大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

月刊漫画ガロ(48) 水木しげる 3 「墓場の鬼太郎」

今夜も続いて水木しげる先生の作品で、「墓場の鬼太郎」(KODAMA PRESS刊)。
MIZUKI-hakabano-kitaro.jpg
昨夜の「忍法屁話」と同じコダマプレスのダイヤモンドコミックスから上梓された短編集になりますが、こちらは11話も収録されています。

しかも、その全てが月刊漫画ガロにて描かれたものであり、まえがきで水木しげる先生自身が
『最近の他のものより作品の質は少しよいと思っている。』
と語っているように、名作が多いのです。
なんでもこれらの作品を描いていた時は一つの作品に二、三日かけていたのに、最近(といってもこの時…昭和41年)ではマスコミが押し寄せる影響で一日で仕上げるようになったのだそうです。

しかし二、三日かけたのにしろ、一日で描いたにしろ、水木しげる先生の作品はオモチロイし、後世に残っていく…

さて、短編集「墓場の鬼太郎」です。

「墓場の鬼太郎」といえば、これを元に何度もアニメ化されている「ゲゲゲの鬼太郎」、または今年放映されたばかりの「墓場鬼太郎」もありますので、知らない人はいないでしょう。
幽霊族の鬼太郎が、目玉親父ねずみ男、他たくさんの妖怪達と繰りひろげる物語ですね。

この本では表題作そのままの作品は入っておらず、また鬼太郎シリーズも一つだけなのですが、それが「鬼太郎の誕生」
この短編では鬼太郎の誕生と、人間の家を去る所までが描かれています。

あっと…ちょっと脱線して、この水木しげる先生の生んだ作品の中でも最も一般受けした鬼太郎というキャラクターが、完全なるオリジナル作品でない事はご存知でしょうか。
戦前(それも1933年頃)に伊藤正美という方が「ハカバキタロー(墓場奇太郎)」なる紙芝居を描いていて、水木先生はこの「ハカバキタロー」を題材にして作者承諾の上で、当時3歳になる兄の子(甥)をモデルにしてキャラを作り直し、今風にしたオリジナル紙芝居として鬼太郎シリーズの原点になる「蛇人」「空手鬼太郎」「ガロア」「幽霊の手」の4作を仕立てたのだそうです。
つまり鬼太郎の元ネタは伊藤正美。(さらに水木先生の後を継いで竹内寛行先生がもう一人の鬼太郎を生んでいくのですが、その辺の話は省略)

後に貸本漫画家に転身して1960年、すぐに廃刊した伝説の怪奇短編マンガ誌「妖奇伝」(兎月書房刊)に「幽霊一家」を発表し、漫画の世界でも鬼太郎が登場したのはファンの間では有名な話です。

ここで載っている、ガロ版の「鬼太郎の誕生」話は一般にはどの程度知られているのでしょうかね。
アニメシリーズではほとんど見られない誕生話ですが、漫画では数多くの単行本に載ってますし、現在でも簡単に読む事ができるでしょう。

血液銀行に勤める水木の隣りに引っ越してきたのは、不気味な幽霊夫婦で…
只一人の御近所だからと無理矢理聞かされた話は、地球に人間がいない時代から生息していた幽霊族が、人類の登場以後は迫害されたという辛い歴史。
そう、ここでの幽霊は人間が死んでなるものではなく、全く別の存在であって肉体を持ち、もちろん食べなければ餓死するし、死体は腐る。

しかも、この水木が関わった幽霊族生き残りの夫婦は、何とらい病にかかってます!
しかも妻は妊娠中だから、せめて子供が生まれるまでは誰にも言わないでと頼まれるのです。
…そして八ヵ月後、水木が様子を見に行ったら既に夫婦は死んでいました。
哀れに思って妻の方だけでも埋めてあげるのですが(夫は体がドロドロに溶けてたため気持ち悪くて無理だった)、その三日後、幽霊の妻を埋めた墓がうごめくと、墓穴から不気味な赤ん坊が生まれました!
もちろん、これが鬼太郎。

ちょうどその頃、放置されたままの父親の屍から目玉が崩れ落ちると…目の周りのドロドロした部分が手足、体になって生命を持つのですが、これで目玉親父も誕生。

鬼太郎が左目の無い隻眼で、しかも目玉親父が出入りする事もあるため、よくそこから生まれたと勘違いされていますが、違う事が分かったでしょう。
鬼太郎の左目自体も、このガロ版「鬼太郎の誕生」では説明もなく元々潰れていましたが…
何種類もある鬼太郎の話ですので、中には水木が放り投げて潰れてしまう、という設定の話もあります。

水木が家に鬼太郎を引き取って育てると、醜い子供ながらも成長していきます。
ちなみに鬼太郎という名前の名付けシーンは無く、始めから目玉親父が呼んでますし、水木らもそう呼びます。

鬼太郎を6年も育てた水木でしたが、夜中になると墓場に行き、"死人の世界"で霊達と遊んでいる鬼太郎をついに追い出し、鬼太郎は目玉親父と共にあてもない放浪の旅に出るのでした。

…と、ここまでが「鬼太郎の誕生」で、ゲゲゲの森にはまだ着いていません。
私は小学生だった当時にまだ刊行されていた、講談社版の黒背表紙の全17巻を読んでいたのですが、それの最後にもこの「鬼太郎の誕生」は収録されていて、これだけタッチの違う不気味な絵柄だったのもあり、強い印象を残したものです。もちろん、今読んでも正に名作!


何しろ単行本だけでもかなり多くの種類が出ている鬼太郎シリーズですので、マニア話はまだまだあるのですが…
次にいきましょう。

他の短編は鬼太郎シリーズではなく、当然鬼太郎も出てこないのですが、ねずみ男は常連として多くの作品に出てきます。
タダで人助けするヒーロー、そんな有り得ない奴のアンチとして誕生させた、この私利私欲の塊のようなキャラこそ、水木しげる先生が生んだ最も人間的な奴かもしれませんね。

「鬼太郎の誕生」に続いて収録されている作品は、
「神様」「マンモスフラワー -巨大な花-」「剣豪とぼたもち」「闘牛」「ねこ忍」「ああ無情」「勲章」「いぼ」「不死不老の術」「幸福の甘き香り」の10作。
水木しげる作品の多彩さを証明するかのように、様々なジャンルで楽しませてくれるわけですが、この時期のガロに描いてた短編漫画というと、やはり風刺漫画が多いですね。

お国のために働かされた戦争で左手を失って、帰国してからはとことんまで貧乏に苦しまされていた水木しげる先生なればこそ、政治家や権力者…そして肩書きが全てのように思ってしまう庶民への批判が生きるのでしょう。
しかもどれも恨み事としてではなく、怪獣モノや時代モノの姿でユーモラスにオモチロく描かれているあたり、惚れてしまいます。

そんなわけで「鬼太郎の誕生」以下の10作にも凄い名作、有名作もあるのですが…すみません、もう時間なので個々を細かく語ることはしません。
おやすみなさい。

スポンサーサイト
  1. 2008/08/22(金) 23:15:51|
  2. 月刊漫画ガロ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<ホラー漫画(18) 御茶漬海苔 5 「恐怖実験室」 | ホーム | 月刊漫画ガロ(47) 水木しげる 2 「忍法屁話」>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://mangabruce.blog107.fc2.com/tb.php/557-08ed7997
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

BRUCE

Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する