大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

SF漫画 (11) 鬼頭莫宏 1 「なるたる 骸なる星珠たる子」

今夜は鬼頭莫宏先生の「なるたる」(講談社刊)です。
KITOH-narutaru1-2.jpg

まずは作者の鬼頭莫宏先生から紹介すると、1966年生まれの愛知県出身で、デビューは1987年に週刊少年サンデー(小学館刊)にて「残暑」でしているそうです(当時は鬼頭知広名義)。
しかしその後は泣かず飛ばずで会社勤めやアシスタントをしながら再起を目指し、時を経て1995年に月刊アフタヌーン「ヴァンデミエールの右手」を描き再デビューした方。

次の「なるたる」は無事にヒットしましたが、他に代表作となったのは現在も月刊IKKI(小学館刊)で連載中の「ぼくらの」でしょう。
後者はあのジョージ秋山先生の名作「ザ・ムーン」に範をとったと公言しているのだから、嬉しいものです。この2作品は共にアニメ化もされていますね。

さて今回は「なるたる」
KITOH-narutaru3-4.jpg
月刊アフタヌーンで1998年から5年と少しをかけて連載された作品で、単行本は全12巻です。

気になる変なタイトルは、小さくサブタイトルになっている『骸なる星 珠たる子』のひらがな部分を取ったもの。
そんあの訳分からないですよね…そんな所からも想像が付くでしょうが、表紙絵だけ見られると思われるであろうアニメっぽいキャラの顔や雰囲気とはイメージが合わない、意外とシリアスで大人向けの内容となっているのです。
特に物語後半の暴力描写、性描写は激しいものがあり…文字通りセックス&バイオレンスでシリアスな作品に仕上がりました。

主人公は当初小学6年生だた玉依シイナという少女で、祖父母の住む島でおぼれた時に助けてくれたのが、星の形をした異生物"ホシ丸"
この生き物が限られた少年少女だけが使える、そして持ち主の意識とリンク(チャネリング)してそれぞれの能力を発揮する竜の子竜骸等と呼ばれるモノだった…
こう言ってしまうのも何ですが、正に荒木飛呂彦先生の「ジョジョの奇妙な冒険」におけるスタンドみたいなモノです。

『竜 鬼 妖怪 妖精 天使 悪魔 人魚 化物 そして神仏
これら形而上の存在として語られてきたものの依拠するところは「竜の子」に一元化される
彼らの繁殖のイメージの希薄さ その理由もここにある
彼らは繁殖などしない 生物などではない 生命を持たない』

KITOH-narutaru5-6.jpg

シイナの本名は漢字表記のなのですが、何故カタカナ表記にしているのか…それとこの名前にまつわるいい話も物語終盤で明かされます。
明るい性格でスポーツチャンバラの名手、パイロットの父親俊二と二人暮らしで料理も上手、やってみれば勉強も誰より出来る…そんな少年漫画の主人公らしい少女。

しかし出来すぎてる感じがイマイチという読者も多いでしょう。
そこで佐倉明という内向的な対人恐怖症のイジメられっ子が登場するのです。
このアキラちゃんと呼ばれる少女も竜の子"エン・ソフ"とリンクしていて、守ってあげたい的な可愛いキャラ。
しかし父親を殺害して少年院に入る…という、暗い展開を見せてきます。迎える最期も衝撃的。

さらに「なるたる」において、竜の子を用いるのはシイナ達や味方と呼べる鶴丸丈夫古賀のり夫らだけではなく、他の一派…要は敵側の者たちも登場してきてまた面白くなります。

KITOH-narutaru7-8.jpg
"黒の子供会"なる須藤直角をリーダーとした竜の子保持者たちの思想は、世界をリセットして自分たちの理想である、賢者は生きて愚者は死ぬ…差別がつくる平等な社会を造ろうと夢見ています。

『僕達はこの疲弊した社会を変えることができる
因習や慣習や社会通念や常識や そんなものに縛られない 自己の批判と改革のできる
自ら考えられる人間で構成された社会 自ら考えることのできない人間は滅び去る そんな社会
それは痛みを伴う社会だ 痛みは思考を明晰にする』
と。

彼らと対立し、また国家機関や在日米軍とその竜の子までもが登場して物語が膨らんでいくのですが、何しろ時にオムニバス形式になりながら予想が付かない衝撃的な展開が凄く、何度もシイナの危機を救う"イカツチの乙姫"や他にも謎も多い作品ですので…それぞれの顛末を書くのは止めておきましょう。

KITOH-narutaru9-10.jpg
1巻の時点からしっかり構成されたSF物語で、何と宇宙…太陽系以外の惑星も関わってくるし、これだけ言っちゃうと地球はほぼ破壊され尽くし、人類も2人だけしか生き残りません。
そこまで話の規模が大きくなるラストは付け足し、というかあらかじめ決まっていた結末でしかなくて、そこに至る過程の描写が凄いのです。

次々と死んでいく登場人物。
壮大な力への畏怖の念に襲われた時の人間達の行動とは…ってこの最終話で見える民衆の狂気は数十年前に描かれた「デビルマン」そっくりですけどね。
単純に竜の子のデザインや描写を楽しみに読むのも良いでしょう。

KITOH-narutaru11-12.jpg
それでは、物語が終焉を迎えて最後になったセリフでお別れしましょう。


大丈夫
気に入らない世界なら わたしがまた潰してあげるから
竜たちの乙姫は様々な思考の回路
それを使ってあんたはやりたいようにやればいい
命は代替がきくから 命たりえるんだから



スポンサーサイト
  1. 2009/03/21(土) 23:43:14|
  2. SF漫画
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<ホラー漫画(46) 三原一晃 1 「恐怖バラ屋敷」 | ホーム | 月刊漫画ガロ(64) 福満しげゆき 6 「カワイコちゃんを2度見る」>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://mangabruce.blog107.fc2.com/tb.php/733-8c63e301
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

プロフィール

BRUCE

Author:BRUCE
BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

このブログをリンクに追加する