
今回で劇画
「スパイダーマン」の紹介も最後です。
早速続きに行きますが・・・
第十話
「狂魔」は、何とこれで"くるま"と読み、自動車公害等の車社会へ向けた鉄槌を含めたエンターテイメント作品。
この話で特筆すべきは、何と言っても一話目から出ていたヒロイン・
白石ルミが死ぬ事でしょう。
チンピラ達に連れ込まれた車内にて"狂魔"に襲われ、そのくだらないチンピラ達共々世を去るのです。
ヒロインが最終回でもないのに普通に死ぬとは・・・いや、これがいいのでしょう。
ダラダラとヒロインが生き残ってるなんて、それではヒーローだって本当の怒りの復讐はできません。(そんなことないか)
第十一話
「スパイダーマンの影」。
ここでは大事故の後に血が足らず、死にかけている少年に
ユウが供血をして助ける所から始まります。
数の少ないAB型だったためにユウが助けてあげたのですね。
その助けられた少年・
北野光夫は、スパイダーマンの異常な活力に満ちた血液のおかげでかあっさり回復し、ユウを兄貴と慕うようになる。
彼は両親がいない貧乏人で、冷たい世間を見返してやるために持ち前の男前を利用してスケコマシをしてる不良な奴でしたが…
『何と!』というよりは『やはり』でしょうか、光夫はスパイダーマンの能力を見につけてしまいました!
それを利用して今度はビル荒らしの泥棒で稼ぎ、張り込まれた警備員達に捕まりそうな時は異常に痛めつけて逃げる残酷さ。
一人の警備員は両の目玉がドロッと落ちてます!
ユウが捕まえようとしたら口八丁でごまかし、さらに今度はスパイダーマンのコスチュームをユウから盗み出し、両親を死に追いやった企業に手ひどい復讐を開始する。
ところで、光夫には姉がいるのです。
ユウが何故光夫に強気に出れなかったかと言えばその姉・
雪子と恋に落ちそうだからで、ルミの次なる相手はこの人か…
そんな期待をしていたら、悪魔のような弟のせいで雪子はこのエピソードのうちに発狂してしまいます。
おいおい、超能力を手に入れた後もいい事無いし、なんて可哀想な主人公なんですか。
"スパイダー感覚"という、敵や危険を事前に察知する能力あるというのに、何か役に立ってないですし。
二人のスパイダーマンの戦いの最中、輸血の効力がきれ、スパイダー能力を使い果たした光夫が死んでこの話は終わりますが、ユウの方はくもにかまれた効力がきれる事はないのでしょうか?
第十二話
「狂気の夏」では、アメリカのキ○ガイ兵士が銃を撃ちまくり、ハイジャックまでしますが、ユウは生身の体に撃たれまくり、その弾をはね返してます。
そこまで頑丈な体なのか…放射能被爆グモの力で、もっと精神も強くなれたらよかったのに。
その兵士も実は休暇中の最後の日で、明日にはベトナム戦線に追いやられるし、暴れたのは平和な日本が我慢できなかったからだと理由を付けられ、ユウの同情買って終わり。
第十三話
「虎を飼う女」。最終話です。
芽が出かけていた新人歌手・
尾関ミキが、グループサウンズをやってた
モップスという三流グループのメンバー達に地方公演の旅館で乱暴され、あげく性病をうつされた。
モップス達は、移籍問題でもめていたミキに対して、ヤクザをかかえる芸能プロダクションの命令でやったのだそうで…
まずモップスのメンバー、続いてヤクザ、芸能プロの女社長と殺されていく。
どうやってかって??
虎の爪と牙に引き千切られてです。
それも現実の生身の虎より、もっともっとはるかに恐ろしい、見えない憎しみの虎によって。
乱暴されて以来ミキは、潜在意識で怨んでる相手を殺すための虎を出す、超能力者になってしまったのです。
ミキはヤクザに刺されて死にますが、
『このまま死んだほうがいい!』と泣いて、助けようとしないユウ。
代わりに最後の怨念の虎を心から応援して叫ぶ。
『ちくしょう!
弱者はいつだって強者によって ふみにじられ しいたげられ 殺されるんだ いつの時代だって!
弱者の怨念が牙をもち 爪をもち 虎と化したところで なにがわるいんだ。
虎よ暴れろ! 非道な強者どもを咬み殺せ!
弱者をむさぼり食らって こえふとった強者に 血の支払いをせまれ。
殺して殺しまくれーっ』と。
飛行機にまで行って復讐を果たした虎でしたが、ミキはほぼ死んでいるのに暴れて戻ってきた事から、このユウ自身の超能力で強大な力を与えた事に気付き、同時に
『すべての人間は 心に虎を飼っているのだった
そいつは人間の業そのものだったのだ』とも気付く。
この作品を締めくくる最後の最後のコマが、こっちを向いてる、口から血を垂らした虎の顔。そして…
『おれをみろ!
これが人間の真の素顔だ…
血まみれの凶獣 それはおまえ自身だ!』こう言って終わりです。
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こんな文でどれだけ伝わったかは分かりませんが、
平井和正先生の不遇の時代を表す叫びが満載の傑作でした。
どうも漫画史的には無視されてる所がありますが、アメコミが元だというのがマイナスになっているのでしょうかね。
もう一つ問題は、このスパイダーマンに戦う理由は無いという事でしょうか。
分かりやすい"悪の組織"みたいなのは登場しないし、むしろスパイダーマンである事を捨てれば悩みも解消されるのですから。
実際に中盤から後半の特に
平井原作の回では、スパイダーマンコスチュームの必要性も存在感もほとんどありません。
いつも変身したがらないのですし、でも一度捨てたコスチュームをまた作ったり…
こういった行動を見ても、分かりにくいけど思春期特有の、あのウジウジ悩んで焦ってばかりいる感情をうまく表現できたという事ではないでしょうか。
※最後に、他にも
すがやみつる先生他、数人の漫画家が
「スパイダーマン」の漫画化を実現させている事を報告しておきます。
(これらは本当にどれも普通の子供向け漫画ですが)
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- 2006/08/09(水) 23:11:39|
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