大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

劇画(86) 上村一夫 10 「乱華抄」

今夜の上村一夫作品は、「乱華抄」(青林堂刊)。
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"青林堂・現代漫画家自選シリーズ"の一冊で、1972年発行。
様々な弱者と性を描いた作品を10編集めてきて連作とした短編集で、現在の漫画界では絶滅したヤバい、そして美しい世界がこの一冊に詰まっています。

個人的にも重要な作品で、何故なら確か10年ちょっと前のまだ「同棲時代」しか読んでなかった私が、これをガロの青林堂から出ている本なので買ってみて…読んで衝撃を受け、それ以来なのです、上村一夫先生が特別な存在になったのは。

ちなみに青林堂の同シリーズは、あの林静一先生の「赤色エレジー」に始まり、永島慎二先生、勝又進先生、つげ義春先生、平田弘史先生、辰巳ヨシヒロ先生、真崎守先生、村野守美先生、宮谷一彦先生…
と、こんなにまで凄い劇画の面々の絶頂期の作品を収録しており、私の世代では絶版になっていましたが古本屋で探し出して読み、感激したものです。

話を戻して、私が人に聞かれれば薦めるのは大抵上村一夫先生ですが、その作品ならどの時代の物でもいいというわけではなく、やはり本当のいい時期に描かれた今回の「乱華抄」のような作品になるのです。
内容も情念や狂気等の上村一夫先生が得意とし、また一般的にとらえられてるイメージ通りのものが詰まっています。

1話目の表題作「乱華抄」は、男性教師と伯父を体で手玉に取ってきた女学生・幾代の卒業式の日を描いた作品。
幾代と肉体関係を結んでいる男は実はもう一人、白痴の少年もいて…
『この白いお腹の中におまえと瓜二つの生命がやどっているのよ
悪い種は自分たちの手で摘みとらなければならないのよ
おまえはそんな男たちよりも勇気があるわたしの夫!
さァ!狙い定めてその石を離すのよっ』

と、吊るした巨大な石を女の腹目掛けて投げ付け、堕胎する。その前に母親は殺してるし、短い話の中で描かれるのは狂気じみたタブーのオンパレード。

次の「夜明けのジュリー」はおかまのジュリーと、売春する学校の女教師の話で、「青春日記」は淋しがり屋の良家のお嬢さまが、電車で痴漢に合ってからその犯人に恋し、殺す…歪んだ精神の話。
「藤純子は何故結婚してしまったのか?」は、表紙がいきなり小雪の中こっち向いてでかい糞している犬の安兵衛と傘をさす美しい雅子という構図に笑うのですが、獣姦も描かれるし…
「告白的女優論のための1章」は映画監督の夫と女優の妻という夫婦による愛の形、「20年ぶりに逢った初恋の女」はデザイナーの男が幼い頃に性器を見たり触ったりしたかつての少女とまた出逢い、初恋が終わって生活に帰る。
「春駆け落つる女」は駆け落ち癖のある人妻の話なのですが、その旦那と親友のヤクザが20年前に殺した○国人の骸骨を掘り出して想い出にひたっていたりするので…これもネタがヤバい。
「6年目の女」は父と二人暮らしの娘が小学校に入学した日を描くのですが、酔った父親の性器を握らされて『男と男を比べられる女になれ』という事を説く…
「本牧で生まれても鴎になれなかった女」は、かつての天才子役少女が、食いっぱぐれる事を恐れた母親に成長しない薬を飲まされたために、顔だけ大人の畸形となって生きる。
ラストの「終章」で今度はレズのカップルを描いて終わります。

雰囲気モノみたいな短編もあるし、正直話だけ簡単に書いても意味が少ないのですが、タブーを覗き見る楽しみ以上にその絵…特に女性の美しさにゾクゾクするわけです。
巻末の"著者の言葉"でも劇画には『筋書き』は不必要云々とありまして、そうだ今夜は上村一夫先生自身による巻末の素晴らしい『著者の言葉』を載せて終わりにします。


戦中派と戦後派のあいだをさまよう我々は疎開派と呼ぶべきなのか。
帰るところは焼け野原となっており、今いる此所は他人の故郷であって、自分はいつも流れていなければならないのだと、自分だけの風景を作らなければならないのだと思いたった所が劇画という世界だった。
だから私の劇画には『筋書き』は不必要なのであって、美しい自分だけの故郷にたどりつく或る一コマのための、無駄なコマを積みあげた何ページかの絵の歴史を劇画と呼んでいる私は昭和15年生まれである。



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  1. 2009/04/07(火) 23:35:21|
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

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