大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

週刊少年ジャンプ(11) ちばあきお 1 「半ちゃん」

CHIBA-hanchan.jpg

ちばあきお先生を憶えてますか?

1943年の満州出身であるちばあきお先生は、長男に「あしたのジョー」ちばてつや先生を始めとする、ちば4兄弟の3男です。
そんな肩書きを付けなくてもちばあきお先生自体が凄い人なのですが、1984年9月13日に自殺をしてしまいました。
事件を知ったのは後年でしたし、作品を発表していたのも私の世代ではないのですが、野球好きの友達の部屋に単行本が全部揃っていたので、読みふけった覚えがあります。
そして、こんなに暖かい漫画を描く先生が自殺したと聞いた時はショッキングでした。

もともと兄であるちばてつや先生のアシスタントをしていたのですが、1967年になかよし(講談社刊)で「サブとチビ」を発表して漫画家デビューしまし、兄の亜流じゃ嫌だと外国漫画を約二年猛勉強して、自分自身の絵柄を作り上げたそうですよ。

読切作品も多く発表していますが、何と言っても野球漫画の金字塔である名作長編「キャプテン」「プレイボール」が有名ですね。
1972年~1979年まで月刊少年ジャンプで連載が続いたのが「キャプテン」
ほぼ同時期の1973年~1978年まで週刊少年ジャンプにて連載した続編であり番外編の「プレイボール」は、「キャプテン」で出てきた最初のキャプテン・谷口が高校に進学してからを追う話でした。
単行本は前者が全26巻、後者が全22巻(共に集英社刊)の大作なわけです。

この二つの大作野球漫画は、私のような野球に何の興味も無いし、高校野球に対する人々の熱狂ぶりは冷めた目で見ている、もう野球なんて笑いのネタにしかならないような人間にも、団体競技の熱さや素晴らしさを教えてくれ、感動させてくれました。
"野球漫画"も読む私は、あくまで"漫画"好きであって"野球"好きではないので、現実の野球は未だに見れませんけどね。

ちばあきお先生の野球漫画は、とにかく地味でリアルで、単なる日常生活の描写が多いです。
キャラ達はそれぞれ得意な事や個性もありますが、全員がどこか欠点も持っていて、それが成長していく。
もちろんちば先生が描く野球一筋の男達のドラマに、可愛いヒロインなど必要ありません。
普通のテクニックや作戦についての描写も凄くて、野球が奥深い事も教えてもらえます。
作品に対して異常なまでに完璧主義を貫き、過去作品に対しても加筆・修正を繰り返していたそうで、漫画にかける時間も半端じゃなかったようですね。

上記の作品の後は三年の休筆を経て、弟である漫画原作者・七三太朗に原案を書いてもらい、絵柄も変えて動物と話せる自閉症の少年を描いた「ふしぎトーボくん」、そして絶筆となってしまったボクシング漫画の「チャンプ」と続くのですが、今回は初期作品の短編集「半ちゃん」(集英社刊)を紹介します。

-----------
この短編集「半ちゃん」には、"少し"だけ感動できる話が四篇収録されていて、どれも地味に面白く、ほのぼのします。
こういう作風の漫画家は、もはや少なくとも少年漫画の世界からは絶滅しましたね。
描きたくても売れないから描かせてもらえないのかもしれませんが。

まず表題作の「半ちゃん」は、これが単行本の半分以上を占めるのですが、1971年に別冊少年ジャンプで発表された作品。
半ちゃんという小学生が、『少年野球チームをつくろう!!あき地に三時集合 半ちゃん』という張り紙を街に貼りまくって呼びかけ、野球チームを作る所から始まります。

しかし一番野球が好きな半ちゃんは、ド下手で才能ゼロ。
チームも駄目で、川向こうの連中のチームにからかわれ、試合をしてどれだけ下手だったかを思い知らされます。
そこで引っ越してきたばかりのイガラシという才能ある少年と出会い、彼の名コーチぶりでチームも上達していくのですが…
イガラシは何しろ厳しすぎ、メンバー達は"勝つための野球"と"楽しむための野球"の間で葛藤するのです。
ちなみにタイトルになってるので一応主人公なはずの半ちゃんは補欠です。

ついにせっかく強くなったチームは決裂して、本当に野球が好きな半ちゃんだけが無駄な練習を続けている。
そして『もういちど 少年野球チームをつくりましょう あき地三時集合 半ちゃん』のチラシを街に貼り、一人で『みんな もうぼちぼちくるころだけどな……』とつぶやいて終わり。

読んでもらえば分かるのですが、「キャプテン」以前に、しかも短編でこれほどキャラクターが個性的に描き分けられた作品があったのですね。
ちくのうで、いつも凄い量の鼻水にまみれてる少年なんか可愛いですよ~。

二話目の「ニタリくん」は私が大好きな話ですが、1970年にデラックス少年サンデーで掲載された作品。
いつも地で笑い顔(しかもニッコリじゃなくてニタリとした顔)なために他人からはいつも誤解されてる少年の話で、
同年同誌に掲載された三話目の「愛の賛歌」は好きな少女に告白した少年が、好きになられすぎて困る話。しかも相手は双子でその両方に付きまとわれるのだから羨ましいですね。

最後の四話目「みちくさ」は、わんぱく小僧のゴンちゃん&教育ママに育てられたガリ勉のデコスケという二人が、工場の跡地によりみちし、密室の地下室に閉じ込められる話。
この密室で、普段は接点の無い彼らのやりとりがいろいろあるのですが、ちばあきお先生の優しく暖かい視線にこそ泣けるのです。
1972年に別冊少年サンデーで掲載されました。

-----------
最初に触れたとおり、ちばあきお先生は41歳で自殺してしまうのですが、酷い躁鬱病を患っていたようですね。
ちば先生の遅筆で無理して週刊ペースを続けていた事に無理があり、その時期に溜めた心労が原因だと言われますが…
クリスチャンの両親の両親を持ち、野球漫画では絶対に希望を捨てない奴らを描いていた方だけに、作品を読み直すとまた不思議な気持ちが起こります。

余談ですが、私の誕生日とちばあきお先生の命日は同じ日付でして、なので私は誕生日を祝うと同時に、密かにちば先生を追悼しているのです。合掌。


スポンサーサイト
  1. 2006/11/01(水) 21:35:11|
  2. 週刊少年ジャンプ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<劇画(15) 古谷実 1 「ヒミズ」 1 | ホーム | 月刊漫画ガロ(20) 古泉智浩 1 「転校生 オレのあそこがあいつのアレで」>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://mangabruce.blog107.fc2.com/tb.php/39-01d49d15
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

BRUCE

Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する