今夜の
水木しげる作品は、
「死者の招き」(
朝日ソノラマ刊)。もちろん
サンコミックスです。

17編も収録した短編集なのですが、いきなり傑作の
「妖怪魍魎の巻 死人つき」で幕を開けます。
例によって海外の怪奇小説である、
ニコライ・ゴーゴリの
「妖女(ヴィイ)」に良く似た話なのですが…
舞台を私の故郷にほど近い、越後の柏崎市鯨波に実在すし、人魚のミイラを所蔵しているので有名な
"妙智寺"を舞台にしているのが、個人的に嬉しいです!
冒頭のナレーションでは『ここは越前の国ー』と間違えていますが。
七十年前に
慧海という坊主が、"もうりょう"に関する伝説に怯える柏崎へ流れてきて、無知な田舎の迷信だと信じていたら本当に夜中に甦る死体に追い回され、次の日から八角円を作って数多くの妖怪…もうりょう達と対決するはめになるのです。
この妖怪たちがまたイイのですが、こいつらは格闘に夢中になるうちに朝が来て太陽の光にさらされてしまい、慧海が失神から覚めると、もうりょう達は死体になっていました。
当時の和尚が
『こういうものがいたという証拠に これらの死体をこのまま後世に残し 後世の進んだ頭脳でこれを解明してもらおう』
といって死体を残しとく事にしたのですが、何百年かたって現在では何のためにあるのか分からなくなったそうです。
それでも現在でも柏崎妙智寺に寺宝として、その残骸の一部が残されているのだとかで、
『やはり、奇妙なおばけは ほんとうにいたのだ』として作品を〆るのですが…あの妙智寺の人魚ミイラが、実はもうりょう(魍魎)だったとは!
この短編集
「死者の招き」には、他にもいくつも名作はありますが…
私が特に普段から友達に薦めたりしているのが、まず
「暑い日」。
たった8ページながら、ホラー色が強く暗い絵柄の幻想的な作品で、暑い夏の日の狂気を描いてます。
石屋の親父が包丁を研いでるラストの顔のインパクト!
「やまたのおろち」は、まず妖怪がたくさん出てきて楽しいのもありますが、見た目はダイヤモンドのような"解放石"という石の中の不思議な世界の描写が、悪夢のようなシュールさで凄い。
表題作の
「死者の招き」は、珍しく巻末に収録されていますが、これもわずか8ページの名作ホラーに仕上がってます。
とある宿の部屋で眠ると、悲観的、厭世的な感情が襲ってきて…
『「精神一到 何ごとかならざらん」というが、最後のゴールなぞ、誰も知ってやしない。
努力……、鍛錬……、労苦の何という愚かしさ……。
快楽の空しさ 高尚な生活のくだらなさ……。
すべては空しいのだ……。宗教はこどもだましにすぎない…
人生はおそろしい。まやかしにすぎないのだ……。
真実なものは、死だけだ。そこにはガンもなければ歯痛もない。
食う心配もなければ絶望も不安もない。
さあいこう。幸福な死の世界へ。』という説得力のある声が聞こえてくるのですが、これは押入れでこっそり首を吊っていた先客が招く声だったという話。
私はこれも大好きな話で、しかも死者に同感しちゃって大変なのですが、まぁこの死者は都合いい事だけ都合よく言ってきている、という事に大人なら気付かなくちゃダメですね。
他に収録されている作品は、
「死人つき」「一万人目の男」「合格」「惑星」「陸ピラニヤ」「マチコミ」「丸い輪の世界」「木枯し」「妖精」「風の神」「海じじい」「怪自動車」「見世物小屋」…
と、いくつか有名作もあるのですが時間の都合で紹介はしません。
あともう一つだけ、これまた名作の
「錬金術」における、
ねずみ男の風刺的な名言で今夜は終わりましょう。
まどわす?ばかな。
お前たちが幸福になったのは錬金術をはじめたからじゃないか。
瓦が金になりはしないかという果てしない希望、
それによってもたらされる充実した日々……
錬金術は金を得ることでなく、そのことによって金では得られない 希望を得ることにあるんだ。
人生はそれでいいんだ……………
この世の中にこれは価値だと声を大にして叫ぶに値することがあるかね。
すべてがまやかしじゃないか。
- 2008/08/29(金) 23:54:39|
- 月刊漫画ガロ
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0