大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(66) 望月三起也 2 「俺の新選組」

(今回はゲストライター、奈落ハジメ氏の投稿です)


望月三起也が週刊少年キングで大ヒット作「ワイルド7」を堂々完結させたS54年、同誌上で連載が開始されたのがこの「俺の新選組」です。
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スタイリッシュなガンアクションで鳴らした作風が時代劇にマッチするのか?という当然の疑問は、実際にこの漫画を読んでもらえれば一発で解消されると思います。
斬新すぎる構図&センスと刀を使ったチャンバラが見事に融合し、望月アクションとして全く違和感がありません。集団戦の迫力やシチュエーションの面白さはもちろん、鉄の凶器としての刀の凄みと斬られた痛みの表現が秀逸。その部分では当代一と思われる現在の「シグルイ」の刀描写と比較しても全く見劣りすることはありません。
その上で、細部や背景の描写に凝りまくる作風も変わらず、重厚な時代劇らしさも十分に表現されています(スクリーントーンを使わない画風も相性合いまくり)。とにかく時期的に最も脂が乗り切っていた頃と言え、全く古さを感じさせません。

劇中では、完全に新選組=ワイルド7というアウトロウヒーローのイメージで描かれています。「おまえがやれぬことならば 代わりに俺がやってやる そうさこの世のドブさらい」とはTV実写版ワイルド7の主題歌の歌詞ですが、表の警察機構が手を出せぬ巨悪を超法規的に処刑する元凶悪犯のワイルドと、弱体化した幕府の治安機能に代わって京都に集ったテロリストと闘う元浪人ぞろいの新選組とは、こうして見るとなかなか重なる部分があるようです。
この「俺の新選組」は、特定の主人公を置かない群像劇のスタイルで描かれていますが、明らかに出番が多いのは副長の土方歳三と、回を追う毎にワイルドの主人公飛葉そっくりな顔になっていく原田左之助の二人。この両者は氷(クール)と炎(熱血)の両極端で非常にキャラが立っていて、劇中で起こるお話は大体この二人がメインで絡んできます。
この二人の他に局長の近藤勇を始め、沖田総司、藤堂平助、永倉新八、山南敬助ら試衛館生え抜きのメンバーが主役グループという形になりますが、藤堂がヘボピー、永倉が八百にそっくりなのはワイルド7ファンへの読者サービスでしょうか。
作品タイトルに相応しく異色なのは、近藤と土方を除く試衛館組の隊士コスチューム。定番のダンダラ羽織をベースにしつつ、袖をカットしたり反物のバンダナを巻いたりと、傾奇者やヒッピー風のオリジナル仕様になっていて、これが非常にカッコ良い。
また余談ですが、後の少年ジャンプのヒット作「るろうに剣心」に登場する「相楽左之助」は名前の通り新撰組の原田がモデルらしいのですが、そのキャラはこの漫画で描かれている原田像にかなり影響されている気がします。一般的な新選組物では脇役に過ぎない原田がここまでフィーチャーされた作品は、ジャンル問わず他に皆無でしょうから。

全編通しての悪役というかライバルは、多くの新選組物の定番として芹沢鴨とその一派。悪党たちの手強さと憎たらしさの描写の濃さは、望月漫画の特徴の一つなのですが、本作でもそれは遺憾なく発揮されています。あの手この手で土方を苦境に追い詰め、時に男として耐えがたい屈辱を与えたりもするのですが、安っぽい怒りよりも組織を優先しグッと堪える土方の姿。
「耐えるのも男の値打ちのひとつだぜ」という任侠映画ばりの「溜め」の美学は、それが爆発する時のアクションシーンのド迫力とカタルシスにそのまま繋がるのです。特にラスト2話で、二大巨悪の新見錦と芹沢が立て続けに葬られる展開は非常に熱いものがあります。

この「俺の新選組」。忘れていた伏線が突如動き出したりする緻密なストーリー展開も顕在で、非常に面白いのですが、連載は一年半で終了しています。連載当時の人気は不明ですが、ワイルド7との最大の違いは致命的な女っ気のなさでしょうか。
何せ武士の集団のお話なので、女性キャラは途中加入の山崎ジョウ(蒸=嬢ということで、実は女の子だったという設定)ただ一人。それも時代劇ですから、ワイルド7のユキみたいに半乳半ケツのようなヤンチャな格好もさせられず、露出は皆無。土方と相思相愛だった草モチ売りの娘さん(名前なし)が、新見一派に吊るされ拷問されるSMシーンはかなりグッときますが、焼け石に水の感もあります。いわゆるムチムチで艶めかしい「望月女」が醸し出すお色気成分に関しては、不足していると言わざるを得ないでしょうね。

物語は芹沢一派を粛清し、さあこれからという所で終わりを迎えています。望月先生は新選組の最後までを描く気満々だったようで、史実で土方との不仲が嵩じて切腹させられる仲間の山南が、所々でさりげなく土方との相性の悪さを描写されていたり、後に原田が合流する彰義隊に絡めたギャグを原田自身に言わせたりと、その名残を感じることはできます。
連載終了後に刊行されたコミックスのコメントでは、続編執筆宣言もされているのですが……残念ながら、現在まで続編の企画は動き出してはいないようです。
ただし幾つかの伏線が未回収なのは確かですが、尻切れトンボで終わったという印象が全くないのは流石巨匠、抜群の構成力とストーリーテリングの才能を感じさせます。数年前の大河ドラマ化による新撰組特需で集英社(ホーム社)から復刻版が出版されており、現在でも入手は容易ですので、是非お手に取って愉しんでいただきたい傑作です。

「いちいち道場剣法教えてる間に時代は変わっちまうぜ 新選組にあっては刀は道じゃねえ 人殺しの道具!!」


奈落ハジメ(ならく・−) ゲームシナリオライター。東京在住。酒と美女と漫画を愛する中年男子高校生。


  1. 2009/01/09(金) 19:37:22|
  2. 劇画
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