大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

月刊漫画ガロ(80) 永島慎二 16 「旅人くん」

おいらは生まれた時に旅をしていた。
だから名前は旅人くん いつでも一人で歩いている。
おもに、君の心のすみのほうを。
…ほら…ペタペタ…ペタペタ…



今夜の永島慎二作品は「旅人くん」(大都社刊)です。
NAGASHIMA-tabibito-kun1-2.jpg

これは永島慎二先生の代表作の一つでもありながら、内容的にはかなりの異色作。
旅人くんという少年が、肩で持った木の棒の先にボロ包みをぶら下げて…独り言をつぶやきながら旅をしているだけ。

おもに4コマで進みながらページの右から左へ。
ずっと歩き続けているのですが、宙に浮いているように見える絵が多いですね。
主な登場人物は旅人くんだけですが、何かの物や動物だったり、風船、幽霊…そんなのが少しの間だけ旅の共になる事もあります。
そして、基本的にはいつも淋しがっている。

これは20年近く描いてきた漫画に飽きた永島慎二先生が、その時かかえていた仕事を全て打ち切り、阿佐ヶ谷のマンションを売ってこの「旅人くん」だけを描いて暮らした…という作品になるのです。
以降はいろんな所で掲載し、単行本も各種ありますが…この大都社版は全3巻。
NAGASHIMA-tabibito-kun3.jpg

旅人くんのつぶやきには、何の意味も無いものから可笑しいもの、孤独で悲しいものや…とにかくいろいろあり、たまにドキッとするほど名言みたいなものもあるのです。いくつか抜き出してみましょう。


『おいらでも…ときたま…とても淋しくて人のぬくもりが ほしくなる時があるんだ!
そんな時は思い切って…!人の中にとびこんで…
もみくちゃになって そうして……
いつだって…苦しい…闘いの思い出だけが…残るんだ』

『おいらが歩くとどうしても…影ができる
…一瞬ではあるけれど…草、花が陽かげになるという…
生物って生まれつき…罪深きもんなんだなあ…』

『この季節の風物を楽しむには……夜歩くにかぎるんだ…』

『人間が無言で信じ合えて…仲間がいつも美しいところ………
幸せになるための…てき度の労働と……
ちっちゃな愛があって そうして…最後はイッパイお祭りのあるところ…
おいらがさがしている美しい世界って!そんなにむずかしいかな…?』

『人間は利息をとって生きてる人と…
その利息をはらうために生きている人が…いる!
いつでもどこでもそうなんだけど…………
どうして、その利息をはらう方がペコペコして…
利息をとるほうがいばって…いるのだろう……?』

『今日もまた………一日………
なんにもしないうちに……陽がしずむ……
そしておもたいつかれと……深い悲しみだけが残る…
今日はとりあえずねることにして!あしたこそ…なンかしよう……!』

『世の中にはダメな奴とダメでない奴とがいる…
ダメな奴が…… ……ある日…ダメでない人になる事が……
革命だと思う………』



永島慎二漫画のほのぼのした部分を前面に押し出した絵柄で、淡々と歩き続けるだけの作品が「旅人くん」。あまり皆に薦められる種類の物ではないのですが、私には大切な本の一つです。
ストーリー展開は無いのですが、たまに歩くだけの日常と違う話もあり、サーカス団にバイトで入ってピエロをやり、空中ブランコのサヨリちゃんに惚れるも
『いつだってさ…本当の恋とは片思いのことをいうンだ』
と去ってまた旅に出た事もありました。

旅の共としては、病気ドリというのが長く出ていました。
こいつはしゃべるのですが、いつも『死にたい』とか絶望的な事ばかり言っていました。

いつも、しかも生まれた時から一人で旅を続けている旅人くんには家族もいませんが、
『おいらのとうちゃんが むこうからやってくる………
おいらに気がつくと 手を上げてニッコリ笑う…………
その手をおいらのかたにおいて二人は………歩きだす…
とうちゃんの手はあったかいな…!』

なんて想像して涙を流す、悲しいシーンもありました。

警官とすれ違った時は、
『おまわりさんには わるいんだけど……おいら…
警官がきらいなんだ……どうしてかな…?
そうか…大戦中にナチスドイツの強制収容所にいた頃のことを思い出すからなんだな、きっと…………』
と暗い過去をばらすのですが、でもそんなバカなと、ますます謎は深まるばかりですね。


おいらの名前は…旅人くん!
おいらはいつだって こうやって歩いているんだ!
どうも生まれた時からこうやって歩いていた…らしいのさ
そうしておいらは これからもずうっと…歩きつづけるんだ…………
だから旅人くんとみんながそうよぶ……
どうして旅をするのか… だって…だって!……
それがわからないから…こうやってサ 旅をしつづけるんじゃないか
なにをいうとるンかね!



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  1. 2009/07/02(木) 23:19:34|
  2. 月刊漫画ガロ
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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