大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(70) 山口貴由 3 「悪鬼御用 ガラン」

悪鬼!それは人間の姿をした悪魔!
彼らは成長を嫌悪し 腐敗に誘惑される!
彼らは自由におののき 統制に恍惚とする!
彼らは過去に住んで 未来に住まない!
悪鬼!それは更生不可能な冷血非情!処刑されるにふさわしい者!



今夜は山口貴由先生の「悪鬼御用 ガラン」(リイド社刊)。
YAMAGUCHI-garan3.jpg

1993年にジャックポットにて連載された作品で、単行本は全1巻です。
帯を外して…このジャケだけ見ると「シグルイ」藤木源之助に似てますが、このイラストはずっと後年の単行本化の際に描かれたもので、本編の絵柄は少し違います。
YAMAGUCHI-garan1.jpg

山口貴由先生独特のキャラや台詞回し等の美学はデビュー時から一貫してあるものなので「悪鬼御用 ガラン」だけどうこうと語る所は少ないのですが、激しく敵の肉体が破壊され、首は飛び内臓は散乱する…痛快にしてグロい描写は毎回ありますよ。

内容は主人公の空洞ガランが、人のような姿をした変態で異形の悪鬼どもを"巡回死刑執行人"として惨殺して回る、ヒロイックなバイオレンス物。
まだコメディ要素も残る時代の作品で、時代劇…のようでもありますが、舞台は近未来でしょうか。

ガランは手足にはめた武具(強化外骨格?)で戦い、その強さは圧倒的。
敵は異形すぎるフリークスばかりで強そうなのですが、ダメージを受ける事もほとんどなく、しかも一撃で相手をただの肉塊にしてしまう。

『私は確信している!
人の皮を着た悪鬼の存在を!生まれついての犯罪者の存在を!
私は巡回死刑執行人!
天にかわりて悪の本質を討つ!』

と旅をしながら、絵空事の人権思想(ヒューマニズム)を捨てて殺しまくるガランですので、このままでは作品が殺伐としすぎる。

そこで、登場してガランと行動を共にするのが街娼をしていた少女・まゆです。
YAMAGUCHI-garan2.jpg
↑この絵だと普通の肌色ですが、本編では渋谷のギャルのようによく焼けた肌の色をしています。
『殺し屋ではない。私は巡回死刑執行人だ。
天に代わりて悪の本質を討つ。依頼人も報酬も存在しない。』
などと難しい顔で言うガランに対して、
『それじゃーあんた、ただ自分の判断で死刑しまくってるわけ?
それってアレよ!ただの犯罪者よ!通り魔とおなじよ!アブないヤツめ…』

とか、
『エラそうに語っても、あんた社会的にはただのプーよ。
ワルを見つけてブン殴るだけなら、そこらのチンピラと同じよ。』

とか、言うのだからさすがです。

騙されたり襲われたりする、このまゆを助けながら悪鬼を見つけ、殺すガラン…
基本的に1話完結方式の連作であるどの話も山口貴由作品の例にもれずメッセージ色が強いのですが、私が好きなのは「愛の正体」という話。
皆が愛し合い、平和に生きるどこかの国へ着いた二人でしたが、
『現象的には平和に見える……
しかし、この穏やかさは国が崩壊する直前の光景なのだ。
緊張感を失くしてはならぬ。この国は平和でも、世界は平和ではないのだ。』

と、相変わらず難しい顔のガラン。

『愛が全てさ!』とか言ってる男女が悪鬼に犯され殺され、その悪鬼を冷静に殺すガランですが、殺された男女に対しても
『同情は無用。守ることもできぬのに恋をする男、そんな男を選んだ女、どちらも悪いのだ。』
と言い放つガラン…そう、酷い男(女)に引っ掛かったとかの泣き言はよく聞こえてきますが、それを選んだ、見抜けなかったのも自分だ。

さらにこの話は続き、カップルが集うコンサート会場で『愛は地球を救うのさ!』とか寒い事を歌って人々の思考を低下させているう歌手が実は悪鬼で…
『「愛」ってのは便利なモンだなァ。デタラメな歌詞でも「愛」でしめくくっときゃあ、みんなラリラリになっちまいやがる。まるでLSDだぜェ。』
とか言ってます。
要はカラオケソングというか売れてるJ-pop的な物にも異議を唱えるのだから、あのガランの成敗以上に痛烈!

後でガランがまゆに語る形で過去を回想する形で、いよいよ自らが巡回死刑執行人として目覚めるまでの歴史が語られるのですが、それが悲惨。
100年間戦争を知らない海に囲まれた平和な国で、突然入り込んできた暴力によって目の前で妹のサナギが喰われ、自分のアナルが犯される…
その後も性善説などを信じ、時間を無駄にして最後まで愚かに滅んでいった自分の国。
つまりは「悪鬼御用 ガラン」はエンターテイメント作品ながらも、一貫して平和ボケした日本に対して警笛を鳴らす内容にもなっているのですが…もはや日本人には通じないのはご存知の通り。

『武装していない国民は、独裁者の支配に抵抗することができない。』

あと素晴らしいプロポーションした日焼けギャル・まゆは何度かヌードにもなるし濡れ場もありますのでね、単純に楽しむだけでもいいでしょう。
そしてこの作品が描かれた次の年には、いよいよあの大傑作「覚悟のススメ」が登場するのです。


その言葉、もはや人間のものではない。
ふさわしい場所に堕としてやろう。



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  1. 2009/02/02(月) 23:33:04|
  2. 劇画
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  4. | コメント:0
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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