大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

月刊漫画ガロ(2) 山田花子 1

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明日、5月24日は漫画家・山田花子の命日であります。
個人的な思い入れはとても深い漫画家であり、だから思い出すと悲しくなる日なのです。

そんなわけで、ガロ系と呼ばれる漫画家の特集一人目は、山田花子先生です。
簡単にですが、プロフィールから紹介しましょう。

何度かペンネームを変えている山田花子は本名・高市由美で、昭和42年6月10日生まれの東京育ち。
内気で漫画を描くのと読むのが好きな少女だったようで、中学時代にいじめに遭ってリストカットを繰り返す。ガス自殺を図って救急車に助けられた事もあります。

漫画家デビューは1982年。
15歳と、早咲きのメジャー誌デビューを飾ったわけですが、学校で持て人気者になったという事は無かったようですね。
その時期に全くなじめない学校への登校拒否もしてます。

デビューしたとは言っても、後に激しく憧れる事になる月刊漫画ガロで描くようになるのはまだ先の話。
ではどこでデビューしたのかと言えば、なかよしデラックス(講談社刊)です。

最初のペンネームは裏町かもめで、短編を二作載せた後に初連載「人間シンボーだ」を開始し、連載中にペンネームを山田ゆう子に変えてます(近くなってきた!)。

私生活では高校中退→通信講座を受講しながらバイトと、絵本学校にも通います。
根本敬にファンレターを出し、交流を持てた事をきっかけに、いよいよガロへの投稿を開始、しかしここではボツ続き。

ガロは難しいと見たか、ヤングマガジンへの投稿を始めたら、何とちばてつや賞(おおっ!「あしたのジョー」ちば先生!!)に佳作入選し、しかもここで!
ついに山田花子の名前を使ってます。
そしてそのヤングマガジン誌上にて、名作「神の悪フザケ」連載開始!

さらに自作の歌とキーボードで自主制作テープを作ったり、妹との二人バンドグラジオラスで一度だけライヴをやったり…いい感じの時期だったのですね。
(※山田花子名義以前の漫画作品と、ライヴと宅録の音源は、限定BOX「魂のアソコ」(青林堂刊)で味わえますよ!)

1989年には初の単行本「神の悪フザケ」(講談社刊)を上梓し、さらに念願のガロで連載を始めます。
この連載を中心とした単行本はどれも素晴らしい。
自らの被いじめ経験、クラスの馬鹿観察、糞みたいな恋人や同僚、差別、偏見、疎外感…そういったネガティヴな感情や出来事をリアルに描く作風を完全に確立しています。
他の様々な雑誌でも漫画や、活字の仕事も発表できて順調、TVや映画へ出演なんていう仕事もありました。

しかし…1992年。
ついに精神が壊れてしまい、通院や入院。駅で警察に保護されたり。
そして運命の5月24日(退院の翌日)、マンションから飛び降り自殺

死んでしまいました。
作品はずっとファンに愛され続けてるけど、惜しい!そして悲しい・・・

それから彼女の幅広い趣味の面を見ると、当時のアンダーグラウンドな文化に詳しく、映画では悪趣味大王ジョン・ウォーターズから、ルイス・ブニュエル小津安二郎等のヨーロッパや日本映画の古典も好きだった。

音楽では戸川純を崇め、他にアングラなフォークや、ナゴム(有頂天のケラが作ったインディーレーベルで、大槻ケンヂ石野卓球もここ出身)だとかも真っ先に聴いてたようですね。

もちろん漫画も小説も大好きでしたが、彼女は古典や基本を愛する傾向があったようですね。
それでいてガロ系市場大介までもを読んでいた。

思春期に↑みたいな、一般の流行とは関係無い物を、自らの意思で探索しだすという事。
それは精神的に一歩進んだという事なのですが、世間からはのけ者にされるのですよね。
たとえサブカルチャー・シーンでは超王道の物でも、そんなのは世間の人に関係ありませんから。
当然オリンピックやスポーツの国際試合なんかには興味無かったはずですし。

山田花子は、その悔しさなんかも作品にしてたわけです。
それにしても多くの作品が、
『分かってる。分かってる事だけど、それは口に出して言わないでくれ!』
と頼みたくなるような事を、ずけずけと言ってくるのです。
この世の嫌な部分を見せられて、心が痛くなるのです。

苦悩する若者に読書を薦める時、
『若者よ、本を読め。しかし太宰はまだ読むなよ。死にたくなるから。』
などと半ばギャグで言われる事がありますが、山田花子の作品は太宰以上に嫌な気分になりますよ(笑)

吉本新喜劇の同名芸人は、彼女の漫画に傷付いたトラウマから、せめてその名を使って人を笑わせてやろうと、その芸名を付けたのでしょうか??
当然そんなのは単なる妄想でしょうが、あの人気者も、同名の漫画家がいたという事実くらいは知っていて欲しいものですね。

私の友人は、ネクラとかビョーキ、そんな言葉が流行った'80sという時代に青春時代を送ったのが彼女の不幸だ、と語ってましたが、この世界のどこからも受け入れられなかったからこそ、その悔しさを描き、それが支持されて完成した漫画家なのですよね・・・
"幸せ"になどなっていたら、漫画がつまらなくなっていたのかもしれません。なんと悲しい宿命でしょう。
何も好き好んでの事ではないでしょうが、まさに生まれてから死ぬまで少数派。
そしてその中でも、悲しい事に本当に信頼できる友達はついに出来なかったのかもしれないのです。

思春期特有とも言える人間関係の、悲痛な悩みを叫ぶ作風なだけに、悩める若者だけに訴える漫画なのかといえば、そうではありません。
山田が憧れ、目標にした月刊漫画ガロ
その初代編集長・長井勝一氏は、数々の天才漫画家を発掘した事でも有名ですが、晩年に漫画持ち込みに来た漫画家の卵達に、

『こういうのを読んでおきなさい』

と、山田花子漫画を渡していた時期があると聞いた事があります。
何十年も良質な漫画を読み続けてきたお爺ちゃんが、そこまで山田花子を評価してたという事実は、いちファンとして嬉しく思います。

私は彼女の著作とは、クソ高校時代に出会っていて忘れられないし、これからもたまには本を開くのだと思います。
当時新品で買って初版じゃ無かった本も古本屋で買いなおし、全て初版で持ってますよ。
出版社やジャケの装丁も変わって再発されたのも全部買ったし、ガロで通販専門販売した高価な限定商品や、一時期中野のマニアックなお店で売っていた、彼女の小学校時代からの宅録テープ「海と百合のアリア」、ポストカードセット「休みの国」まで持っている。
(自慢しちゃいました)

次は彼女の絵について。
初期はほとんどスクリーントーンなども使っておらず、見ずらい絵柄でしたが、後期はかなりすっきりしてます。
個性的ではあるし、時期によって変化が激しいから一概には言えないのですけど、絵の上手さだけを見たら標準レベルにも達していないかもしれません。
それがここまで訴えてくる作品なのだから、漫画において絵の上手さなんて重要じゃないな~、なんて思わされたりします。

長くなりましたが今夜の最後に、私が愛する作家・三島由紀夫先生の、切腹自殺の一年前に刊行された本より、"ほんとうの文学"についての言葉を引用しましょう。

『ほんとうの文学は、人間というものがいかにおそろしい宿命に満ちたものであるかを、何ら歯に衣着せずにズバズバと見せてくれる。』

『この人生には何もなく人間性の底には救いがたい悪がひそんでいることを教えてくれるのである。そして文学はよいものであればあるほど人間は救われないということを丹念にしつこく教えてくれるのである。』

と、書いていました。
作者の意志とは違うのかもしれませんが、これってそのまま、100%山田花子漫画の解説に使えると思いましたよ。

それでは、次回は彼女の作品をどれか一つ読んでみましょう。


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  1. 2006/05/23(火) 01:01:00|
  2. 月刊漫画ガロ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

すごいですね、「名作漫画ブルース」!
このときは山田花子でしたか。
マイナーな漫画家のプロフはネットで検索しても、なかなかこんなに詳しく勉強できないので、ありがたいです。
しかも読んでる漫画に対する、すごい愛情も感じます。
このブログで、BRUCEさんが今まで読んできた漫画のいい所を一気に勉強できる感じですね。
これからも応援してます。
  1. 2006/06/01(木) 10:28:46 |
  2. URL |
  3. ジャッキー #79D/WHSg
  4. [ 編集]

>ジャッキーさま
そ、そうなんですか!?
まだまだ私なんかも勉強不足でしょうから、物凄いマニアに読まれてバカにされてないか…なんて心配したりするのですが。
どうせならもっとちゃんと時間をかけてやりたいのですけど、ちょっとの時間の合間にやってる次第でして、ジャッキーさまのような方にそう言ってもらえて、とても励まされました。
またよろしくお願いします。
  1. 2006/06/04(日) 02:50:21 |
  2. URL |
  3. BRUCE #79D/WHSg
  4. [ 編集]

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Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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