大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(65) 望月あきら 1 日向葵 1 「カリュウド」

(今回はゲストライター、奈落ハジメ氏の投稿です)

MOCHIZUKI-karyudo1.jpg

「必殺系」マンガ。
いわゆる殺し屋物の漫画の中で、虐げられた庶民の晴らせぬ怨みや復讐を代行する者を主人公にした作品を、便宜上そう呼ぶことにします。遠く80年代だと平松伸二「ブラック・エンジェルズ」や坂口いく「闇狩人」、最近では「怨み屋本舗」なんかがありますね。漫画よりアニメの方が有名ですが「地獄少女」(日野日出志ではない方)もそうでしょう。
今回紹介する「カリュウド」は、その「必殺系」で、恐らく少年漫画では最も早かった作品ではないかと思います。
連載開始はS51年。掲載誌は「魔太郎がくる!」「エコエコアザラク」など、当時おどろおどろしい作品が目白押しだった少年チャンピオンでした。原作の日向葵という人は本作以外では名前を見かけませんが、作画の望月あきらは、「サインはV!」「ゆうひが丘の総理大臣」といった一世を風靡したヒット作を残している漫画家です。
前述した望月氏のヒット作群は概ね明るめで健康的な内容なのですが、その一方でこの「カリュウド」を描いていたのも、ある意味衝撃的と言えるでしょう。
なにせ冷酷非情のサイコキラーが、悪人をひたすら残酷な方法で殺しまくる話なのですから。

主人公は、悪性の脳腫瘍を脳移植手術によって克服した美少年・北十字良。見ての通りのイケメンです。由美ちゃんという可愛らしい彼女もいて、退院した彼の前途は洋々だったはずなのですが……問題は、移植された脳の正体。

「ああ殺したりねえ殺したりねえ 世の中にゃ殺しても殺してもあきたらないヤツがウジャウジャいるのさ そいつらをみんな道連れにしてやりゃよかったよ」

そんなアグレッシブな遺言を残して絞首刑にされた殺人鬼の脳だったのです。殺人鬼は死刑執行の担当官に、その場で噛み切った自分の小指を母親への形見として託しますが、あえなくゴミ箱行き。
退院後その担当官と街ですれ違ったイケメン良は、突然自分でも理解できない衝動のままに、迎えにきた子供たちの前で担当官を後ろから刺殺してしまいます。他人の肉親への想いを踏み躙った報いというわけです。
しかしこの時、凶器として現場に残してきたのは由美ちゃんに借りた傘……おそらく「カリュウド」における警察機構は、悪をのさばらせる腐敗したボンクラ揃いなので足が付く事はないのでしょう。良い時代だったんだなあ……。

この、他人の脳を移植された主人公が変貌していく……という秀逸すぎるプロットは、近年東野圭吾の小説「変身」で脚光を浴びましたが、もしかしたら着想の元ネタに、この「カリュウド」があったのではないかと思っています。
ともあれこうして殺人者デビューを果たしたイケメン良。その後もこの調子で、悪事を犯しながらノウノウとのさばる悪人たちを始末していくのですが……この漫画の白眉は、何と言っても尋常でないその殺し方の数々にあります。

「美術品目当てで夫を殺した女を、その美術品と一緒に倉へ閉じ込めて餓死させ虫の餌にする」
「暗黒街の重要な割り符を薬のカプセルに詰めて飲ませ、取りに来た仲間に包丁で腹をさばかせる」
「全身に生卵とトウモロコシを塗りたくり、鶏に突つき殺させる」
「罪を他人に被せ死刑に追いやった男を狂犬病の犬に噛ませ、感染させた上で山小屋に閉じ込めジワジワ病死させる」
「電車内で他人を見殺しにした男を、満員電車の中で堂々と殺す」
「八百長破りのボクサーの利き腕をカタワにしたヤクザを、死んだボクサーの鉄の義手を切り取ってきて刺し殺す」
「放火魔を棺桶に閉じ込めて生きたまま火葬場で焼き殺す」
「野口五郎が好きだった少女を殺した男を、外側を研磨した野口五郎のレコードを飛ばして首をはねる」

……など、こだわりのシェフも顔負けの手間暇をかけて殺すイケメン良なのでした。この手の作品だと最後に溜飲が下がるのが普通なのですが、ご覧の通り手口が凄まじすぎるのでそういう次元を超越してしまっています。
テーマとして因果応報の色が強く、中でも母親から一人息子を奪った悪徳政治家に報いを与える為に、関係ないその一人娘を殺して彫刻に塗り込めてしまう回は倫理的に限りなくアウトっぽく、このへんが正義の殺し屋ではなくサイコキラーなゆえんです。

MOCHIZUKI-karyudo2.jpg

これでも主人公のやることです。

しかも現場を目撃したり調査するなどの過程を素っ飛ばして、全然ストーリーと関係ない良が「おれは地獄の使者カリュウド……」とか言って悪人の前に現れるのですから、相手に取ってはたまりません。劇中で具体的な説明は全くありませんが、恨みが絡んだ事件に接すると小指が黒く変色したりして自動的に悪を感知するレーダーのような機能が、良には備わっているもようです。
というのも、この「カリュウド」は完全に1話完結の為、毎回悪人が悪事をする描写と、それに対する「復讐」の描写で殆どのページが占められるので、そういうストーリーにならざるを得ないという事情があったりします。
よって、主人公なのに、良や恋人の由美ちゃんの出番が殆どないという異色すぎる作風に。結局最終回を迎えても、由美ちゃんとの仲は全く進展しないし、それどころか良の内面の人物像さえほぼ謎のまま終わってしまうのでした。

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こんなに可愛い由美ちゃんなのに……。

現代的な視点ではトンデモ系の迷作のような所もありますが、画力のレベルが高く、展開の速いお話に独特なテンションがあって毎回グイグイと読まされてしまう魅力があります。現在ではコミックターミナルという電子書籍で復刻されているようで、「必殺系」マンガのカルト的パイオニアとしてチェックしていただきたい作品です。


「この世に恨みを残し恨みをはらせず死んでいった人間の恨みをはらす……それがおれの宿命」

奈落ハジメ(ならく・-) ゲームシナリオライター。東京在住。酒と美女と漫画を愛する中年男子高校生。


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  1. 2009/01/03(土) 23:59:52|
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  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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はじめまして。

はじめまして。
思うところがあり、望月あきらで検索してたら
このサイトにヒットしました。
カリュウド読んでました。
前作のローティーンブルースからの流れで。
思うに 日向葵 は望月先生のPNだったのでは?と。
前述した 思うところ とは
カリュウドの1話キャラにローティーンの
レギュラーキャラをスターシステム的に使いまわしているところです。
例えば狂犬病に感染させられる裁判官は前作の主人公の父、
良の背中に刺青の下書きを施した彫師は前作の主人公の父の義兄弟、
など枚挙にいとまがありません。

拙ブログです。
http://blog.livedoor.jp/nagi3000/
  1. 2015/02/22(日) 05:42:14 |
  2. URL |
  3. nagi3000 #-
  4. [ 編集]

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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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