大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

永井豪 (25) 「あばしり一家」

(今回はゲストライター、奈落ハジメ氏の投稿です)


ハードSFから学園バイオレンスまで、永井豪という才能の裾野の広さは広大なものがあります。
しかし、その神に愛された天才が持てる潜在能力とセンスの限りを尽くし、「ただ女の子を脱がせるだけ」のお話に全力を投入した時……そこにはどんな快作が生まれるのでしょうか!?

「いや~ん」
「や~ん」


そんな女の子の可愛い悲鳴が、全編に渡って木霊する一連の作品群。漫画界の巨星・梶原一騎の暗黒面「ダーク梶原ワールド」に倣って、桃色リビドー全開の「ピンク永井ワールド」とでも名付けてみましょう。
原点であり出世作である「ハレンチ学園」(昭和43年)に始まり、その後も「イヤハヤ南友」「おいら女蛮」「けっこう仮面」など、もう一つの看板であるバイオレンスアクション物に劣らぬ人気を誇った一大ジャンル。
大人のエロ漫画と違って、まだ第二次性徴も迎えていないマセガキたちに、「なんだか知らないけどおちんちんがムズムズするよ~」的な性的トラウマを植え付けてきたその暴虐ぶり偉大な功績は、漫画史上他に類を見ません。
少年チャンピオン誌上で昭和44年から49年まで連載された「あばしり一家」も、その一翼を担う作品でした。

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と言っても、この作品は「ピンク永井ワールド」の中でもかなり異色の部類に入ると言えましょう。まず作品の設定からして、かなりブッ飛んでいてアナーキーです。
本編の主人公たちは、警察さえ手出しが出来ない極悪犯罪者ファミリー……その名も悪馬尻(あばしり)一家!
一家の家長はあばしり駄エ門。いかにも人相の悪いヒゲ、さらにケツそっくりの頭の形があまりにインパクトありすぎな極悪親父です。そして五エ門、直次郎、吉左ら三人の息子……アンド、紅一点の娘にしてヒロイン菊の助が、「あばしり一家」の愛すべき主要登場人物たち。

連載初期のエピソードは、同時期に作者が手掛けていた作品でいえば「ガクエン退屈男」の影響作用を大いに受けたような、エッチさを散りばめつつもバイオレンス&アナーキー全開なお話が続いていました。
基本がギャグ漫画でも容赦なく血が飛び散ったり人が死んだりするのは永井豪作品のお家芸なのですが、極悪警察署との死闘を描いた「うるわしの要塞編」、「魁!!男塾」を15年先取りしたような全編ケンカ尽くし、てんぷらデスマッチ(笑)に最後はバズーカやマシンガンで殺し合う「学園けんか祭り編」などは、明らかに度を越した殺伐さのレッドゾーンを振り切っています。
また、悪夢に閉じ込められた菊の助のインナースペースを舞台にした冒険劇「菊の助の幻想編」などは完全なSF仕立てで、当時の作者の得体の知れない暴走ぶりが手に取るように伝わってきます。

ところが、連載中期あたりから急速に作品の雰囲気が変わり始めるのです……主にピンク色の方向に
「いや~ん、や~ん」成分に飢えていたマセガキ読者たちの心の叫びが神(作者)に届いたか……それまで、割と凛々しいボーイッシュなヒロインのムードが強かった菊の助(以下菊ちゃん)が、急速にフェミニン&エッチ化。そして眠れる獅子が目覚めたかのごとく、ドスケベ長男の五エ門が大車輪の活躍を見せ始めます!
この五エ門。頭の中は痴漢と覗きと女の子を脱がす事しか考えていないという、読者に取っては見たいものを存分に見せてくれる神様のようなキャラです。
鏡餅を上下二つくっつけたような輪郭に、いつも笑っている表情しかないという、小学生でも5秒で描けそうな簡単な顔が特徴で、口癖は「なのよね~」。性犯罪専門なので、あばしり一家の中で唯一腕っぷしが弱いという設定。
モデルとなったダイナミックプロの石川賢も、こんなカッコイイキャラにしてもらってさぞや満足だったことでしょう。

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五エ門の性欲は妹である菊ちゃんに対しても……否、妹だからこそか容赦するところを知りません。風呂や着替えの覗きなどは、もはやほんの日常茶飯事ドリフのエンディングで毎週カトちゃんが「飯食ったか!歯磨いたか!」と連呼しちゃうレベルですね(意味不明)。
痴カン面という男版けっこう仮面のような姿に扮したり、あばしり一家の財力を無駄に使い潜痴艦なる発明をしたり、しまいには宇宙犬人ブル(当時チャンピオンで連載されていた「スペクトルマン」の宇宙猿人ゴリのパロディ)によって宇宙怪獣エッチラーに変身してしまったり(実は結局五エ門そっくりな怪獣だったというオチ)と、あの手この手で読者サービスシーンを演出していきます。
そうなるともはや、ターゲットは菊ちゃん一人では飽き足らず、大学の同級生“いつもやられる”赤黄みどりちゃんの出番も増えていきます。中でも、五エ門が弁慶の故事にならい五条大橋でパンティー千枚を集める(笑)「武蔵坊五エ門の巻」では、パンティー一枚脱がされるだけのシーンで何と10ページもの見せ場! この辺は作者がノリノリで描いているのがページから伝わってくるかのようです。

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そして我らがヒロイン菊ちゃんも五エ門に負けず、勇敢というか積極的にエッチな目に遭っていきます(笑) サービス精神たっぷりなくせに、いざ裸にされたりすると途端に、「いや~ん、や~ん」と恥ずかしがってくれるのがまた凄くイイ!
駄エ門が始めた柔道流派に入門する「花の美容道館の巻」では、下半身スッポンポンで柔道にチャレンジ。ブン投げられながらも、大事な所だけは隠す恥じらいが非常に可愛らしいのです。このエピソードでは、永井先生のスポーツ全般に対する素晴らしいリスペクトの無さが全開!
ほぼ全編、駄エ門オヤジによる菊ちゃんへのエッチな特訓のサービス描写が続き、「スポーツまんがは健全でかいてて気持ちいいなー」と、作者の呟きが入るコマの確信犯ぶりが最高です。オチも、「どうせまともな柔道マンガじゃね~んだ 美人の選手で色っぽくいこーぜ!」とラスト15ページを切ってようやく登場したライバル・素肌晒四郎を相手に、相手のおっぱいを掴んでの一本背負い「一パイ背負い」で勝ってめでたしめでたし(何がだー!)。
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この素肌ちゃんは一回限りの出番なのが惜しすぎる、非常にセクシーな女の子です。菊ちゃんとは逆に上半身スッポンポンで下半身はローライズのハカマというエクストリームなファッションセンス。お尻とお股の上がチラリと覗く、ローライズファッションの先駆けといいましょうか。ぜひ来年のミラノコレクションあたりで見たいものですね。

連載後期はもう、良い意味で力の抜けたお色気ナンセンスギャグ漫画の路線を突き進んでいく「あばしり一家」。
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「時そばの巻」では、年越し蕎麦を食べ過ぎた五エ門と吉左が楳図かずお「漂流教室」と同じ時代の超未来へタイムスリップしてしまうというお話。一杯食べると一年年が明ける年越し蕎麦の食い過ぎで、タイムスリップ現象が起きる……作者いわく「ついにH・Gウェルズの『タイムマシン』を超えるSFをものにしたぞー」だそうです(笑)
ちなみにこの話のオチ。転んで腹を打った二人がソバを全部吐き出してしまったお陰で、時間が過去に戻るという素晴らしいくだらなさ(誉め言葉)。「しかしいやんなるなー このマンガ」とぼやく吉左の台詞が、とても印象的です。しかし、名前と舞台設定を使った「漂流教室」は少年サンデー掲載。思いきり他社なのにそこの看板漫画を登場させる永井先生のアナーキーぶりと、当時のチャンピオンの度量は凄いですね。

そして……そんな漫画の最終回は、やはりそんな感じでひどすぎるものでした(笑)
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初期編であばしり一家のライバルとして登場した極悪人ハンター・法印大子が、再登場。
この女の子は可愛い外見と巨大な肉体のギャップが強烈なキャラクターなのですが、ここへきて更に巨大化! マジンガーZ級に成長した彼女に、五エ門がパラシュートで高空から取りつき、史上初の空挺登山痴漢(!)を挑みます。
ここでルート踏破の計画を語る描写が、なんともワンダーで素晴らしい。カミの毛をつたわって肩へ、最初の目的地オッパイ峠を目指す五エ門。そこでおチチ首にしがみつき、休憩。大子の巨大乳首に腰かけておむすびを食べる五エ門の姿に、この漫画のくだらなさ素晴らしさが凝縮されているかのようですね。
ところがここでトラブルが発生。大子に飲みこまれてしまった五エ門を助けるために、駄エ門は虫くだしチョコレートを大子に食べさせます。それだけならまだしも、ウンコと共に落ちてきた五エ門救助に大子のお尻の下で待ち構えるあばしり一家! 最後は全員一気に噴火したウンコの下敷きになってチャンチャンというオチ……いやあ、凄いなあ永井先生。
「おわりの回ぐらいロマンチックにいきたかったのに もうイヤッ こんなラスト すねちゃう」と嘆く菊ちゃんは最後までキュートなのでした……ウンコまみれだけど

足かけ5年という、作者史上でも長期連載の部類に入るこの作品ですが、何回も読んで飽きないのは、あばしり一家のキャラクターがとにかく立っているせい……そして毎回のエピソードが半端なくバラエティに溢れているからでしょうね。人殺し犯罪上等な極悪人一家が主人公なのに、家庭内は皆家族思いで仲良しだから、妙にほのぼのとした後味も魅力です。
同系統の「ハレンチ学園」の影に隠れている印象もありますが、あの大槻ケンヂもこよなく愛し、連載当時はアニメ化もされていた「ドカベン」を抜いて常時トップの読者人気を誇っていたという、紛れもない名作(という呼び方も高尚すぎて似合いませんが)に間違いはありません。
それを証明するかのように、40年の時を超えて、何と今年になって実写映画化が決定したそうです。が……YOUTUBEなどでの予告編を観た限りでは、過度な期待しない方が賢明でしょう。なぜなら……

菊ちゃんがショートカットじゃないんだもん!!


※奈落ハジメ(ならく・-) ゲームシナリオライター。東京在住。酒と美女と漫画を愛する中年男子高校生。


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  1. 2009/09/21(月) 18:34:26|
  2. 永井豪
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コメント

菊の助はわしの生きがいじゃ!わしの宝じゃ!

奈落ハジメ氏、投稿ありがとうございました。
私ももちろん「あばしり一家」は大好きですので、素晴らしい紹介に感謝します!

本当、エロすぎると思います…。いつもやられる”赤黄みどりちゃん、頼まれると断れない性格と菊ちゃんのように強くない所が、ますます興奮させてくれました。妹の赤黄ムラサキちゃんもイイ!!

ちなみに私、あばしり一家の中でもまだ小学生の吉左が好きで、『パラ中暴動編』等の初期のカッコよさは凄かった…
『男は女にほれちゃいけねーんだ 男は女をしたがわせればいいのさ それがあばしり吉左のやりくちよ!』
という哲学、教師の手足うばってダルマのヤバイ姿にしちゃったりも良かったのですが、なにしろ後半は影が薄くなって、あの覆面もしなくなったのが残念でした。



殺せ旧校のガキどもよー
とびちる血潮ものとせずー
ズガイ骨をたたきわり
敵のゾーモツくいちぎれー
コロセコロセコロセー
けんかは人の生きる道♪
(『けんか祭りの巻』で登場した応援歌)
  1. 2009/10/01(木) 20:03:51 |
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  3. BRUCE #-
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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