大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

トキワ荘(36) 石森章太郎 27 「鉄面探偵ゲン」

今夜の石森章太郎作品は、「鉄面探偵ゲン」(講談社刊)です。
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1974年から週刊少年マガジンにて連載された作品で、単行本は全2巻。

ここでは何と石森章太郎先生が本格推理サスペンスに挑んでいるのです。
残念ながら連載された全話が収録されてはいないのですが、この前身作として「鉄面クロス」があります。

簡単に書くと、主人公の十文字元刑事が、全身鉄のヨロイで固めた強盗・怪盗鉄面クロスを追っていったまま行方不明となり、その半年後にただの飲んだくれとなって戻ってくる…この行方不明期間に一体何があったのか、というのが「鉄面クロス」

その続編である「鉄面探偵ゲン」は、もちろん同設定ですが、十文字元(ゲン)は刑事を辞めて万来軒というラーメン屋の二階に"私立 十文字探偵事務所"を構えています。
いつも酔って部屋で寝てばかりでイカの足をくわえている奴で、夜になると副業でおでん屋台も営んでいます。
万来軒にはオヤジと娘のおタケがいて、このおタケは口が悪くてゲンをいつも怒鳴っていますが、本当は恋心を持っていて…
ゲンの父親はベテラン刑事。

この手の少年向け探偵ドラマではユニークな敵(怪盗)が付き物ですが、怪盗鉄面クロスに変わって「鉄面探偵ゲン」で出てくるのは、高価な宝石を盗んで犯行現場にE・S・Pカードを残していく怪盗ポルター・ガイスト
彼の正体は白神三魔之助という、何とまだ中学生。長野県の旧家生まれの超能力まで持つ大天才です。

このポルター・ガイストが魅力的な奴で、社会に復讐するために盗みを働くのです。
それが完全に自分の価値観に従って犯罪を楽しんでいるので、犯罪を芸術の一種としてとらえていて、殺しだけは絶対にしません。
精巧でメカニカルな義手・偽足や、空飛ぶ円盤なんかも自分で作っちゃう回もありました。
芸術を愛するキャラクターなので、狙う品物も松尾芭蕉直筆とされる短冊だったりして好きだなぁ。
逆に結局いい奴として描かれて、敵としての恐ろしさはあまり無いのですが。

そして作品で最も重要な設定が、主人公であるゲンが前作 「 鉄面クロス 」 で敵の罠にはまり、代り身として皮膚に食い込んで二度と外せない鉄面と鉄鎧を装着させられている事!
普段は普通の人のように見えますが、それは精巧なリビング・マスクでしかなく、よってゲンの本当の素顔は作中一度も出る事はない…
人間の顔はマスクで、その下の鉄面が今は素顔だなんて…悲痛なヒーローとして素晴らしすぎますね。

これが故に作品には悲哀さが漂うのですが、こういった顔を失った男の苦悩、といった種類の暗さは正に石森章太郎作品最盛期の真骨頂とも言えるテーマでもあります。
いつも酒を飲んでいるのは、永遠の悩み苦しみを僅かの間でも忘れるため。
いつもイカの足をくわえているのは、あんまりしゃべらなくていいように。鉄面の口でしゃべるのはしんどいから。
酔っ払いの"ふり"をしてれば表情の不足もカバーできるというのですが、この設定に思春期の私は痺れました。
私もいつもイカの足をくわえ、世間に出てくだらないおしゃべりをしなくてすめば、と想像したものです。

『・・・・まっ白な雪の下に 黒くよごれた現実の風景がかくされているように・・・・
・・・・人はみな にくしみやいかりをー
・・・・ほんとうの心をかくして くらしているのだ・・・・』


ゲンが解決していく数々の事件はどれも面白いと言えるのですが、新潟県佐渡が島の北にある小さな島・首なし島を舞台にした話なんかは、土着的な伝説を基にした横溝正史の小説的な展開と雰囲気を持っていて好きでした。

そして最終回…日本国の黒幕にポルター・ガイストが敗れ去り、ゲンは背負った宿命からおタケの愛を受け入れられずに姿を消すのですが残念ながらこの単行本には収録されていません。
だから私にはずっと幻の回となっていたのですが、今は復刻版で読む事ができます。


・・・・若者たちは東京にあこがれ・・・・
・・・・やがて夢やぶれて・・・・故郷にかえる・・・・
そして自己中心の身がってな愛で・・・・破滅する
・・・・いったいなにを かんがえているのか
それとも なにもかんがえていないのか・・・・



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  1. 2008/11/14(金) 17:31:08|
  2. トキワ荘
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

どうもはじめましてBRUES大悟さん。

鉄面探偵ゲンは確かに面白いのですが、酔いどれてスルメ加えてる理由が
最後の方まで明らかにならなかったりするのがチョットもどかしかったりするのでして……
あとあの最終回は一体なんだったのだろうかと疑問だったり。あれが解りづらいのはまだまだ修練が足りんということなんだろうか?
  1. 2013/03/12(火) 21:41:55 |
  2. URL |
  3. 流浪牙 #Th6W5/wE
  4. [ 編集]

コメントありがとうございます。

>流浪牙さま

はじめまして。
そうですね、理由を最後の方まで明らかにしない事がもどかしいのは確かですが、同時に散々待たされて分かった時に嬉しい気持ちもありませんかね。
しかしああいうのは最初から設定としてあったのか、こじつけて後から考えたのか…
最終回に関しても、あれは誰が読んでもよく分からないと思います。いきなり打ち切りになって一回で完結させる必要がある時のパターンを思い出しますよね。当初単行本に未収録だったのも、作者が気に入らなくての事だったのかもしれませんね。
  1. 2013/03/13(水) 09:02:41 |
  2. URL |
  3. BRUCE #-
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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