大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

月刊漫画ガロ(14) つげ義春 1

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今回はつげ義春先生。
もう20年近く漫画は描いてないし、作品数も少ないのに相変わらず凄い人気漫画家です。
ガロを知らない人でもかなり読んでるし、漫画界一とも言えるカリスマ的な存在になってますよね。

そんなつげ先生は1937年の東京都葛飾区生まれで、いくつかの土地を転々とした後で、結局また葛飾区で育ちました。
5歳で父を亡くして母子家庭になり、幼少期は戦時中で何度も米軍の空襲を受けてのちに新潟県の赤倉温泉に疎開しています。まぁ、それだけで新潟出身の私は誇らしかったものです。
名作「ほんやら洞のべんさん」では、私の実家の近くである新潟県十日町市が舞台にされてますし。
この時は、今よりずっと豪雪だった当時の冬の魚沼まで取材に来たそうですが、大雪で山の方まで入れずに十日町の旅館でずっと寝ていたのだとか。
…なんて、新潟育ちの私が勝手に喜ぶ個人的な事を嬉しげに書いてしまうのも、それだけ私はつげ先生を別格扱いをしているからでしょう。

小学卒業後は江東区でメッキ工をやっていたのですが、母の再婚相手と仲が悪かったとか、そこら辺は自身の漫画でも何度かでてきています。
つげ先生が対人恐怖症なのは有名ですが、その兆候は幼少時から既に表れていたらしく、漫画家を志したのも人とほとんど会わなくていいからなんだとか。

女郎を買って初体験をした18歳、1955年には早くも貸本の若木書房からデビューしていますが、初期のそれは生活の為に描いた作品であり、手塚治虫先生の影響そのままなので、それほど面白いものではありませんでした。
もちろん、貸本漫画も10年ほど描いてますので、その間に作風の変化は何度か見られます。
だんだん暗くなってくるし、後に完成するつげ漫画の片鱗は見えてきてます。
わりと最近まで読めなかったこれらの作品が、「つげ義春全集」(筑摩書房刊)の出版によって順を追って読めるようになったのは嬉しいかぎりです。
「全集」とは言っても、正確にはまだ一部読めないのですが。

この時は時代劇と推理物が多いのですが、ジャンルもだんだん広がってきてSFや、何と恋愛物みたいなのもあります。
「おばけ煙突」「ある一夜」「不思議な手紙」…これらの短編は元から何度も復刻されてますが、名作ですよね。
リアルな旅漫画と、シュールな夢漫画の両方で大家になるのは、まだ先の話ですが。

とにかく貸本時代は、お金にはなりませんでした。
つげ義春先生=貧乏みたいなイメージも拭えませんが、とにかくこの頃の生活は酷いものだったようで、下宿代を2年分溜めたために便所を改造した一畳の部屋に幽閉され、なんと8年間もここで過ごしたんだとか…
ずっと自閉症に苦しみ続け、自殺未遂を起こした事もあります。

そうだ、つげ先生が漫画界の梁山泊・トキワ荘に出入りしていた事はご存知でしょうか?
映画「トキワ荘の青春」でも、つげ先生役が少し出てましたね。暗いだけの役で。
特に赤塚不二夫先生とは仲良かったらしく、儲かるからと貸本漫画を描く事を勧めた張本人でもあります。

そして1965年。
その才能を見抜いていた長井勝一編集長が、ガロ内の尋ね人欄にてつげ先生を呼び寄せ、ついにガロに登場です。
まずは「噂の武士」を発表。その後、水木しげる先生のアシスタントをしばらく務めますが…「ゲゲゲの鬼太郎」の長編エピソード『鬼太郎夜話』で、ヒロインの寝子が死んで『ぼくのフィアンセ(いいなずけ)ときめていたのに』と泣く鬼太郎に対して目玉おやじは、『そりゃあ おまえの顔ではむりだ 寝子さんのようなきれいな子は
つげ義春ぐらいの男前でなくちゃ うんといわないよ』

と言っておりました。思わぬ所で名前が登場したつげ先生ですが、写真を見ると確かに男前です。

で、これ以降つげ先生の才能が開花します。あの「沼」の発表は当時、まぁ一部での事ですが問題になったようですね。その夢のような不安な世界は、よく分からない前衛的な物を有難がりだした当時の風潮にマッチしたのでしょうか。もちろんそれだけの作品ではなく、何故か印象に残る切ない系の作品です。
当時のガロは白土三平先生の「カムイ伝」があるから売れていたわけで、その読者層からは無視されていたとも言われていますが。

それから「李さん一家」「紅い花」「海辺の叙景」「オンドル小屋」「ほんやら洞のべんさん」…これらの名作が毎月のように新作として読めたとは、当時の読者に嫉妬を覚えてしまいますね。
寡作なイメージのつげ先生ですから、この辺りの数年が間違いなく絶頂期でした。

さらに1968年…「ねじ式」「ゲンセンカン主人」の発表ですよ!
どちらも後に石井輝男監督によって映画化された時のタイトルにもなってますね。
シュールな世界なのもそのはずで、つげ先生が見た夢が基になっているというのが定説ですから。
それは本人がそのように発言していたからなのですが、いや実際はストーリーを作る事に疑問を持ち出したつげ先生が意図的にこの世界を創作したのだとか、もうずっと議論されたり、研究本も多く出ています。

とにかく芸術好きの若者達にも驚かれ、絶賛された「ねじ式」は、30数年経った今の読者にも影響を与え続けています。
私にも"意味"は分かりませんが(そもそも意味なんてないのか)、どのコマもセリフも印象深くてずっと覚えてますからね。こんな漫画は他に無いかもしれません。
そんな所に、つげ作品がいろんな作品でも漫画マニアの日常会話でもパロディされまくっている理由があるのでしょうね。

こんな作品を描きまくっていたら当然でしょう、1970年代前半にはつげ義春作品が大ブームと呼んでもいいくらいの状態になりました。
絵柄はだんだん劇画調になっていましたが、その集大成「やなぎ屋主人」を最後にガロを去ってしまいます…(泣)

以降の活躍で目立つのは、「夢の散歩」「夜が掴む」「外のふくらみ」「ヨシボーの犯罪」等、夢漫画の傑作でしょうか。
「必殺するめ固め」で描かれる不安感には、本当に背筋が寒くなったものでした。

1980年代以降のつげ先生といえば、資本主義社会から見たらクズでしかない主人公が、世捨て人に憧れて石を売る話で知られる「無能の人」が有名で、竹中直人が映画化もしましたね。
しかしその直後に描いた「別離」以来、今まで新作漫画は発表されていません。
「別離」自体、ラストに主人公が自殺未遂事件をする絶望的な作品でしたが…大丈夫なのでしょうか、つげ先生。

私は今更、つげ先生の新作なんか求めてません。
ただ、もうぺンを置いてから20年近くが経とうとしてますが、いつまでも次の世代に新しい読者を獲得して、本の再発もされまくっているつげ作品ですので、今頃は精神病にも別れを告げ、悠々と印税生活でもしていて欲しいですね…。

今回はつげ義春先生の、その偉大なる経歴を流して追ってきただけで長くなってしまいましたので(全然書き足りないですが…)、作品の紹介を細かくするのは、またいつかにしましょう。

-----
つげ先生の本は内容ダブりばかりで装丁変えてたくさん出版されていて、そのほとんどを買ってた私ですので、今回の画像は何を使おうか迷ったのですが…
結局1968年と1971年に出たガロの「つげ義春特集号」二回分を、1991年にオリジナルサイズで忠実に復刻された物にしました。
これはその復刻ガロ二冊と、付録冊子(つげ先生の最新エッセイや作品リスト等、内容は豪華)、それに箱付きで定価3800円(青林堂刊)です。
もちろん収録漫画は全部持ってる作品なだけに、当時痛い出費ではありましたが、やはり大きいサイズで読むつげ作品は格別で満足したものでした。


では ごきげんよう
達者でなァ



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  1. 2006/09/22(金) 00:46:31|
  2. 月刊漫画ガロ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

我が父親が大好きですワ。
無能の人を愛しておりましたワ。
我が父親59歳なり。
  1. 2006/09/22(金) 23:48:59 |
  2. URL |
  3. mako #79D/WHSg
  4. [ 編集]

>mako様
素敵なお父様ですワね。
もちろん「無能の人」以前の作品も読んでらしゃるでしょうが、そのお歳でつげ先生ファンという事は、貸本漫画家時代から読んでたりもするのでしょうかね。
もしもそんな時代に出版された作品を持ってましたら、今度お父様を紹介してください。
値段の交渉に入りますので(笑)
  1. 2006/09/24(日) 14:27:13 |
  2. URL |
  3. BRUCE #79D/WHSg
  4. [ 編集]

メメクラゲ、ほんとにそんなクラゲがいるのかと思っていました。
  1. 2006/09/27(水) 09:26:39 |
  2. URL |
  3. keico #79D/WHSg
  4. [ 編集]

>keicoさま
お久しぶりです。
「ねじ式」ネタで来ましたか!
メメクラゲって、名前だけの存在だから本当はクラゲじゃないのかもしれませんよ。
ほら、キクラゲはキノコですし。
とにかくその何かに実際自分が刺されたら、まずあのポーズをとって満足するのでしょうね。
  1. 2006/09/28(木) 21:59:14 |
  2. URL |
  3. BRUCE #79D/WHSg
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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