切りをされるほどですから!
当然手塚治虫先生による嫉妬も並大抵では無かったようですし、その"大友登場以後"、どれだけ多くの亜流漫画家が現れたかはご存知の方も多いでしょう。

1982年から連載された漫画史上有数の名作「AKIRA」だとか、1983年の傑作「童夢」とかになると、フランスのバンド・デシネを日本漫画のペンで描いたようなと言いましょうか、とにかく一コマごとが"絵"であるわけです。
実際にバンド・デシネの巨匠・メビウスからの影響をよく指摘されてますね。

しかし今回偉大なる大友克洋先生の漫画作品の中からピックアップして紹介したいのは、1979年に処女短編集「ショート・ピース」です。
まだオシャレさは薄くて、泥臭い絵で学生の日常を描いたりしてた初期作品こそ、私の好きなものなのです。

これは奇想天外社から発行されていましたが、会社自体が潰れたために現在では双葉社から再刊されています。
後者はジャケも少し変更されて「夢の蒼穹」追加収録、その他にも修正されていますが(しかし"あとがき"が削られてる)、もちろん漫画コレクターならオリジナルの奇想天外社版で持ってなくてはなりませんね。
いや、好きなら両方持ってるのはもちろんですが。

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裏表紙にまで自らの優れたコラージュ・デザインを施したこの単行本。
収録されている短編を個別に見てみると、現在のイメージとは全く違って、まずSFが一本しかありません。
いきなり出てくる「宇宙パトロール・シゲマ」がそれですが、これはSFと言うよりナンセンス物とか、そっちの匂いが漂う作品です。
しかしこれが名作!代表作と言ってもいいでしょうか?

いかにも時間を持て余した駄目な若い男たち四人が、新年会で自分の秘密を語り合う事になる話です。
それぞれが、実は金星人、水星人、火星人なんだと順に告白していき、一人残った茂正は…何と"宇宙パトロール・シゲマ"であり、不良宇宙人達を捕らえるのが指名だと言う。
シゲマをバカにしながら皆で海に行き、本当に円盤を呼んで"力"を証明するのですが、結局『面白い新年会だったなぁ』と皆で笑って帰るだけの、そういうオチです。

他にも七話収録されていて、ブルー・フィルムを作ろうとする映研の高校生三人組の「任侠シネマクラブ」や、貧乏学生が大麻でこずかい稼ぎを企む「大麻境」、受験生がコジキに弟子入りする「WISKY-GO-GO」等、傑作が揃っているのですが、私が好きなのは単行本の後ろから数えて二つの話。

「NOTHING WILL BE AS IT WAS」は、あくまで明るくコミカルに殺人とカニバリズムを描いてますし、「犯す」は訛りの抜けない田舎者の工員が都会の女子高生を強姦しようとする話で、ラストが怖い…。

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初期作品は誰でも喜ぶエンターテイメント的な要素は薄いものの、少なくともこのズバ抜けた絵の上手さは誰が見ても明らかですので、そこだけでも楽しんでみてもらいたいですね。

余談ですが、その後出版される単行本のうち、「GOOD WEATHER」「ヘンゼルとグレーテル」「BOOGIE WOOGIE WALTZ」の三冊は有名なレア本でありますので、安く見つけた方は即買いですよ!

1996年に「SOS大東京探検隊」が出版されているのですが、大友克洋先生個人の単行本としては今の所これが最新になってしまうのですね。
もう10年経ってしまいましたよ!

10年空けばさすがに私も大友漫画熱は冷めてますが、やはり一時代を築いた大友先生です。
金と時間ばかりかけて「スチームボーイ」みたいなどうでもいいアニメを作るのなら、何故漫画に戻ってきてくれないのでしょう!?

もう「AKIRA」は作れないんだから…
しかしみんな大好きなアニメ映画「AKIRA」は本当に凄いし、幸運な事に正しい評価もされてますよね。
ミーは、おフランス帰りざーますので、実際にヨーロッパでも「AKIRA」人気の高さを実感してきました。
しかも私が滞在した時は既に製作年からもう10数年経っていたのにですよ!

日本人は、日本映画が海外で賞とか取るとすぐに"世界の○○"とか言って持ちあげたがるけど、黒澤明小津安二郎溝口健二、それにもちろん近年の監督なんて海外では一部の映画マニアしか知らないですよ。

しかし「AKIRA」は本当に有名でした。
私が付き合ってた人々が若者層だったというのも理由の一つでしょうけどね。
それでも一般の知名度で言ったら「ドラゴンボール」のように、TV放送を続けていたアニメの方が上でしょうが、やはり尊敬のされ方は違います。

それだけ「AKIRA」だけは良かった…
いろんな分野に才能があるというのもいい事でしょうが、近年のアニメ制作での失敗から、また大友克洋先生にはペンを取って欲しいという願いと持って、今夜は終わりです。


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  1. 2006/10/09(月) 00:11:33|
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コメント

まさにおっしゃるとおり!

ところで、「GOOD WEATHER」を持っていません
早く探さないと

大友先生には、また誌上で活躍していただきたいものですね

  1. 2012/04/23(月) 23:56:12 |
  2. URL |
  3. nakagomiobuhin #fUnmc6zQ
  4. [ 編集]

コメントありがとうございます。

>nakagomiobuhinさま

物凄く前に書いた所を読まれてしまって恥ずかしいですが(笑)、ありがとうございます。現在ちょうど『大友克洋GENGA展』を開催していて話題になっていますね。
もちろん「GOOD WEATHER」持ってますよ!もう一つレアな「BOOGIE WOOGIE WALTZ」も。再発されないこれらは、大友先生自身が気に入らない作品なんでしょうかね。
  1. 2012/04/24(火) 09:09:03 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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