大悟への道 (旧名・名作漫画ブルース)

名作漫画の紹介 ・・・個人的な旅の記録

手塚治虫(14) 「ブルンガ1世」

続いて手塚治虫作品で、今夜は「ブルンガ1世」(大都社刊)です。
TEZUKA-burunga1.jpg
1968年から一年ほど冒険王(秋田書店刊)にて連載された作品で、スターコミックスで全2巻。

後に同じ大都社から、こちらの厚い版が全1巻で再発しました。
TEZUKA-burunga2.jpg
大都社から出ている手塚治虫作品は特にいいモノが多いのです。

当初は手塚先生が放送されるテレビアニメを意識して描いた作品ながらその企画が中止になり、漫画の神様も恐らくは人生で一番人気が低迷していた時代で虫プロも倒産したし、スランプの時に描いた作品。
そして作者自身も失敗作と認めていたのですが、私の中では意外と好きな作品でして、マイナーな部類ながらテーマも良いしスケールもでかい!

ある春の宵に平凡な少年・ジロを訪れた汚いじいさん。彼は20億年くらい前に神様と地上にいろんな生き物を作ったそうで、その名も…悪魔。
じいさんの姿をした悪魔が新しい生物を作ったのですが、わけあってそれをジロに受け渡します。
その生物がどんな姿と能力を得るかは飼い主が最初に願う事で決まるのですが、偶然出会った片桐太郎という…アメリカでイエロー・マイスの異名を取る銀行ギャングだった男と共に願います。
それから二人の願いが合わさった姿で誕生した生物こそが作品タイトルのブルンガ

姿は女の子向きの可愛い子犬のようなのですが、すぐにその姿は変身して巨大化・凶暴化する事も分かります。
しかもその強さは、米軍基地を襲って暴れに暴れて破壊しまくれるほどでした。
ただ世界にたった一匹の生物ですので、いくら可愛い姿に戻ってもどこにも仲間はいない。どんな動物にも仲間外れにされて、
『おまえはこの世でたった一匹 ほんとうにひとりぼっちの動物なんだね…』
と同情して遊んであげる、心優しいジロでした。

ちなみにこのブルンガの可愛いバージョンである姿は、後に描かれる「ユニコ」の主人公であるユニコーンの子供や、アニメ「青いブリンク」の雷獣・ブリンクにもかなり似ていますので、手塚治虫先生もそれなりに愛着を持っていた…と、思いたい所ですね。

さてブルンガをジロに託して去った悪魔ですが、彼は実はもう一匹同じ種族を作っていまして、その名もブルンゴ
ブルンガとつがいになる唯一のメスで、そちらは大悪党であるガノモス(顔はいつもの手塚流スターシステムでいう所のロック)を飼い主にして姿と能力を願わせたものだから、後に本物の悪魔のようになってブルンガと対立します。
ガノモスもイエロー・マイスと因縁浅からぬ仲で、二人の対立も描かれていきます。

この作品のタイトルは「ブルンガ1世」…すると当然、ブルンゴとの間に出来たブルンガ2世も登場してくるのですが、その誕生の仕方は妊娠中の母体であるブルンゴの体を棒でどつきまわし、そのため苦しみと憎しみと絶望の中で生まれた卵は残忍な幼虫に育ち…
愛らしい姿にもなる両親のブルンガとブルンゴと違い、ブルンガ2世は血も涙も無い悪魔でした。

それもクライマックスではブルンゴが増やした醜い畸形の妖怪みたいなブルンガ一族5千匹が人間界に攻め入ってくるのです!!
それを彼らの同属、親であるブルンガが、優しさを持って自分を生んでくれた友達のジロのために一匹で立ち向かい…
ブルンガの圧倒的な強さは自分の子供達5千匹に続いて、結局は悪の心(人間から見てですが)に染まった妻のブルンゴも倒しますが、迎えるのは自分も力尽きて種族根絶やしになって死ぬ悲劇。ジロとも涙のお別れです。

人間に渡して新生物の性質を決めさせた悪魔の狙いは、神様も文句が言えないように人間自身が作ったモノで世の中をメチャクチャにする事にありました。
そうするとジロ少年の優しさで生まれたブルンガによって世界を救い、悪魔の計画を失敗させたわけです。
しかし悪魔自身は生きてまた『何回でも化物を作っていつかこの地上を悪魔の世界にしたる』とか言って去るアンハッピーエンド。
ラストだけではなくジロと同じく人間ではもう1人の主役とも言えるイエロー・マイスの復讐劇等、やはりこの時代の手塚治虫先生の暗さゆえ、ヒーロー物みたいなSF作品でも能天気に問題解決してハッピーみたいな内容は許されなかったのでしょう。
そういう所に見える怒りや負の感情表現などが現れた作品こそ、漫画の神様も全然品行方正なだけの人では無いと分かるし、私にとってはそのまま作品の面白さだとも思えるのです。


泣くなっ ジロッ
どんなくるしいことがあっても
おれはけっして泣かなかったぞ
いつも未来を信じてがんばった
おまえも男だろう べぞをかくなっ



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  1. 2009/10/30(金) 23:30:58|
  2. 手塚治虫
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BRUCEです。あだ名は大悟(DieGo)です。
大悟…つまり悟りを開くに至る道程にある事を表し、かつ神の映画「ドラゴンへの道」から頂いてのブログタイトル。同名の秘密結社も運営しています。

名作漫画紹介の形を借りて、自分の記録用に使っています。

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