梶原一騎原作、
石井いさみ作画の
「ケンカの聖書(バイブル)」紹介も三回目の今夜で最後で、最終巻である五巻の部分ですね。
キラーキラーこと
吉良旭が、日本に一つしかないプロレス団体である
"日本プロレス協会"とそのボス・
力王山を倒すために設立した
"アジアプロレス協会"。
彼らがどう挑んでいくのかというと、まずアメリカから
はみだし悪魔部隊を呼びます。
彼らはみせかけの反則技の後に善玉レスラーにやられる、あのプロレス的な役ができずに本気で善玉を半殺しにしてしまうために本場のプロレス界からは使ってもらえなくなった連中。
彼らも女子プロレスのスターである
ダイアナ=ローザ、そして当作品のナレーションにして空手道場経営の
甲賀正清も、ビジネスとして吉良の企みに参加したわけですが…
吉良は一人、
『オレのほうの目的は金じゃねえ!
目的は…血だ!! 力王山の血よ!!
あのニセ英雄をてめえの流す血の海にごう沈させるこった!!』そう凄んでいます。
そのアジアプロレス協会の第一回目の興行は、目の前の場所で力王山達のイベントとぶつけられたりもしましたが、まずまずの客入り。
その選手控え室で吉良は、ある女性と
『運命的めぐりあいであった!!』と言われる出会いをします。
その女性とは興行を興した会場である日大講堂の掃除婦の女性であり、病弱な弟・
道夫を持つ
入江実花。
彼女は、ケンカの天才、キラーキラー ダブル殺し屋の吉良旭をつかまえて自分の弟と同じ弱さが見えるなどと言い放ちます。
彼女の瞳の色や言葉に翻弄されて悪魔の血を冷えさせてしまう弱さを見せた吉良でしたが、とにかく彼にしかできない秘儀、あごの関節を外す
ブラックジョーなどでアメリカのレスラーを倒して興行も成功。
ケンカやバカさわぎの後は独りになりたくなる吉良が"ポプラ"というスナックに入ってコーヒーを頼むと、運んできたのがまた入江実花ですよ。夜はここでバイトしてるそうで、またも偶然の出会いでした。
わけあって"明るい青春を"楽しむことが出来なかった二人。
ポプラを出た吉良は一人で落ち葉の舞い散る道を歩いていると、追ってきた実花とまた会話を交わし、何と彼女の一家も原爆の被爆者だと告白されます!
彼女らの場合は長崎の方の原爆をくらっていて、両親を失くした上に弟の道夫も原爆症なのだと…
それから力王山にケンカの聖書(バイブル)をかけた試合を申し込み、 しかし
ザ・シークレットという男に関する話で力王山に負けを認めた吉良は、力王山のマンションのエレベーターに細工をして、その小さな箱の中での闇討ちをかけました!
さすがに力やテクニックは上の力王山に対し、ブラックジョーをかければ自らアゴをはめるし、目潰しが成功して指を右目に突っ込めばその目は既に義眼だった…。
全てにおいて吉良より上の地獄をくぐってきた力王山の前に、ついに死を覚悟した吉良でしたが、ここで第三の男であるザ・シークレットが力王山の高等部にスパナで一撃喰らわせて妨害しました。力王山を殺人者にして彼の栄光にドロを塗らせないために。
道夫の死を挟み、吉良はアジアプロレス協会を解散して波止場で労働者として甲賀と共にまっとうに働きますが…
その後も世界プロレス界の王者として君臨した力王山の方は、モデルになった現実世界の力道山と同じく、5年後にナイトクラブでチンピラに刺されて死にました!
その事実を新聞で知った吉良は
『……オレのたどるはずの運命を、この……この男がたどった……』
そうつぶやいて感慨にふけるのですが、おおっ!どうやら嫁さんになってるらしい実花が弁当を持って到着しました。
それを笑顔で迎える吉良旭が駆け寄り…
完
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「ケンカの聖書(バイブル)」とは、そんな話で御座いました。
他の有名作品のように、主人公が燃え尽きる事も悲劇を迎える事もなく終わるこの作品を貴方はどう読むでしょうか。
梶原一騎先生自らは、が
若木書房版の単行本カバーにてこう語っています。
『私のプロレス物には、梶原一騎のほうの筆名を用いた「タイガーマスク」があるが、これは低年齢層の読者を対象としていたので、野球で「巨人の星」を、ボクシングで「あしたのジョー」を描いたように本格的なプロレスの世界をえぐりたかった。コンビを組んだ石井いさみ君はいわゆるフィーリング調の画家であったので、くそリアルな迫力にはやや欠けたうらみがないでもないが、それはそれで一種の妖しく美しいムードが出た。いうなれば予期せぬ異色作となったが、そういう意味で私の好きな作品である。』と。
好きな作品と言いつつも少し控えめというか、厳しめの自己作品評価ですよね。
確かに『本格的なプロレスの世界をえぐりたかった』という当初の目的を考えたら、とても成功しているとは思えませんね。何しろ主人公がプロレスをバカにしているケンカ至上主義者なんだから…。
さらに一般の評価も低い(というよりほとんど知られてないか)作品ですが、私はこの
「ケンカの聖書(バイブル)」も傑作だと考えてます。
他の作品でも馴染みがある
石井いさみ先生の作風が好きなのもありますが、ケンカの天才でアメ公に対する怒りや憎悪をぶつけていた主人公が、弟分の仁吉や女性である実花によって心を開き・・・最後の笑顔ですよ。
『予期せぬ異色作』…確かにそうかもしれませんが、別に裏扱いしなくても十分たまに読み返したくなる力作なんです。
最後無理に連載中止させたのが分かるだけで(それは実際丸分かり)、そんなに評価を下げなくていいと思いますがね。
とにかく自身でも読んでもらってあとはそれぞれ判断してもらうしかないのでしょう。
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ちなみに第一回目の原稿は、実弟の
真樹日佐夫先生と行ってたラスベガスの旅行先で書き上げたそうですよ。
それでアメリカを舞台にスタートしたのですかね。
幻だった作品ですが近年とうとう単行本化された、
真樹日佐夫原作、
石井いさみ作画の
「すてごろ専科」に収録された作者二人の対談で初めてそんな事実が日の目を見たわけですが、
梶原一騎先生と深い関わりを持っていたこの二人が、まだ
「ケンカの聖書(バイブル)」について少しでも語ってくれるだけで涙も浮かんでくるってもんです。
それでは、また次の
梶原一騎作品紹介をお待ち下さい。
- 2007/12/02(日) 23:53:35|
- 梶原一騎
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