大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

永井豪 (24) 「手天童子」 2

今夜の永井豪作品も、前回の続きで「手天童子」(講談社刊)です。
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主人公の子郎こと手天童子郎が、ヒロインの白鳥美雪と育ての母である柴京子を助けるため、仲間達を連れて敵の"暗黒邪神教"の総本山・暗黒寺へ向かって最終決戦となる所からですが…
まず、ここへきて無双力(リッキー)達は前回死んだ大山直次郎も含めて先祖代々、手天童子を守るための使命を受け継いできた家系だと判明するのです!!

いろんな人や鬼の想いが絡んだ重要な戦いの幕が開け、人間側にとって非常に厳しい展開となるのです。
まず暗黒邪神教が持つ二つの暗殺団から"幻魔衆"との戦いですが、妖術がシュールな感じで永井豪先生の持つ芸術家的な部分が出てきて面白い。
そして残る"争魔衆"との戦いは牙の草原にて行われ、完全にキレイ事を排した激しい殺し合いが展開されます。
そう、見方も次々と殺されていき…最初の仲間となった、そしてヒロインの兄でもある白鳥勇介は岩で潰され、小谷椰子夫(こややし)と梶工作は槍で喉を突かれ、何とも無残に散るのです。

ついに子郎が争魔衆のボス・邪腕坊苦海降魔の利剣で真っ二つに斬り殺した時、生き残ったのは子郎の他にリッキーと、ライフル片手に付いて来ていた育ての父・柴竜一郎のみ。
続いて仙岩鬼の岩山を突破すると、いよいよ鬼谷妖次郎魔導師(こと鬼聞天殺聖)の待つ暗黒寺へ到着。
そこで彼を含む"魔導四天王"なる強敵が襲ってくるのですが、そこで空から稲妻と共に…「手天童子」冒頭で赤ん坊の子郎をくわえてきて、また柴夫妻に託した鬼が現れるのです!

彼は鬼獄界(おんごくかい)で手天童子を守る二鬼のうち、ずっと一緒だった護鬼の片割れである
戦鬼
護鬼が今までいなかったのは、鬼獄界へ戦鬼をつれに行ってたのだとか。で、圧倒的な力を持つ戦鬼は敵をあっさりと倒してゆき、いよいよ暗黒邪神教の宗主・魔邪利妖念と対面です。

この教団のラスボスである魔邪利妖念は当然ながら強く、ついにはリッキーが殺られてしまいました。
が、子郎と護鬼・戦鬼は敵を追い込んで…
もはやこれまでと観念した魔邪利妖念は、京子の命を本尊である大暗黒死夜邪来に捧げ殺そうとするのですが、何故か京子の顔が大暗黒死夜邪来のてっぺんにある顔と同じである事に気付いて戸惑い、護鬼によって決着をつけられるのです。


手天童子郎一派はついに敵を倒したわけですが、そこで息をつく暇も無く…
まさに子郎が京子と涙の親子再会をしようとした瞬間、あの日からちょうど十五年目だという事で戦鬼は子郎を鬼獄界へ連れて行ってしまいました。
助けられた美雪は護鬼にお願いして、子郎が行く世界へ付いて行ってしまいました。

今まで子郎を育ててきながら、ついに連れて行かれて残された竜一郎と京子の柴夫妻。
約束もあったからか諦念の竜一郎と対照的に、泣き叫ぶ京子は
『ウオオオー 子郎ーっ!! あたしの子郎を・・・・あたしの子郎を!!
鬼めっ!! 鬼め~のろってやるー のろってやるぞ~
鬼め~っ!! 呪いつづけてやるぞ~っ!!』

と、恐ろしい形相で自分の顔をかきむしったかと思うと発狂してしまい、精神病院に入院してしまうのです。

しかし主人公の母親が、このような姿で発狂する漫画というのは世にも珍しい…そしてこれから、今までわりと地味な存在だった京子を追う事によって「手天童子」が母子の愛を描いた作品である事が分かってきます。
それも楳図かずお先生の傑作「漂流教室」並に、空間的にも時間的にも引き離してしまう事で愛を描くのです。
衝撃のラストに至るまで、ここからはある意味京子が最も重要な人物となってきます。

一方の三次元世界と隣接する異世界に連れて行かれた子郎と美雪、そして二人の鬼。
まずこの不思議な世界の描写がいいのですが、ともかく!鬼獄界の時空空間から飛び出してきた鬼の群れに夢中で応戦するうち、美雪と護鬼・戦鬼がどこか時代へ落ちてしまい、こんな所で離れ離れになってなすすべもないまま、子郎も皆と違うどこかの時代で宇宙空間に漂うのでした…。

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ここから新展開。何とも驚くべきことに宇宙モノ、スペースオペラみたいになります。
宇宙船やスペース・スーツ、ヘルメット等の余計な説明にページを割いていて、SFファンへのサービスが旺盛な…その舞台は西暦2100年の未来世界。
あれからずっと、100年も宇宙空間を漂っていた手天童子郎は、まだ歳も取らずにますます化物めいて生きています。宇宙で漂っているうちに得た能力もありますが、対比物の無い宇宙にいたために自分の大きさが分からなくなって凄い巨人になっていたくらいです!

宇宙船アルファードの危機を救ったために子郎は地球へ連れて帰ってもらう事になるのですが、このアルファードで体を調べてもらった子郎は、自分が人間のイミテーション(模造品)にすぎない、意志を持ったエネルギー体であると分かるのですが…これも後に判明する出生の秘密の核心に迫る事実。

そうそう、アルファードの乗組員には「おいら女蛮」女蛮子(すけ ばんじ)がいますよ!
しかも…5年の旅路を終えて子郎と共に地球に着いたら、子郎の命を狙って突然核兵器を使用したアイアンカイザーによっていきなり死ぬし!今作での女蛮子はただのチョイ役でした…

さてそのアイアンカイザーは全身をサイボーグ化した22世紀最強の戦士で、少しダースベイダー似です。
何故子郎を狙ったのかと言えば、彼は子郎が殺した邪腕坊苦海の息子で、父の仇を討つためだけに執念を燃やし、常に最新のマシンを体に取り入れてより強く強くと改造しながら生きながらえていたのです!
「バイオレンスジャック」でも登場するキャラなので、知っている方もいろのではないでしょうか。

子郎はすさまじい力で辺りを破壊し尽くすアイアンカイザーから逃げ、平安末期の日本へと旅立ちます。何でその時代かという事で、物語の基に使った『大江山の酒呑童子伝説』とも上手くリンクしてきます。
その辺りや、タイムマシンについての説明は面倒なので省きますが、いや本当に永井豪先生のSF世界が古来から伝わる伝説とつじつまが合ってくる様は見事で、これぞ伝奇ロマン!


ところで発狂した子郎の母・京子は、あの時代の精神病院で絵を描いています。それも油絵の具でキャンバスではなく、壁に描いているのですが…その壁一面にはおどろおどろしい鬼の地獄絵図!
『くるしめくるしめ 鬼よ・・・・わたしから子郎をとりあげた鬼よ・・・・むくいをうけるのだ・・・・
鬼よ おまえたちはくるしむために この世に生をうけるのだ・・・・
鬼よ おまえたちの性質は強暴だ!ゆえに殺しあうのだ・・・・
鬼よ おまえたちは残忍だ!ゆえに食いあうのだ・・・・
子郎をとったむくいを思いしるがいい!あはははは
はははは くるしめくるしめ~ 鬼よ!おまえたちの世界は地獄だぞ!』

と、鬼気迫る怨念をぶちまけながら絵を描く京子!

そして子郎に分かるようにと巨大な鬼の上の台座に座った京子の姿も描くのですが、大暗黒死夜邪来では…。
壁に描かれた鬼が泣いているとうなされるようになった夫の竜一郎は、病室のカーテンを開けて光を入れ、その中に天使の顔を持つ赤ん坊の姿を描く…

それから京子は毎日赤ん坊の絵を見るようになり、ある時
『このままでは赤ちゃんが 赤ちゃんが鬼に 鬼に食べられてしまうわ
赤ちゃんをまもる人が そばにいなくてはいけないの』

と言って描いた顔は若い頃の竜一郎。さらにもっと強そうにしなければと、その顔に線を加えてバトルメイクすると!その顔は護鬼にそっくりなのです!
続けて赤ん坊を守る鬼として戦鬼も描いた京子ですが、京子は護鬼とは会った事もないのにどうして?
なんだか、秘密が分かってきましたね。

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子郎や護鬼・戦鬼が生まれた鬼獄界というのは、高次元空間に突然発生した鬼の世界だと以前に護鬼から説明を受けていました。
ある日突然、無の世界から突然生じると少しずつ広がり、大きな世界を形成したのだと…しかも手天童子はある日突然赤ん坊の姿で発生し、護鬼も戦鬼もそのままの姿で使命だけを持って発生したのだと。
鬼獄界は何者かの意思によって生まれた不自然な世界だと。

さすがに竜一郎も気付きました。
『もしかして・・・・事件のはじまりが十五年前ではなく いまだったとしたら・・・・
それも京子の病室からはじまっているとしたら
なにもかもが 京子のとざされた精神からはじまっているとしたら・・・・』


交互に描写されるようになった一方の子郎。
彼は平安末期の日本で、ついに美雪と会えました!
さらに時空を超えてまで追ってきたアイアンカイザーとの最終決戦!これもまた面白く、これがどう歴史と絡んでいくのかも見物なのですが…

問題は鬼獄界の謎を解いた竜一郎。京子の肉体は病室にあっても精神はない!それを鬼獄界から呼び戻すためにハンマーで地獄絵の描かれた病室の壁を叩き始める!
ここで鬼獄界へ辿り着き、鬼獄界を作った大暗黒死夜邪来に会うために向かっている、子郎たちにも影響が現れるのですが、竜一郎が病室の壁を叩く度に鬼獄界は破壊されていくのです。

邪神殿へ着いた子郎たちは、像ではなく本物のは初めてとなる恐ろしい怪物、大邪神である大暗黒死夜邪来と対面すると…そうです、大暗黒死夜邪来その正体は母である京子!
そこでの対談で今までの謎も全て解けるのですが、全ての元凶はこの柴京子か…彼女の異常なまでの子郎に対する溺愛と、鬼に対する激しい恨みの精神エネルギーでここまでの物を作り出し、数多の犠牲者を出した…しかも時間軸も関係なく過去未来に影響を与えたのだから、本当に神だったとしか思えません。
この時間軸のパラレルワールドぶりがあって、読者は絶対に謎解き出来ないようになっていたのですね。

全ての壁画を叩き壊した竜一郎の元には京子の精神、そして子郎と美雪が帰っていきます。
子郎は子供がいない京子の心が生んだ子供だったわけですが、今まで殺された人が本当に帰ってこないように、死んでない子郎は本当に生きている。もう手天童子郎ではなく、柴子郎として幸せに暮らすのでした…
と、この手の永井豪作品としては珍しく、また終盤までのとんでもなくカオスな展開どこへやらで、さわやかなハッピーエンドでした。
「手天童子取材秘話」と題した作品のあとがきでは、鬼の祟りと思われる不思議な現象について語っていますが、それらで弱気になったのでしょうか。
もちろん、護鬼と戦鬼についてもしっかりその後の物語が用意されていますよ。

小説化もしてるし、連載終わってずっと経ってからアニメ化もされたほどだから、少なくとも一部では人気が高いのでしょうね。
つい最近までチャンピオンRED(秋田書店刊)誌上で夏元雅人先生の手により「降魔伝 手天童子」という漫画も連載されていましたし!

あと永井豪先生は、この「手天童子」以前に同名タイトルの作品を描いているのですが、そちらの方を後に改題して「邪神戦記」としました。
一応関連作品として、興味があればそちらも読んでみてくださいね。


鬼獄界よ 京子の心が・・・・生みし鬼獄の世界よ!
いま滅びのときがきたのだ!鬼獄の鬼とは怨みの心 すなわち「怨獄界」なのだ!
そして鬼とは・・・・怨みを持った人の心が現象化したときの姿なのだ!
子郎を鬼にうばいさられた 京子の怨念の世界怨獄界よ!
この壁画とともにほろびるのだ!



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  1. 2009/09/18(金) 23:13:05|
  2. 永井豪
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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